副業とフリーランス新法【2026年】振込手数料は引けません

副業
この記事は約45分で読めます。
記事内に広告が含まれています。
記事編集者
この記事を書いた人
link(管理人)
link(管理人)

営業職として10年間活動、某営業会社で2000人中2位、プライム上場企業にて年間TOPセールスなどを経て、サービス開発をするためにPDMにジョブチェン、現在進行形でPM/PDMをしています。上場企業の昇進レースに見切りをつけ、副業として業務委託でPM/PDM/PMOを複数案件並列で兼務、副業が年収1,000 万を突破したので、ナレッジを「会社の外で稼ぐ PM スキルの循環」をテーマに、テンプレ・講座・コミュニティで同世代の跳躍を支援しています。

link(管理人)をフォローする

クラウドソーシングで受けた仕事の報酬から、振込手数料が引かれていた。発注書はもらえず、条件はチャットの口約束だけ。支払いは「請求書を出してから翌々月末」と言われた。

ユイカ(副業初心者)
副業で受けた仕事、報酬から振込手数料を引かれてて…。でも文句を言ったら次の依頼が来なくなりそうで、黙ってるんです…

リンク(運営者)
その気持ち、すごく分かります。ただ結論から言うと、それ2026年1月から法律違反になっているかもしれません。

ユイカ(副業初心者)
えっ、法律って…私みたいな会社員の副業でも関係あるんですか?

リンク(運営者)
あります。公正取引委員会のパンフレットに「副業で行う事業」も対象だと書いてあるんですよ。この記事で、何が守られていて、どこに言えばいいのかまで話しますね。

副業でこういう扱いを受けたとき、泣き寝入りするしかないと思っている人は多いはずです。

先に結論をお伝えします。2024年11月1日に施行されたフリーランス法は、会社員が副業でやっている業務委託にも適用されます。公正取引委員会のパンフレットに、そのものずばりの記述があります。

さらに2026年から扱いがひとつ変わりました。2026年1月1日以降に発注された1か月以上の業務委託では、フリーランス側が合意していても、振込手数料を報酬から差し引くことは「報酬の減額」になります。2025年までは書面での合意があればセーフだと整理されていました。そこが変わっています。

この記事でわかること

  • 会社員が副業で受ける業務委託も「特定受託事業者」に当たると公取委が明記していること
  • 2026年1月1日以降の1か月以上の委託では、合意があっても振込手数料の天引きが報酬の減額に当たること
  • 報酬の支払期日は「請求書を出した日」ではなく「納品した日」から60日以内であること
  • 取引条件の明示は8項目で、口頭だけでは認められないこと
  • 7つの禁止行為は1か月以上、育児配慮や30日前予告は6か月以上の取引が対象であること
  • 公取委が128名の事業者を指導し、2026年には社名公表つきの勧告が出ていること
  • クラウドソーシングの募集情報も「募集情報の的確表示義務」の対象に含まれること

副業をめぐる制度のなかで、この法律だけは性質が違います。税金や社会保険が「あなたが負う義務」なのに対して、フリーランス法は発注側に義務を課す法律です。読者であるあなたは、守る側ではなく守られる側にいます。

この記事の調べ方(編集方針)

  • 本記事は、副業ジャンルの記事を81本以上制作している当サイト編集部が作成しました。事実部分の出典は公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の公式ページおよび公表資料に限定し、URLと確認日を本文中に明記しています。調査日は2026年9月9日です。公表資料の逐語と本文の記述は、独立した検証工程で突き合わせています。
  • 本記事は弁護士の監修を受けていません。そのぶん、解釈が分かれる論点では断定を避け、公式資料の原文表現をそのまま引用する方針を取っています。個別の取引が違反に当たるかは行政の調査で決まるため、最終判断は公正取引委員会またはフリーランス・トラブル110番に確認してください。
  • 制度は2026年9月9日時点のものです。振込手数料の扱いは2025年10月1日の解釈ガイドライン改正で変わっており、2025年に書かれた記事の記述は現在の運用と食い違う可能性があります。
  • 体験談は載せていません。公式資料に記載が見当たらなかった論点は「確認できませんでした」と明記し、推測で埋めることはしていません。当サイトの解釈にすぎない部分は、その旨を都度明示しています。

本記事の調査で埋まらなかった論点

今回の調査で当たったのは、公正取引委員会のパンフレット「ここからはじめる」(全36ページ)、解釈ガイドライン「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(令和7年10月1日改正)、2025年12月10日の指導に関する報道発表と別紙2点、2026年6月18日・8月26日・9月2日の勧告3件、中小企業庁と厚生労働省の法律解説ページの計8資料です。そのうえで、次の4点は公式資料に記載を見つけられませんでした。

  • クラウドソーシング大手(クラウドワークス、ランサーズ、ココナラ等)が個々の取引で「特定業務委託事業者」に当たるかどうかの、事業者名を挙げた判断
  • プラットフォームが差し引くシステム利用料が「報酬の減額」に当たるかどうか
  • フリーランス法違反の相談件数・申出件数の累計値(指導件数128名は公表されているが、申出の総数は見つけられませんでした)
  • 副業として受けた業務委託で、本業の会社が発注元だった場合の扱い

また調査中に気づいた点として、パンフレットの募集情報の的確表示義務の説明では、対象となる広告等の例に「クラウドソーシングサービスのプラットフォーム等」が明記されています。募集要項の報酬額が実際と違う、古い募集が残っている、といった状態は法律上の問題になりうると読めます。ただし誰が義務を負うのかまでは書かれていないため、本文ではこの区別を当サイトの整理として扱っています。

税務側の手続きは副業の開業届の出し方と副業の源泉徴収に、被災したときの補償は副業の労災にまとめています。この記事は、取引そのもののルールだけに絞ります。

目次

結論:会社員の副業も「特定受託事業者」です

この法律の対象になるのは、いわゆる専業フリーランスだけではありません。公正取引委員会のパンフレットに、脚注として次の一文があります。

「特定の事業者との関係で従業員として雇用されている個人が、副業で行う事業について、事業者として他の事業者から業務委託を受けている場合には、この法律における「特定受託事業者」に該当します。」(出典: 公正取引委員会 フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット P.4、2026年9月9日確認)

平日は会社員として働き、週末にライティングやデザインの案件を業務委託で受けている。この形は、法律上そのまま保護対象です。

開業届を出していなくても対象です

パンフレットの定義は「業務委託の相手方である事業者であって、個人であって、従業員を使用しないもの」です。開業届の提出や、青色申告の承認は要件に入っていません。

副業の規模が月2万円でも、年に3件しか受けていなくても、業務委託として仕事を受けているなら事業者として扱われます。開業届の期限や書き方は副業の開業届の出し方で扱っています。

対象になるのは「B to B」だけです

ひとつ線が引かれています。パンフレットは、対象となる取引を「事業者からフリーランスへの委託、つまり『B to B』が対象」とし、「消費者との取引は対象外です」と明記しています(同パンフレット P.4)。

個人のお客さんから直接受けた似顔絵の依頼は対象外。企業から受けたイラスト制作は対象。ここが分かれ目です。

取引の形 フリーランス法
企業から業務委託でライティングを受注 対象
フリーランスから別のフリーランスへ再委託 対象(パンフレットに明記)
個人客から直接受けた依頼 対象外(消費者との取引)
作ったものを企業へ売っただけ 対象外(委託ではなく売買)
実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合 対象外(労働関係法令が適用)

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.4(2026年9月9日確認)

最後の行は見落とされがちです。パンフレットは「形式的には業務委託契約を締結している者であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準関係法令が適用され、本法は適用されません」としています。この場合はフリーランス法より手厚い労働法が働きます。

ユイカ(副業初心者)
合意してたらセーフ、って聞いたことがあるんですけど…

リンク(運営者)
2025年まではその整理でした。2026年1月1日以降の1か月以上の委託は、合意があってもダメになっています。ここが今年いちばん変わったところです。

2026年1月1日、振込手数料の天引きが違反になりました

この記事でいちばんお伝えしたいのが、この変更です。

報酬から振込手数料が引かれる。副業で業務委託を受けている人なら、一度は経験があるはずです。従来は、書面または電磁的方法で合意していれば実費の範囲で許容され、合意がなければ報酬の減額になる、と整理されていました。この従来の整理は改正前の解釈ガイドラインに基づく当サイトのまとめであり、以下に引用する公取委の資料が明文で書いているものではありません。

ここが2026年に変わりました。公正取引委員会は、株式会社ジェイトップへの勧告の注記で、次のように書いています。

「令和7年10月1日に『特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方』(令和6年5月31日公正取引委員会・厚生労働省)が改正されたことにより、令和8年1月1日以降になされた業務委託(1か月以上行うものに限る。)については、特定受託事業者との合意の有無にかかわらず、振込手数料を報酬の額から差し引くことは報酬の減額に該当することとなった。」(出典: 公正取引委員会 令和8年8月26日 株式会社ジェイトップに対する勧告について、2026年9月9日確認)

発注の時期 書面での合意あり 合意なし
2025年12月31日まで 実費の範囲なら許容されると整理されていた(当サイトのまとめ) 報酬の減額に該当
2026年1月1日以降
(1か月以上の業務委託)
報酬の減額に該当 報酬の減額に該当

2026年1月1日以降の扱いの出典: 公正取引委員会 令和8年8月26日 勧告の注記(2026年9月9日確認)。「1か月以上」の限定を明記しているのはこの注記です。令和8年6月18日 勧告の注2は同じ内容を期間の限定なしで書いており、資料間で表現が揺れています。2025年12月31日までの行は当サイトの整理です。

「1か月以上」は回数ではなく期間の話です

注意したいのが括弧書きです。「1か月以上行うものに限る」とあります。

ここを「継続案件だけが対象」と読むのは誤りです。パンフレットは、単一の業務委託の期間について、始期を「業務委託に係る契約を締結した日」、終期を「給付受領予定日と契約終了日のうち最も遅い日」としています。1回限りの依頼でも、発注日から納品予定日までが1か月以上あれば対象です。逆に、依頼を受けて3日で納品する案件は、回数にかかわらず対象外になります(出典: 公正取引委員会 パンフレット P.26、2026年9月9日確認)。

実費を超える分は、以前から違反でした

ジェイトップの事案では、書面または電磁的方法での合意はありました。それでも勧告に至っています。理由は、実際に金融機関へ支払う額を超える手数料を引いていたからです。

公取委は「ジェイトップが実際に金融機関へ支払う振込手数料を超える額である計481,031円を差し引いた」と認定しています(出典: 公正取引委員会 令和8年8月26日 勧告、2026年9月9日確認)。特定受託事業者138名分です。合意の有無以前に、実費を超える天引きは以前から報酬の減額でした。

2025年に書かれた記事は古くなっています

「振込手数料は合意があれば差し引ける」と書いている解説記事は、2025年時点では正しい記述でした。2026年1月1日以降の発注については、その説明は現行の運用と食い違います。

この点は当サイトが競合記事を確認した観察であり、公取委がそう指摘しているわけではありません。ただ、改正の告知が勧告書の注記という目立たない場所にしかないため、更新が遅れやすい構造にはなっています。

2026年1月以降の継続案件で振込手数料が引かれていたら、それは法律上の問題です。まず明細を保存してください。

副業の源泉徴収を読む|公取委パンフレットを見る

正式名称は「フリーランス新法」ではありません

検索で使われる呼び名と、行政が使う呼び名が違います。ここを揃えておくと、公式資料にたどり着きやすくなります。

正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(令和5年法律第25号)です。公正取引委員会と厚生労働省は略称として「フリーランス・事業者間取引適正化等法」を使っています。

「フリーランス新法」「フリーランス保護新法」は報道やメディアで定着した通称で、法令上の名称ではありません。公式サイトを検索するときは、正式名称か「フリーランス法」で探すほうが確実です。

下請法(取適法)とは別の法律です

混同されやすいのが、2026年1月1日に下請法から名称が変わった取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)です。取適法は資本金で線を引きますが、フリーランス法は従業員を使用しているかどうかで判定します。

パンフレットは2つの違いを2点挙げています。①取適法では建設業法における建設工事は対象外だが、フリーランス法は業種の限定がないため建設工事も対象になる。②取適法は発注事業者が他者に提供する役務が対象だが、フリーランス法は発注事業者が自ら用いる役務の委託も対象になる(出典: 公正取引委員会 パンフレット P.5、2026年9月9日確認)。

副業で一人で受注している人は、原則としてフリーランス法の側で考えることになります。

施行日は2024年11月1日です

法令番号は令和5年法律第25号、施行は2024年11月1日です。すでに2年近く運用されています。

条文はシンプルで、目的(第1条)は「特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」です(出典: 公正取引委員会 パンフレット P.29、2026年9月9日確認)。

所管が3つに分かれています

これも実務上は大事な点です。取引の適正化にあたる部分は公正取引委員会と中小企業庁、就業環境の整備にあたる部分は厚生労働省が執行します。

つまり、報酬が支払われないという相談と、ハラスメントを受けたという相談では、窓口が違うことがあります。法律の解説は中小企業庁のフリーランス法ページと厚生労働省のフリーランス向けページにも置かれています(いずれも2026年9月9日確認)。どこに言えばいいかは後半の章で整理します。

対象かどうかは「従業員を使っているか」で決まります

法律は、あなたと発注先の両方を定義しています。まず、あなたの側から。

「特定受託事業者」の定義は、パンフレットによればこうです。「業務委託の相手方である事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するもの。① 個人であって、従業員を使用しないもの ② 法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」

「従業員を使用」には基準があります

ここに数字の基準が置かれています。パンフレットの脚注です。

「従業員を使用とは、1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することです。労働者派遣の派遣先として、上記基準に該当する派遣労働者を受け入れる場合も該当します。なお、事業に同居親族のみを使用している場合は該当しません。」(同パンフレット P.4)

副業の規模が大きくなって人を雇い始めたとき、週20時間以上と31日以上の雇用見込みの両方を満たす人を雇うと、あなたは特定受託事業者ではなくなります。保護される側から外れる、という意味です。どちらか一方だけなら該当しません。

状況 従業員を使用 保護対象か
一人で受注している 該当しない 対象
週10時間だけ知人にアルバイトを頼んでいる 該当しない 対象
週25時間・半年契約でスタッフを雇っている 該当する 対象外
同居の家族だけに手伝ってもらっている 該当しない 対象
他のフリーランスに外注している 該当しない(雇用ではない) 対象

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.4(2026年9月9日確認)。表の各行は当サイトが定義を当てはめた整理です。

外注すると、今度はあなたが義務を負います

表の最後の行に補足が要ります。他のフリーランスに外注しても、あなたは特定受託事業者のままです。ただし同時に、あなたは「業務委託事業者」として取引条件の明示義務を負います。

パンフレットは「取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課されます」と明記しています(同パンフレット P.6)。

副業でライティングを受けて、一部を知り合いに回している。この形は、守られる側であると同時に、守る側でもあります。

発注側の義務は、相手と期間で3段階に分かれます

発注側の呼び名は2つあります。単に「業務委託事業者」と、従業員を使っている、または役員が2人以上いる「特定業務委託事業者」です。

負う義務が違います。

発注側の区分 負う義務
業務委託事業者
(一人フリーランスなど)
取引条件の明示義務(第3条)のみ
特定業務委託事業者
(従業員を使用、または役員2人以上)
明示義務+60日以内の報酬支払義務(第4条)+募集情報の的確表示義務(第12条)+ハラスメント対策の体制整備義務(第14条)
※この3つに期間の条件はありません
特定業務委託事業者で
1か月以上の業務委託
上記+7つの禁止行為(第5条)
特定業務委託事業者で
6か月以上の業務委託
上記+育児介護等への配慮義務(第13条)+中途解除等の30日前予告・理由開示義務(第16条)

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.3・P.26(2026年9月9日確認)

パンフレットの表現では、「一定期間」は取引の適正化については1か月、就業環境の整備については6か月です。

期間は「更新」も通算されます

6か月という数字を見て、3か月契約なら関係ないと考えるのは早計です。パンフレットは、契約の更新により継続して行う場合は「最初の業務委託等の始期から最後の業務委託等の終期まで」で判断するとしています。

更新と認められる条件は2つ。契約の当事者が同一で、給付または役務の提供の内容が一定程度の同一性を有すること。そして前後の業務委託の空白期間が1か月未満であること。

そして公取委はこう釘を刺しています。「一定期間以上の業務委託に該当することを逃れるために、空白期間を1か月と1日だけ空けるなどの行為はしないようにしましょう。」(同パンフレット P.27)

取引条件の明示は8項目|口約束は認められません

発注を受けたら、条件が示されなければなりません。第3条です。パンフレットの表現はこうです。「フリーランスに対し業務委託をした場合は、直ちに、取引の条件を、書面または電磁的方法により明示しなければなりません。」

明示すべき項目は8つあります。

# 明示事項
① 業務委託事業者および特定受託事業者の名称
② 業務委託をした日
③ 特定受託事業者の給付の内容
④ 給付を受領または役務の提供を受ける期日
⑤ 給付を受領または役務の提供を受ける場所
⑥ 検査をする場合は、検査を完了する期日
⑦ 報酬の額および支払期日
⑧ 金銭以外の方法で報酬を支払う場合は、支払方法に関すること

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.6(2026年9月9日確認)。⑥と⑧は該当する取引である場合のみ。

チャットのメッセージでも構いません

形式は緩やかです。パンフレットは電磁的方法の例として「電子メール、SMS、SNSのメッセージ、チャットツール、ファックス(受信データの記録機能を有するものに送信する場合)、CD-R、USBメモリ等」を挙げています。受信と同時に紙で出てくるファックスへ送った場合は、書面の交付として扱われます。

さらに「メッセージの本文に明示事項を記載する方法だけではなく、明示事項が掲載されたウェブページのURLをメッセージに記載する方法やメッセージにPDF等の電子ファイルを添付して送る方法も認められます」としています。

認められないのは口頭です。「電話など口頭で伝えることは認められません」と明記されています。打ち合わせで金額を口約束しただけ、という状態は法律上の明示になっていません。

知的財産権の範囲も書く必要があります

副業のクリエイティブ案件で軽視されがちな項目があります。③の給付の内容です。

パンフレットは、知的財産権を業務委託の目的である使用の範囲を超えて譲渡・許諾させる際には「譲渡・許諾の範囲も明確に記載する必要があります」とし、さらに「フリーランスの知的財産権の譲渡・許諾がある場合には、その対価を報酬に加える必要があります」と書いています。

実際、2025年12月に公表された指導事例には「譲り受ける知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明示していなかった」(放送業の番組・CM制作の委託取引、広告業の画像加工やイラスト作成等の委託取引)が挙がっています。

未定の項目は後から補ってもらえます

金額がその場で決まらない案件もあります。パンフレットは、内容が定められないことに正当な理由がある項目(未定事項)については、委託時の明示が不要としています。

ただし条件付きです。未定事項の内容が定められない理由と、決まる予定日を委託時に明示する必要があります。そして決まったら直ちに補充の明示が必要です。

発注書が来ない案件は、まず8項目のうち何が欠けているかを見てください。口頭だけなら明示義務を満たしていません。

違反されたときの窓口を見る|オンライン秘書 副業の始め方を読む

ユイカ(副業初心者)
うちの取引先、「請求書もらってから翌々月末」なんですけど、それってどうなんでしょう…

リンク(運営者)
起算日は請求書ではなく納品日です。「請求書を提出した日を基準にしていた」は、実際に公取委が是正を求めた事例に載っています。

報酬は受領日から60日以内|請求書起算は違反です

第4条です。ここは副業実務で最も揉めるところだと思います。

条文は「特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」です。ここでいう「給付」は、納品物やサービスの提供そのものを指します。

起算日は「納品した日」です

条文が起算点にしているのは、給付を受領した日です。請求書を出した日でも、検査に合格した日でもありません。

この点は、公正取引委員会が実際に指導した事例として公表しています。

指導された運用 業種と取引
請求書を提出した日を基準に支払期日を設定していた 放送業(デザインの作成)、広告業(デザインの制作等)
受入検査に合格した日を基準に支払期日を設定していた 広告業(広告物の制作等)
自社の事務処理遅れを理由に、支払期日より後に報酬を支払っていた 放送業(ロケ撮影・映像編集)、広告業(写真撮影等)

出典: 公正取引委員会 フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく指導(概要)(2026年9月9日確認)

「請求書をもらってから60日」という運用は、公取委が是正を求めた実例です。副業側から見ると、納品から請求書提出までにラグがあるほど、期限が後ろにずれていくことになります。

「◯日以内」という書き方も違反です

支払期日の書き方にも決まりがあります。パンフレットは、具体的な日を特定できるよう定める必要があるとし、違反例として「●月●日まで」「●●日以内」を挙げています。

理由は明快で、「『まで』『以内』という記載は、いつが支払期日なのか具体的な日を特定できないため、支払期日を定めているとは認められません」。

月締め運用にも上限があります

「毎月末日締切、翌月末日支払」という運用は認められています。ただしパンフレットは条件を付けています。

「月の初めに受領した分の支払が60日以内に行われるよう、毎月末日締切にする場合には、翌月末日までに支払期日を設定する必要があります」。翌々月払いは、月初納品分が60日を超えるため成立しません。

決めなかった場合は自動的に埋まります

支払期日を定めなかったとき、条文は「特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日」が支払期日とみなされるとしています。つまり納品日当日払いです。

60日を超えて定めたときは、受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされます。決めていない、あるいは長すぎる場合、法律のほうが期日を決めてくれる構造です。

このみなし規定が実際に適用された例があります。2026年9月2日、公正取引委員会は日本郵便株式会社に勧告を行いました。研修の実施や郵便物等の配達を委託していた特定受託事業者140名について報酬の支払期日を定めておらず、受領日または役務提供を受けた日までに報酬を支払わなかったという内容です(出典: 公正取引委員会 令和8年9月2日 日本郵便株式会社に対する勧告について、2026年9月9日確認)。支払期日を決めなかった結果、当日払いの義務が発生していたという構図です。

7つの禁止行為|1か月以上の業務委託が対象です

第5条です。1か月以上の業務委託をしている発注事業者には、7つの禁止行為が定められています。

パンフレットは強い書き方をしています。「たとえフリーランスの了解を得たり、合意していても、また、発注事業者に違法性の意識がなくても、これらの行為は本法に違反することになるので十分注意が必要です。」

禁止行為 中身
❶ 受領拒否 フリーランスに責任がないのに、委託した物品や情報成果物の受取を拒む
❷ 報酬の減額 責任がないのに、定めた報酬の額を後から減らして支払う
❸ 返品 責任がないのに、受領後に引き取らせる
❹ 買いたたき 通常支払われる対価に比べ著しく低い報酬の額を不当に定める
❺ 購入・利用強制 正当な理由なく、指定する物や役務を強制して購入・利用させる
❻ 不当な経済上の利益の提供要請 金銭、役務その他の経済上の利益を提供させて利益を不当に害する
❼ 不当な給付内容の変更・やり直し 責任がないのに、費用を負担せず変更させたりやり直させたりする

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.14(2026年9月9日確認)

「合意していても違反」が効いてきます

副業で仕事を切られたくない立場だと、無償のやり直しにも「わかりました」と返してしまいがちです。

パンフレットの立て付けは、その同意を無効化しています。購入・利用強制の説明では「発注事業者に強制の認識がなくても、事実上、フリーランスに購入等を余儀なくさせていると認められる場合には、購入・利用強制に該当します」と書かれています。

イベント中止のキャンセルは報酬相当額が必要です

2025年12月に公取委が公表した留意点に、副業でも起こりうる具体例があります。8月31日開催のイベント実演を4月1日に委託し、集客不振を理由に直前で中止・キャンセルしたケースです。

公取委の整理はこうです。同日に別の業務を実施することを不可能にさせた場合、作業が無駄になった分の費用を負担するだけでなく、当該業務委託の「報酬の額」相当額の支払を行わなければ、給付内容の変更により利益を不当に害したとして本法上問題となるおそれがあります(出典: 公正取引委員会 第5条の各規定に関する留意点、2026年9月9日確認)。

直前キャンセルはギャラなし、という慣行に真正面から釘を刺した内容です。

単価改定の遡及適用も違反です

同じ留意点に、もうひとつ副業に関係の深い例があります。挿絵の単価を1割下げる合意をしたうえで、合意日より前に旧単価で発注済みだった分にも新単価を遡って適用した事例です。

公取委は「単価引き下げの合意日前に旧単価で発注したものについても新単価を遡及適用し、旧単価と新単価の差額を報酬の額から差し引くことは、報酬の減額として、本法上問題となります」と断定しています。値下げに応じた場合でも、適用は合意日以降の発注分に限られます。

買いたたきは「協議したか」で判断されます

7つのうち、判断が最も難しいのが買いたたきです。「著しく低い」の線引きが分かりにくいためです。

パンフレットは4つの判断要素を挙げています。

# 勘案される要素
① 報酬の額の決定に当たり、フリーランスと十分な協議が行われたかどうかなど対価の決定方法
② 差別的であるかどうかなど対価の決定内容
③ 「通常支払われる対価」と当該給付に支払われる対価との乖離状況
④ 当該給付に必要な原材料等の価格動向

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.16(2026年9月9日確認)

金額そのものより先に、①の「協議したか」が来ています。

一方的に決めた、が指導の理由になっています

これは実際の指導事例と符合します。2025年12月公表の指導概要には、「自社の予算や規定を基準にして報酬の額を一方的に決定した」が、放送業(番組の演出等の委託取引)と広告業(グラフィックデザインの委託取引)の両方で挙がっています。

さらに、値上げ交渉への対応も指導対象になっています。「コスト上昇を理由とした報酬引き上げ要請に対し、理由を記録に残る方法で回答することなく従来どおりの報酬の額に据え置いた」という事例です。

据え置いたこと自体ではなく、記録に残る形で理由を返さなかったことが問題とされています。副業側から見れば、値上げ交渉はメールやチャットなど記録の残る手段で行うほうが、相手に義務を意識させやすいということになります。

相場がない仕事はどうなるか

新しいジャンルの副業では「通常支払われる対価」が存在しないことがあります。生成AIを使った制作代行などが典型です。

解釈ガイドライン「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」は、この場合の基準を用意しています。「通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については、例えば、当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には、次の額を通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額とする。① 従前の給付に係る単価で計算された対価に比し著しく低い報酬の額 ② 当該給付に係る主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた報酬の額」とされています(出典: 公正取引委員会・厚生労働省 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方、令和7年10月1日改正、2026年9月9日確認)。

つまり相場がなくても、前回の単価と比べる、公表資料でコスト上昇を示す、という2つの手が用意されています。値上げ交渉の材料としても使えます。

募集情報の的確表示|クラウドソーシングも対象です

第12条です。副業を始める人がまず触れるのが募集情報なので、ここは知っておく価値があります。

発注事業者は、広告等でフリーランスを募集する際、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。

対象の「広告等」にプラットフォームが明記されています

注目したいのは、パンフレットが挙げる広告等の範囲です。「①新聞、雑誌に掲載する広告、②文書の掲出・頒布、③書面、④ファックス、⑤電子メール・メッセージアプリ等(メッセージ機能があるSNSを含む。)、⑥放送、有線放送等(テレビ、ラジオ、オンデマンド放送、ホームページ、クラウドソーシングサービスのプラットフォーム等)」。

クラウドソーシングの案件ページが明文で例示されています。

何が違反になるのか

パンフレットが挙げる違反例と非違反例を並べます。

行為 評価
実際に業務委託を行う事業者と別の事業者名で募集情報を掲載する 虚偽の表示に該当
実際の報酬額よりも高額の報酬額の募集情報を表示する 虚偽の表示に該当
フリーランスの募集と労働者の募集が混同されるような表示 誤解を生じさせる表示に該当
募集終了後も情報を掲載し続ける 「正確かつ最新の表示の義務」の措置を欠くことになる(当サイトの整理。パンフレットは違反例ではなく措置の例として記載)
応募後、当事者間の合意に基づき募集条件から実際の契約条件を変更する 法違反とならない

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.18(2026年9月9日確認)

最後の行が実務的には効きます。募集より安い条件を提示されたとき、納得して合意すれば法違反にはなりません。募集条件は交渉の出発点であって、確定した金額ではないということです。

誰が義務を負うのかは書かれていません

ここで正直に書いておきます。クラウドソーシングの案件ページに古い募集が残っていた場合、義務を負うのは募集を掲載した発注事業者なのか、プラットフォーム運営者なのか。この点をパンフレットは明示していません。

パンフレットは「他の事業者に募集を委託した場合には、情報の訂正・募集の終了・内容の変更を反映するよう他の事業者に速やかに依頼する必要があります」とし、依頼を繰り返しても変更されなかった場合は「発注事業者が法違反となるものではありません」としています。ここから、義務の主体は発注事業者だと読めますが、これは当サイトの整理です。

案件選びの実務についてはクラウドワークス副業の始め方とランサーズ副業の始め方で扱っています。

継続案件の3つの義務|配慮は6か月以上、ハラスメント対策は期間を問いません

継続案件になると、保護の層が増えます。就業環境の整備にあたる部分で、こちらは厚生労働省の所管です。

育児介護等への配慮義務(第13条)

6か月以上の業務委託では、フリーランスからの申出に応じて、妊娠、出産、育児または介護と業務を両立できるよう必要な配慮をしなければなりません。6か月未満の場合は努力義務です。

配慮の手順は3段階と定められています。①申出の内容等の把握、②取り得る選択肢の検討、③配慮の内容の伝達・実施、または配慮不実施の伝達・理由説明。

法違反となる例として、「申出があったにも関わらず、フリーランスの申出内容を無視する」「フリーランスから申出のあった配慮について実施可能か検討しない」「配慮不実施としたにもかかわらず、その理由を説明しない」が挙げられています。

配慮を実施できなくても違反ではありません。検討せずに無視することが違反です。

ハラスメント対策の体制整備義務(第14条)

こちらは6か月以上ではなく、特定業務委託事業者であれば期間を問わず義務です。相談対応のための体制整備その他の必要な措置を講じなければなりません。

対象はセクハラ、マタハラ、パワハラの3類型。パワハラの例として「契約内容に基づき成果物を納品したにもかかわらず正当な理由なく報酬を支払わないことまたは減額することを、度を超して繰り返し示唆するまたは威圧的に迫ること」が挙がっています。

支払わないと繰り返しちらつかせる行為が、ハラスメントとして整理されています。

申出を理由とした不利益取扱いは禁止です

3つ目は、報復の禁止です。パンフレットは、フリーランスが配慮の申出をしたことやハラスメントの相談をしたことを理由に、契約解除、報酬の不払い・減額、取引の停止などの不利益な取扱いをしてはならないとしています。

行政機関に申出をした場合も同じです。「発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはなりません。」

6か月を超えて続いている案件なら、育児・介護の配慮も30日前予告も対象です。契約の開始日を確認してください。

副業の社会保険を読む|副業の労災を読む

中途解除は30日前予告|例外は5つです

第16条です。継続案件が突然切られる、という副業でよくある事態に直接効く条文です。

6か月以上の期間で行う業務委託について、契約の解除または不更新をしようとする場合、例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。

さらに、予告された日から契約満了までの間にフリーランスが理由を請求した場合、発注事業者は遅滞なく開示しなければなりません。

予告が不要になる5つの例外

# 例外事由
① 災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
② 再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
③ 業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
④ フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
⑤ 基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.24(2026年9月9日確認)

「解除できると契約に書いてある」は理由になりません

契約書に無予告解除の条項があるケースは珍しくありません。パンフレットはここに明確な注記を付けています。

「発注事業者とフリーランスの間で、『一定の事由がある場合に事前予告なく解除できる』と定めていた場合も、例外事由に該当しない限り、直ちに事前予告が不要とはなりませんので留意が必要です。」

「更新しない」も予告が要ります

解除だけでなく、不更新も対象です。パンフレットの定義では、契約の不更新とは「発注事業者が不更新をしようとする意思を持って、契約満了日から起算して1か月以内に次の契約を締結しない場合」を指します。

断続的な発注でも、通算で6か月以上になっている場合は対象です。今後は取引を停止すると判断したなら、30日前の予告が要ります。次の依頼が来なくなって自然消滅、という終わり方は、条件を満たせば法律上の問題になりえます。

2026年の勧告3件を読む|社名は公表されます

制度の説明だけでは、実効性が見えません。実際に何が起きているかを見ます。

勧告は公正取引委員会が社名入りで報道発表されます。2026年に入ってからも複数出ています。ここでは3件を取り上げます。

なお、法律が定める「公表」は命令の段階の措置です(パンフレットP.28)。勧告の社名公表は運用上の実務であり、下の3件がその実例にあたります。この区別は当サイトの整理です。

項目 株式会社エス・ピー・シー 株式会社ジェイトップ 日本郵便株式会社
公表日 2026年6月18日 2026年8月26日 2026年9月2日
事業の概要 出版業、広告制作業等 家庭用電気製品の運送、設置工事、クリーニング等 郵便業務、銀行窓口業務、保険窓口業務等
違反1 84名に取引条件を明示しなかった — 167名に取引条件を明示しなかった
違反2 31名に、請求書の提出遅れや自社の事務処理遅れを理由に支払期日までに報酬を支払わなかった — 140名に、支払期日を定めないまま受領日までに報酬を支払わなかった
違反3 36名から、合意なく振込手数料 計55,770円を差し引いた 138名から、実費を超える振込手数料 計481,031円を差し引いた —
違反法条(参照条文) 第3条第1項、第4条第5項、第5条第1項第2号 第5条第1項第2号 第3条第1項、第4条第5項
返金 2026年6月4日に支払済み 2026年8月5日までに支払済み —

出典: 公正取引委員会 令和8年6月18日 株式会社エス・ピー・シーに対する勧告について、令和8年8月26日 株式会社ジェイトップに対する勧告について、令和8年9月2日 日本郵便株式会社に対する勧告について(いずれも2026年9月9日確認)。エス・ピー・シーは「参照条文」、他2件は「違反法条」と見出しが異なりますが、記載内容は同種です。

大企業にも出ています

3件目は2026年9月2日の日本郵便株式会社への勧告です。公取委の発表では資本金7000億円と記載されています。令和6年11月1日から令和7年6月30日までの間、167名に対し取引条件を明示せず、140名に対し報酬の支払期日を定めないまま受領日までに支払わなかったと認定されました。違反法条は第3条第1項と第4条第5項です(出典: 公正取引委員会 令和8年9月2日 日本郵便株式会社に対する勧告について、2026年9月9日確認)。

なお、フリーランス法に資本金の要件はありません。下請法(2026年1月1日から取適法)は資本金で線を引きますが、この法律は従業員を使用しているかどうかで判定します。規模の大小に関係なく、明示と支払期日という基本の2つが問われています。

金額の小ささが特徴です

エス・ピー・シーの振込手数料の差引額は、36名合計で55,770円です。1人あたりにすると1,500円程度。

この規模で社名公表つきの勧告が出ている点は、当サイトが注目したところです。金額の大小ではなく、行為の性質で判断されていると読めます。ただし公取委が金額基準を公表しているわけではありません。

「請求書の提出が遅れた」は理由になりません

エス・ピー・シーの違反事実に、支払遅延の理由が2つ書かれています。「当該事業者からの請求書の提出が遅れたこと又は自社の事務処理が遅れたこと」です。

副業側が請求書を出し忘れていても、それは支払期日を守らない理由として認められていません。第4条の起算点が納品日である以上、当然の帰結ではあります。

命令に違反すると罰金です

勧告に従わない場合は命令・公表に進みます。パンフレットは「命令違反をした場合、50万円以下の罰金が科せられます」としています。

128名が指導を受けました|集中調査は放送業と広告業

勧告より前の段階に、指導があります。こちらは社名が出ませんが、件数が公表されています。

公正取引委員会は2025年12月10日、次のように公表しました。令和6年度に問題事例の多い業種に係る発注事業者3万名を対象に「フリーランスとの取引に関する調査」を実施したうえで、フリーランスとの取引が多い業種である放送業および広告業の事業者について集中的に調査を行い、令和7年10月までの間に128名の事業者に対して是正を求める指導を行った(出典: 公正取引委員会 令和7年12月10日 フリーランス法に基づく指導等について、2026年9月9日確認)。

調査は申出だけを起点にしていません

読み取れることが1つあります。公取委は、フリーランスからの申出を待つだけでなく、問題事例の多い業種の発注事業者3万名を対象とした調査を先に行い、そのうえで申出情報も踏まえて集中調査に進んでいます。

副業側が声を上げなくても発注側に調査が入る経路がある、ということです。ただし自分の案件が拾われる保証はありません。後述する申出の手続きは、依然として最も直接的な手段です。

指導の中身は明示義務と支払義務に集中しています

公表された指導事例は、大きく3つに分かれます。取引条件の明示義務、報酬支払義務、禁止行為です。

このうち明示義務の事例には「業務委託をする際に取引条件を明示していなかった」「一定期間共通の取引条件(共通事項)との関連性を個々の発注時に明示していなかった」「譲り受ける知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明示していなかった」の3つが挙がっています。

いちばん基本の「発注書を出す」ところが最も多く指導されている、という構図です。副業側が「発注書がないのは普通」と諦める必要はありません。

副業タイプ別|フリーランス法の対象になるか

ここまでの定義を、当サイトが扱っている副業の形に当てはめます。表に出てくる「情報成果物」は、プログラム、映像、原稿やデザインなど文字・図形で構成されるものを指す法律上の呼び名です。

副業の形 適用の考え方
企業から直接受けるライティング・デザイン 典型的な対象。情報成果物の作成委託に当たる
クラウドソーシング経由の受注 発注者が事業者なら対象。仲介事業者自身が該当するかは委託への関与の状況等で判断される
オンライン秘書・事務代行 役務の提供委託として対象
スキルマーケットで個人客に販売 買い手が消費者なら対象外
アフィリエイト・広告収入 委託関係がなければ対象外。ただしASP経由の記事作成案件は委託になりうる
物販・フリマでの販売 売買であり対象外
アルバイト・スポットワーク 雇用契約なので労働法の領域。フリーランス法は適用されない

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.4〜P.5(2026年9月9日確認)をもとに当サイトが整理。個別の判断は取引実態によります。

仲介事業者の扱いには含みがあります

クラウドソーシングの行が最も判断の難しいところです。パンフレットのQ&Aは、こう書いています。

「単に仲介をしている場合には該当しませんが、フリーランスに対して再委託をしている場合や実質的にフリーランスに業務委託をしているといえる場合には該当します。実質的にフリーランスに業務委託をしているといえるかは、委託の内容(物品、情報成果物または役務の内容、相手方事業者の選定、報酬の額の決定等)への関与の状況等、契約および取引実態を総合的に考慮した上で判断します。」

つまり、案件を仲介しているだけのプラットフォームは対象外ですが、報酬額の決定や相手方の選定に踏み込んでいれば該当しうる。個別の事業者名を挙げた判断は公表されていません。

業種の限定はありません

もうひとつ押さえておきたいのは、パンフレットの「本法の適用対象には、業種・業界の限定はありません。発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象となります」という一文です。

ITでもクリエイティブでも運送でも、業務委託であれば同じルールが働きます。ジェイトップの事案が家庭用電気製品の運送・設置だったことが、その実例です。

ユイカ(副業初心者)
でも申し出たら、絶対に切られますよね…?

リンク(運営者)
申出を理由にした契約解除や取引停止は、それ自体が別の違反です。まずは相談無料・匿名OKの窓口があるので、そこから確認するだけでも大丈夫ですよ。

違反されたときにどこへ言えばいいのか

窓口は2系統あります。目的が違うので、使い分けます。

窓口 できること
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省への申出
公正取引委員会 相談・申告等窓口
行政が報告徴収・立入検査を行い、指導・助言、勧告、命令・公表につなげる。オンラインでも可能。近くの公正取引委員会、経済産業局、都道府県労働局でも受け付けている
フリーランス・トラブル110番
(厚生労働省委託事業・第二東京弁護士会運営)
弁護士にワンストップで相談。相談無料・匿名相談可。電話受付は9:30〜16:30(土日祝を除く)。フォームやWeb面談にも対応し、和解あっせんも実施
過去の勧告を確認する
フリーランス法 勧告一覧
どんな行為が勧告に至ったかを社名つきで確認できる

出典: 公正取引委員会 パンフレット P.28(2026年9月9日確認)

行政に言うか、当事者間で解決するか

申出は、その取引だけを解決する手続きではありません。行政が発注事業者を調査し、必要なら是正させる流れです。指導や勧告は、あなたの案件を超えて会社全体の運用に及びます。

一方、フリーランス・トラブル110番は個別の解決寄りです。パンフレットは、相談者の希望により「和解あっせん」「行政機関への申出の支援」「自らで交渉」の3つの進路があるとし、申出の支援については「申出書の書き方や論点の整理などを支援します。※ 申出書の作成代行、提出代行はできません。」と書いています。

報復されたらそれ自体が違反です

申出をためらう最大の理由は、仕事を切られることだと思います。ここは法律が先回りしています。

第6条第3項および第17条第3項が報復措置を禁止しています。申出を理由とした契約解除や取引停止は、それ自体が別の違反になります。

証拠は自分で残すしかありません

ここは当サイトの実務的な観察です。公式資料は、フリーランス側が何を保存すべきかまでは書いていません。

ただ、パンフレットはSNSで取引条件を明示する場合の注意として「メッセージが削除されたり、閲覧ができなくなる可能性もあるため、発注事業者・フリーランス双方で、その場合の対応を事前に決めておいたり、スクリーンショット等で明示された内容の保存を行うとよいでしょう」としています。中途解除の予告についても、ファイルのダウンロード保存を勧めています。

チャットの発注、金額のやりとり、振込明細。この3つを案件ごとに残しておけば、申出のときに困りません。

申し出るときに手元に揃えるもの

公式にテンプレートが示されているわけではありませんが、勧告書に書かれている認定事実の項目から逆算すると、次の5点が揃っていれば話が早いはずです。これは公表資料の記載項目から当サイトが組み立てた整理です。

用意するもの なぜ必要か
発注元の名称と、従業員がいるかどうかの手がかり 特定業務委託事業者かどうかで、かかる義務が変わるため
いつ何を頼まれたかがわかるやりとり 「業務委託をした日」と給付の内容の特定に使うため
納品した日がわかる記録 支払期日の起算日になるため
提示された報酬額と支払期日 明示の有無と、60日を超えていないかの判定に使うため
実際の入金額がわかる明細 減額の有無と金額の特定に使うため

2026年の勧告3件の認定事実の記載項目をもとに当サイトが整理。公正取引委員会が申出書の様式としてこの5点を求めているわけではありません。

よくある質問

副業でこの法律に関して実際に浮かびやすい疑問を、公式資料の記述に対応させて10問に整理しました。

Q1. 会社員の副業でも本当にフリーランス法の対象になりますか

なります。公正取引委員会のパンフレットP.4の脚注に「特定の事業者との関係で従業員として雇用されている個人が、副業で行う事業について、事業者として他の事業者から業務委託を受けている場合には、この法律における『特定受託事業者』に該当します」と明記されています。開業届の有無や副業の規模は要件になっていません。

Q2. 2026年から振込手数料は一切引かれなくなるのですか

2026年1月1日以降になされた業務委託のうち、1か月以上行うものについては、合意の有無にかかわらず差し引きが報酬の減額に該当するとされています。この「1か月以上」は回数ではなく期間の判定で、1回限りの依頼でも発注日から納品予定日まで1か月以上あれば対象です。なお実費を超える額の差引きは、それ以前から報酬の減額に当たります。

Q3. 発注書をもらえないまま仕事をしています。違反ですか

取引条件の明示は第3条の義務で、業務委託をした場合は直ちに、書面または電磁的方法で明示しなければなりません。電話など口頭で伝えることは認められていません。ただし書面の様式は定められておらず、メールやチャットのメッセージ、PDFの添付でも構いません。実際に「業務委託をする際に取引条件を明示していなかった」ことは、公取委の指導事例に挙がっています。

Q4. 支払いが「請求書提出の翌々月末」と言われました

支払期日の起算点は、条文上「給付を受領した日」です。請求書を提出した日を基準に支払期日を設定していた運用は、公取委が是正を求めた指導事例に挙がっています。また月締め運用の場合、パンフレットは毎月末日締切なら翌月末日までに支払期日を設定する必要があるとしています。

Q5. 単発の案件でも守ってもらえますか

義務の範囲が変わります。取引条件の明示義務は期間を問わず適用されます。一方、7つの禁止行為は1か月以上、育児介護等への配慮義務と中途解除の30日前予告は6か月以上の業務委託が対象です。ここでの期間は契約の回数ではなく、発注日から給付の受領予定日までの長さで判定されます。60日以内の報酬支払義務とハラスメント対策の体制整備義務は、発注側が特定業務委託事業者であれば期間を問わず適用されます。

Q6. 契約書に「30日前の予告なく解除できる」と書いてあります

パンフレットは「発注事業者とフリーランスの間で、『一定の事由がある場合に事前予告なく解除できる』と定めていた場合も、例外事由に該当しない限り、直ちに事前予告が不要とはなりません」としています。契約の文言だけで第16条の義務が外れるわけではありません。

Q7. 個人のお客さんから直接受けた仕事は対象ですか

対象外です。パンフレットは対象となる取引を「事業者からフリーランスへの委託、つまり『B to B』が対象」とし、「消費者との取引は対象外です」と明記しています。フリーランスからフリーランスへの業務委託は対象になります。

Q8. 私が誰かに外注する側になった場合はどうなりますか

あなたが「業務委託事業者」として取引条件の明示義務を負います。パンフレットは「取引条件の明示義務は、フリーランス同士の取引も対象であるため、発注事業者がフリーランスである場合にも義務が課されます」としています。従業員を使用している場合は「特定業務委託事業者」となり、60日以内の報酬支払義務なども加わります。

Q9. 違反を申し出たら取引を切られませんか

申出を理由とした不利益な取扱いは、第6条第3項および第17条第3項で禁止されています。パンフレットも「発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはなりません」と明記しています。ただし実際に切られた場合にどう回復するかは、個別の判断になります。

Q10. 違反した会社にはどんな制裁がありますか

行政の流れは、報告徴収・立入検査による調査、指導・助言、勧告、命令・公表の順です。法律が定める公表は命令の段階ですが、公正取引委員会は運用上、勧告についても社名入りで報道発表しています。命令に違反した場合は50万円以下の罰金です。2025年10月までに128名の事業者が指導を受けており(同年12月10日公表)、2026年には社名公表つきの勧告が複数出ています。

まとめ|法律はあります。動かすのは自分です

この記事の要点を、副業の実務に落として並べます。

確認すること 基準
自分は対象か 会社員の副業でも、業務委託で受注していれば特定受託事業者
取引条件が示されているか 8項目。口頭は不可。チャットやPDFは可
支払期日の起算点 納品日から60日以内。請求書提出日ではない
振込手数料 2026年1月1日以降の1か月以上の委託は、合意があっても差引不可
継続案件の期間 1か月以上で禁止行為、6か月以上で配慮義務と30日前予告
困ったとき 公取委等への申出、またはフリーランス・トラブル110番

出典: 公正取引委員会 パンフレットおよび本文中に挙げた各報道発表(2026年9月9日確認)をもとに当サイトが整理。

制度クラスタの記事を8本書いてきて、この法律だけ性質が違うと感じました。開業届も源泉徴収も社会保険も、あなたが手続きをする制度です。フリーランス法は、相手に義務を課す制度です。

ただし、行政が動くきっかけの多くは申出です。128名への指導は3万名を対象とした調査と申出情報を踏まえたものですが、集中調査の対象は放送業と広告業に絞られていました。あなたの業種が次に選ばれる保証はありません。

やることは3つだけだと考えています。発注のやりとりを記録の残る手段に寄せること。振込明細を案件ごとに保存すること。そして、おかしいと思ったら窓口の存在を思い出すこと。

副業を続けるほど、取引の相手は増えます。次に読むなら、税務側の入口である副業の開業届の出し方と、報酬から引かれるもうひとつの天引きを扱った副業の源泉徴収が近い位置にあります。取引先が課税事業者かどうかで扱いが変わる論点は副業のインボイスにまとめました。

まずは直近3件の案件について、発注条件・支払期日・振込明細が手元に残っているか確認してください。それが最初の一歩です。

副業の開業届の出し方を読む|副業の源泉徴収を読む

未経験から月3万円までの道筋を7ページにまとめた無料ガイドを配布しています。市場価値の数値化ワークと7日間プラン付き、登録不要でそのまま読めます。

無料ガイドブックを受け取る

目次
目次
タイトルとURLをコピーしました