年金をもらいながら働くと年金が減る。この話は広く知られています。ところが「いくらから減るのか」の数字が、いま出回っている記事のあいだでバラバラです。
結論から書きます。2026年4月から、基準額は月65万円です。日本年金機構は「令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました」と書いています。
にもかかわらず、多くの解説が「62万円に引き上げ」と書いています。これは間違いというより、古い数字です。厚生労働省が理由をはっきり書いています。「改正後の支給停止基準額(62万円)は、法律成立時(2025年6月)の額です。2026年4月からは65万円になります」。
そしてもうひとつ。副業が業務委託やフリーランスなら、その収入はこの計算に入りません。在職老齢年金は、厚生年金保険の被保険者であるときに調整される仕組みだからです。ここを知らずに「副業したら年金が止まる」と手を止めている人が、かなりいるはずです。
この記事でわかること
- 2026年4月から、支給停止の基準額が月51万円から65万円になったこと
- 「62万円」は法律成立時(2025年6月)の額で、現行の数字ではないこと
- 止まるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金と経過的加算は全額出ること
- 基準を超えても、超えた分の「半額」しか止まらないこと
- 副業が業務委託・フリーランスなら、在職老齢年金の計算に入らないこと
- 副業がパートでも、厚生年金に入らなければ計算に入らないこと
- 2026年10月に、賃金要件(月8.8万円)が撤廃されること
- ただし全員が加入になるわけではなく、当分の間の例外が置かれていること
- 本業と副業の両方で加入すると、報酬が合算されること
- その届出は会社ではなく本人が10日以内に出すこと
- 年金は非課税ではなく、雑所得として課税されること
この記事の調べ方(編集方針)
- 本記事は、副業ジャンルの記事を85本以上制作している当サイト編集部が作成しました。事実部分の出典は日本年金機構・厚生労働省・国税庁の公式資料に限定し、URLと確認日を本文中に明記しています。調査日は2026年9月14日です。
- 本記事は社会保険労務士・税理士の監修を受けていません。そのぶん、解釈が分かれる論点では断定を避け、公式資料の原文表現をそのまま引用する方針を取っています。
- 引用した日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」は、2026年9月14日に確認した版です。同ページには「更新日:2026年4月1日」と表示されています。
- 金額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。本記事の65万円は令和8年度(2026年度)の額です。
- 体験談は載せていません。公式資料に記載を確認できなかった論点は「確認できませんでした」と明記しています。
本記事の調査で埋まらなかった論点
今回当たったのは、日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」、日本年金機構「在職老齢年金早見表」、日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」、厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」、厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」、厚生労働省「年金制度の仕組み 第10 在職老齢年金・在職定時改定」、厚生労働省年金局年金課「厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案について(概要)」、国税庁タックスアンサーNo.1600の8点です。そのうえで、次の点は確認できませんでした。
- 今回の見直しで支給停止の対象者が何人減るかの確定値。報道や解説では人数と金額の試算が流通していますが、65万円で計算し直した数値を示した公表資料は、2026年9月14日時点で確認できませんでした。本記事では人数の試算を扱いません。
- 令和9年度(2027年度)以降の基準額。日本年金機構は「毎年度、賃金の変動に応じて改定されます」と書いていますが、翌年度の額そのものは当然ながら未公表です。
- 副業の業務委託収入が在職老齢年金の計算に入らないことを、正面から名指しで書いた公式資料。本記事では、在職老齢年金が「厚生年金保険の被保険者であるとき」の調整であるという原文から説明していますが、「副業」という語で整理した公表資料は見つかりませんでした。
社会保険に加入するかどうかの入口は副業の社会保険にまとめています。この記事は、すでに年金を受け取っている人が働くときの支給停止だけに絞ります。
目次
- 結論:2026年4月から、基準は月65万円です
- 在職老齢年金とは|被保険者であるときの調整です
- なぜ「62万円」と書かれているのか
- 計算式|超えた分の「半額」が止まります
- 具体例|賃金45万円・年金10万円の人
- 止まらないもの|老齢基礎年金と経過的加算
- 総報酬月額相当額|賞与は12分の1で効きます
- 副業が業務委託なら、この計算には入りません
- 副業がパート・アルバイトの場合
- 【2026年10月】賃金要件が撤廃されます
- ただし全員が加入になるわけではありません
- 両方で加入したら、報酬は合算されます
- 届出は会社ではなく、本人が10日以内に出します
- 70歳を過ぎても止まります|保険料は払いません
- 年金が増えるとき|在職定時改定と退職改定
- 全額支給停止になると、何が起きるか
- 年金は非課税ではありません|雑所得です
- 確定申告不要制度|400万円以下かつ20万円以下
- 働き方別|支給停止に効く・効かない
- よくある勘違い5つ
- 今日やること|3ステップ
- よくある質問
- まとめ
- 結論:2026年4月から、基準は月65万円です
- 在職老齢年金とは|被保険者であるときの調整です
- なぜ「62万円」と書かれているのか
- 計算式|超えた分の「半額」が止まります
- 具体例|賃金45万円・年金10万円の人
- 止まらないもの|老齢基礎年金と経過的加算
- 総報酬月額相当額|賞与は12分の1で効きます
- 副業が業務委託なら、この計算には入りません
- 副業がパート・アルバイトの場合
- 【2026年10月】賃金要件が撤廃されます
- ただし全員が加入になるわけではありません
- 両方で加入したら、報酬は合算されます
- 届出は会社ではなく、本人が10日以内に出します
- 70歳を過ぎても止まります|保険料は払いません
- 年金が増えるとき|在職定時改定と退職改定
- 全額支給停止になると、何が起きるか
- 年金は非課税ではありません|雑所得です
- 確定申告不要制度|400万円以下かつ20万円以下
- 働き方別|支給停止に効く・効かない
- よくある勘違い5つ
- 今日やること|3ステップ
- よくある質問
- まとめ
結論:2026年4月から、基準は月65万円です
最初に数字だけ置きます。
| 時期 | 支給停止の基準額 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 月50万円 | 厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」 |
| 改正前 | 月51万円 | 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(「月51万円から65万円に引き上げ」の記述) |
| 2026年度(令和8年度) | 月65万円 | 同上 |
日本年金機構のページには、こう書かれています。「令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました」(日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」更新日2026年4月1日、2026年9月14日確認)。
「引き上げられました」と過去形で書かれています。予定ではなく、すでに動いたあとの話です。
同じページの計算式も65万円で書き換えられています。
基本月額と総報酬月額相当額との合計が65万円以下の場合 全額支給
そして注記があります。「令和8年度の基準額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます」。つまり65万円は2026年度の数字であって、来年また動きます。この記事を読むときも、年度を確認してください。
まず、自分の年金額と月収の合計が65万円を超えるかどうかだけ確認してください。
在職老齢年金とは|被保険者であるときの調整です
制度の説明を、原文から始めます。日本年金機構はこう書いています。
老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるときに、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります。
条件が2つ並んでいることに注目してください。①老齢厚生年金を受給している ②厚生年金保険の被保険者である。この両方がそろったときに調整が入ります。
厚生労働省の説明は、もう少し政策寄りです。「年金を受給しながら働く高齢者について、一定額以上の報酬のある方は年金制度を支える側に回っていただくという考え方に基づき、年金の支給を調整する仕組みです」。そして続けて、「納めた保険料に応じた給付を受けられる社会保険では、例外的な仕組みと言えます」とも書いています(厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」2026年9月14日確認)。
役所自身が「例外的な仕組み」と書いている。ここが今回の改正の空気を表しています。
用語も押さえておきます。
| 用語 | 中身 |
|---|---|
| 基本月額 | 加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額 |
| 総報酬月額相当額 | その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計÷12 |
「基本月額」は老齢厚生年金だけです。老齢基礎年金は入りません。ここを混ぜて計算すると、実態より不利な数字が出ます。
なぜ「62万円」と書かれているのか
検索すると、「62万円に引き上げ」と書いた記事が出てきます。これには理由があります。
厚生労働省のページに、はっきり注記があります。
なお、改正後の支給停止基準額(62万円)は、法律成立時(2025年6月)の額です。2026年4月からは65万円になります。
同じページの本文でも、見直しの内容は「月50万円→62万円(2024年度の場合)へ引き上げ」と書かれています。カッコの中の「2024年度の場合」が肝です。
在職老齢年金の基準額は、毎年度の賃金変動で改定されます。法律を作ったときは2024年度の水準で「62万円」と示し、実際に施行される2026年度には、その間の賃金変動を反映して65万円になった。それだけの話です。
つまり「62万円」は嘘ではなく、賞味期限が切れた数字です。法律の成立直後に書かれた記事には、62万円で止まっているものが目立ちます。更新されないまま検索結果に残っているものもあります。
判別の仕方は簡単です。その記事が「2024年度の場合」という括弧を書いているかどうか。書いていなければ、書き手も62万円が暫定値だと気づいていない可能性があります。
計算式|超えた分の「半額」が止まります
もうひとつの大きな誤解が、「基準を超えたら年金が止まる」という理解です。止まるのは超過分の半額だけです。
日本年金機構の計算式は次のとおりです。
基本月額と総報酬月額相当額との合計が65万円を超える場合
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2
言葉に直します。
手順
- 基本月額(老齢厚生年金の月額)と総報酬月額相当額を足す
- そこから65万円を引く。マイナスなら全額支給で終わり
- 残った金額を2で割る。それが支給停止額
- 基本月額から支給停止額を引いた額が、その月に出る老齢厚生年金
1万円オーバーしたら止まるのは5,000円。この「半額」を知らないまま、収入を基準ぎりぎりに抑えている人がいます。厚生労働省の資料でも、65〜69歳の「3割以上が『年金額が減らないよう時間を調整し会社等で働く』と回答」したという調査結果が引かれています。制度が働き方を縛っている、という問題意識が今回の改正の出発点でした。
具体例|賃金45万円・年金10万円の人
厚生労働省が出している例をそのまま使います。賃金(ボーナス含む年収の12分の1)45万円、厚生年金10万円の人です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 総報酬月額相当額 | 45万円 |
| 基本月額 | 10万円 |
| 合計 | 55万円 |
旧制度(基準50万円)だったら
55万円-50万円=5万円。この半額の2万5,000円が支給停止。手元に残る老齢厚生年金は7万5,000円です。
2026年度(基準65万円)では
合計55万円は65万円以下なので、全額支給。厚生労働省はこの例について、62万円を前提に「従来停止されていた2万5千円も支給されます」と書いています。実際の基準額は65万円なので、全額支給という結論は変わりません。
年間にすると30万円の差です。これが「62万円か65万円か」を確認する価値のある理由です。
もう1パターン、基準を超える例も置きます。総報酬月額相当額60万円、基本月額12万円の人。
60万円+12万円=72万円
72万円-65万円=7万円
7万円÷2=3万5,000円(支給停止額)
12万円-3万5,000円=8万5,000円(その月に出る老齢厚生年金)
72万円という高い水準でも、止まるのは3万5,000円です。
止まらないもの|老齢基礎年金と経過的加算
ここを誤解している人が本当に多いところです。日本年金機構は留意事項にこう書いています。
老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります。
在職老齢年金で止まるのは、老齢厚生年金の報酬比例部分だけです。いわゆる「1階部分」である老齢基礎年金には手がつきません。
| 年金の種類 | 在職老齢年金で止まるか |
|---|---|
| 老齢厚生年金(報酬比例部分) | 止まる可能性がある |
| 老齢基礎年金 | 止まらない(全額支給) |
| 経過的加算額 | 止まらない(全額支給) |
| 加給年金額 | 基本月額には含めないが、全額停止時は加給年金も停止 |
加給年金だけ扱いが独特です。計算に使う「基本月額」からは除かれますが、機構の留意事項には「年金支給月額がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)は全額支給停止となります」とあります。報酬比例部分が全部止まるところまでいくと、加給年金も一緒に落ちます。
「年金が全部止まる」と言われたときは、まず何の話をしているのかを確認してください。基礎年金まで止まる話であれば、それは在職老齢年金の話ではありません。
総報酬月額相当額|賞与は12分の1で効きます
計算に使う報酬は、月給そのものではありません。定義はこうです。
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
ポイントは2つあります。
1. 賞与が1年かけて効きます
夏と冬の賞与は、支給月だけに効くのではありません。直近1年ぶんを12で割った額が、毎月上乗せされます。年間120万円の賞与があれば、毎月10万円ぶん総報酬月額相当額が上がる計算です。
賞与が出た翌月だけ止まると思っていると、ずれます。
2. 使うのは「標準報酬月額」です
実際の給与額そのものではなく、等級にあてはめた標準報酬月額を使います。定時決定(算定基礎届)で毎年9月に見直され、大きく変わったときは随時改定が入ります。
日本年金機構は支給停止額の変更時期について「総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月」と書いています。標準報酬月額が動いた月から、止まる額も動きます。
なお70歳以上の人については、標準報酬月額・標準賞与額はそれぞれ「標準報酬月額に相当する額」「標準賞与額に相当する額」に読み替えると機構は書いています。
副業が業務委託なら、この計算には入りません
ここが副業をする人にとっていちばん大きい話です。
もう一度、機構の原文に戻ります。「老齢厚生年金を受給されている方が厚生年金保険の被保険者であるときに、受給されている老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額に応じて年金額が支給停止となる場合があります」。
そして計算に使う総報酬月額相当額は、標準報酬月額と標準賞与額から作られます。標準報酬月額は、厚生年金保険の被保険者について決まるものです。
つまり、こういう整理になります。
| 副業の形 | 厚生年金の被保険者か | 在職老齢年金の計算に入るか |
|---|---|---|
| 業務委託・請負(個人事業) | ならない | 入らない |
| フリーランスとしての受注 | ならない | 入らない |
| 原稿料・講演料などの雑所得 | ならない | 入らない |
| 不動産の賃貸収入 | ならない | 入らない |
| 会社に雇われるパート(加入要件を満たす) | なる | 入る |
| 会社に雇われるパート(加入要件を満たさない) | ならない | 入らない |
年金が止まるかどうかを決めているのは、収入の多さではありません。厚生年金に入る働き方かどうかです。
この非対称は、知っておく価値があります。本業を厚生年金加入の会社員として続けながら、さらに雇われて働くと総報酬月額相当額が積み上がります。一方、同じ金額を業務委託で受け取っても、総報酬月額相当額は1円も動きません。
ただし念のため書いておきます。形式を業務委託にすれば済む、という話ではありません。実態が雇用であれば、契約書の表題にかかわらず雇用として扱われます。業務委託と雇用の線引きは副業の社会保険で扱っています。また、業務委託で受け取った収入は所得税・住民税の対象になります。年金が止まらないことと、税金がかからないことは別の話です。
なお前述のとおり、「副業」という語でこの整理を名指しした公式資料は確認できませんでした。本記事は、在職老齢年金が被保険者であるときの調整であるという原文と、総報酬月額相当額の定義から説明しています。個別の判断は年金事務所に確認してください。
副業がパート・アルバイトの場合
雇われて働く場合は、厚生年金に加入するかどうかで結論が変わります。
加入の入口は副業の社会保険で詳しく扱っているので、ここでは在職老齢年金に効く部分だけ書きます。
効くのは、厚生年金に加入したときだけ
- 加入する → 副業先でも標準報酬月額が決まる → 総報酬月額相当額に乗る → 支給停止に効く
- 加入しない → 標準報酬月額が決まらない → 総報酬月額相当額に乗らない → 支給停止に効かない
短時間で働く人の加入要件は、労働時間や事業所の規模などで決まります。「週20時間未満で働く」という選択は、在職老齢年金の観点でも意味を持ちます。
ただし、ここで注意が要ります。加入しない働き方を選ぶと、将来の年金は増えません。厚生年金に加入して働けば、その期間は年金額に反映されます(後述の在職定時改定)。目先の支給停止を避けることと、生涯で受け取る額を増やすことは、方向が逆になることがあります。
どちらが得かは、年齢・基本月額・働く期間で変わります。本記事では一般論としての損得は書きません。ねんきんネットや年金事務所で、自分の数字を当ててください。
【2026年10月】賃金要件が撤廃されます
来月、加入のルールがひとつ消えます。これは在職老齢年金にも間接的に効きます。
厚生労働省年金局年金課の政令案概要には、こう書かれています。
短時間労働者の厚生年金の適用要件の一つである、厚生年金保険法第12条第5号ロに規定する賃金要件(月額8.8万円)については、(中略)令和8年4月1日以降は全都道府県で最低賃金が1,016円以上となり、労働時間要件に該当しなければ自動的に賃金要件にも該当しなくなったこと等を踏まえ、令和8年10月1日を、賃金要件の撤廃に係る規定の施行日とするための施行期日を定める政令を別途制定することとしている。
(厚生労働省年金局年金課「厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案について(概要)」2026年9月14日確認)
理屈が面白いところです。全都道府県で最低賃金が1,016円以上になったので、週20時間働けば自動的に月8.8万円に届く。だから賃金要件はもう要らない。そういう説明になっています。
1,016円×20時間×52週÷12か月で、月およそ8万8,000円。最低賃金の下限でも、週20時間働けば賃金要件のラインにほぼ一致します。
つまり2026年10月以降、短時間労働者の加入判定は労働時間を中心に見る形に寄っていきます。「月8.8万円未満に抑えて加入を避ける」という調整は、成立しにくくなります。
なお、企業規模要件の段階的な撤廃については副業の社会保険で扱っています。
ただし全員が加入になるわけではありません
賃金要件が消える、と聞くと「月5万円のパートでも加入するのか」と思いますが、そうはなりません。同じ政令案概要に、例外が書かれています。
同じ政令案概要は、「特定減額特例対象者」を注記で次のように定めています。
適用事業所に使用される、70歳未満の短時間労働者のうち、最低賃金法(昭和34年法律第137号)第7条の規定の適用を受ける労働者であって、報酬が8.8万円未満である者をいい、特定減額特例対象者は、当分の間、厚生年金の被保険者とならないこととしている。
読み解きます。最低賃金法第7条の特例の適用を受ける労働者で、かつ報酬が月8.8万円未満の人は、当分の間、厚生年金の被保険者になりません。
なお、最低賃金法第7条そのものは最低賃金の減額の特例を定めた条文ですが、条文の内容は政令案概要には記載がないため、ここでは条番号の確認までにとどめます。
「最低賃金が上がったから自動的に8.8万円を超える」という前提が成り立たない働き手のために例外が置かれた、という整理だと読めます(この趣旨説明は資料には書かれていません)。
この政令案の施行期日は令和8(2026)年10月1日、公布日は令和8年7月上旬(予定)と資料に書かれています。なお本記事が出典としているのはパブリックコメント段階の政令案概要であり、施行期日を定める政令は「別途制定することとしている」段階の資料です。確定内容は公布された政令でご確認ください。
大きな制度変更には、こうした例外が必ずついてきます。「10月から全員加入」と書いている解説を見かけたら、いったん原典を確認したほうが安全です。
両方で加入したら、報酬は合算されます
本業でも副業でも厚生年金に加入する場合、標準報酬月額は別々には決まりません。日本年金機構の説明はこうです。
それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します。
(日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」更新日2025年12月25日、2026年9月14日確認)
保険料についても書かれています。「保険料は、決定した標準報酬月額による保険料額をそれぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分し決定します」。
合算した額で1つの標準報酬月額が決まり、それを各社で按分する。これが二以上事業所勤務の基本形です。
在職老齢年金にとっては、これが直撃します。
例
本業の報酬月額 40万円、副業先の報酬月額 12万円
→ 合算52万円をもとに標準報酬月額(この例では53万円の等級)が決まる
→ 基本月額(老齢厚生年金)が14万円なら、合計67万円
→ 67万円-65万円=2万円、その半額の1万円が支給停止
副業を1つ足したことで、支給停止の側に入ることがあります。副業先の12万円は、そのまま総報酬月額相当額に乗ってきます。
逆に言えば、同じ12万円を業務委託で受け取っていれば、合計は54万円のままで支給停止は発生しません。前掲のとおり、効くのは「厚生年金に加入する働き方かどうか」です。
届出は会社ではなく、本人が10日以内に出します
ここは手続きの話ですが、落とし穴なので独立させます。
日本年金機構は、こう書いています。
事実発生から10日以内に被保険者が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出する必要があります。
主語は「被保険者」、つまり本人です。会社がやってくれる手続きではありません。社会保険の届出はたいてい会社が出すので、ここだけ本人というのは意外に知られていません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誰が | 被保険者本人 |
| いつまで | 事実発生から10日以内 |
| どこへ | 選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所 |
| 方法 | 電子申請、郵送、窓口持参 |
前提もあります。機構は「この届書の提出にあたっては、適用事業所の被保険者となるための『健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届』の提出が前提となります」と書いています。副業先の会社が資格取得届を出していることを、先に確認してください。
届出をすると、機構は「決定した標準報酬月額および保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知します」と書いています。つまり、副業先で厚生年金に加入すると、本業の会社にも通知が届きます。会社に知られたくないという理由で副業の形を選んでいる人は、この点を織り込む必要があります。関連する住民税の話は副業が会社にバレない方法にまとめています。
機構はこの件について「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」というリーフレットも公開しています。
70歳を過ぎても止まります|保険料は払いません
70歳になれば在職老齢年金は終わり、と思われがちですが、違います。機構の記述はこうです。
平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職による支給停止が行われます。
被保険者ではないのに、支給停止だけは続きます。
ただし、負担のほうは消えます。留意事項に「70歳以上の方については、厚生年金保険の被保険者ではありませんので、保険料負担はありません」とあります。
| 年齢 | 厚生年金の被保険者 | 保険料負担 | 在職による支給停止 |
|---|---|---|---|
| 65歳〜69歳 | なる | あり | あり |
| 70歳以上(適用事業所勤務) | ならない | なし | あり |
そしてもうひとつ。「70歳以上の期間は、厚生年金に加入していないため、年金額の再計算には反映しません」。70歳以降は、働いても年金額は増えません。
保険料は払わない、年金も増えない、でも止まる。70歳以降に働き方を設計するときは、この3点セットで考えることになります。
なお70歳以上で複数の事業所に勤めるときの手続きは、別のページが用意されています。
年金が増えるとき|在職定時改定と退職改定
支給停止の話ばかりだと片手落ちなので、増えるほうも書きます。
在職定時改定
日本年金機構の説明です。「厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳以上70歳未満の方が、基準日の9月1日において被保険者であるときは、翌月の10月分の年金額から見直されます。これを『在職定時改定』といいます」。
対象は「年金額に反映されていない前年9月から当年8月までの厚生年金に加入していた期間」です。毎年、働いたぶんが年金に乗ります。
機構は、9月1日をまたぐ資格喪失・取得の扱いにも触れています。「9月1日前に被保険者の資格を喪失して、そこから9月1日をまたぎ、1月が経過する前に被保険者の資格を取得したときは、基準日の9月1日において被保険者ではありませんが、在職定時改定として年金額の再計算が行われます(例:8月25日資格喪失、9月3日資格取得)」。
注意書きもあります。「年金額が再計算された結果、支給停止額が変更となる場合があります」。年金額が増えれば基本月額も増えるので、合計が65万円を超えやすくなります。
退職改定
「厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている70歳未満の方が、退職して1カ月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されます」。これが退職改定です。
このとき「年金額の一部または全部支給停止がなくなり、全額支給されます」。
ただし例外があります。「退職して1カ月以内に再就職し、厚生年金に加入したとき(転職など)は、年金額の再計算は行われません」。間を空けずに転職すると、退職改定は起きません。
また、再計算で厚生年金加入期間が20年を超えると、加給年金や配偶者の振替加算が発生する場合があり、その際は別途手続きが必要だと機構は書いています。
全額支給停止になると、何が起きるか
基準を大きく超えると、計算結果がマイナスになることがあります。機構の留意事項です。
年金支給月額がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)は全額支給停止となります。
このとき止まるのは、あくまで老齢厚生年金と加給年金です。老齢基礎年金と経過的加算は前述のとおり全額出ます。
全額支給停止まで行く条件を、計算しておきます。基本月額をB、総報酬月額相当額をTとすると、支給停止額は(B+T-65万円)÷2。これがB以上になるのは、Tが「65万円+B」以上になったときです。
つまり全額停止のラインは、基本月額の大きさによって動きます。基本月額10万円の人なら総報酬月額相当額75万円、15万円の人なら80万円です。日本年金機構の「在職老齢年金早見表」も、基本月額10万円の人について「年金が全額支給となる総報酬月額相当額は、41万円から55万円へ引き上げられる」と書いており、全額停止に達するのは65万円ではありません。
「総報酬月額相当額が65万円を超えたら年金がゼロになる」という理解は誤りです。65万円を超えた時点で始まるのは減額であって、全額停止ではありません。
厚生年金基金に加入していた期間がある人は、計算がもう一段複雑になります。機構は「代行部分を国が支払うべき年金額とみなして、基本月額を算出します」と書いています。基金からの支給があっても、その部分は国が払っているものとして計算に入る、という意味です。
年金は非課税ではありません|雑所得です
在職老齢年金の計算を終えたあと、もうひとつ関門があります。税金です。
国税庁のタックスアンサーはこう書いています。「公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します」。そして雑所得になる公的年金等として、「国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金」を挙げています(国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」令和8年4月1日現在法令等、2026年9月14日確認)。
老齢年金は雑所得です。遺族年金や障害年金とは扱いが違います。
源泉徴収についても書かれています。「公的年金等の支払を受けるときは、原則として収入金額からその年金に応じて定められている一定の控除額を差し引いた額に5.105パーセントを乗じた金額が源泉徴収されます」。
年金からも源泉徴収されている、ということです。副業の報酬から引かれる源泉徴収については副業の源泉徴収で扱っています。
さらに将来の話も注記されています。「令和9年1月1日以後に生ずる所得については、復興特別所得税の税率が1.1パーセントに引き下げられ、防衛特別所得税(源泉徴収すべき所得税の額の1パーセント相当額)が併せて源泉徴収されます」。2027年1月から、引かれ方の内訳が変わります。
公的年金等控除の計算例
国税庁が示している例を引きます。65歳以上で、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が500万円、公的年金等の収入金額の合計額が350万円の人。
3,500,000円×75%-275,000円=2,350,000円(公的年金等に係る雑所得の金額)
350万円の年金収入が、235万円の雑所得になります。ここに副業の所得が乗って、税額が決まります。
確定申告不要制度|400万円以下かつ20万円以下
年金をもらっている人には、確定申告の特例があります。国税庁の記述です。
平成23年分以後は、その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。
条件は2つとも満たす必要があります。年金400万円以下「かつ」他の所得20万円以下。副業の所得が20万円を超えたら、この特例は使えません。
注意書きも3つ付いています。
- この場合でも、医療費控除や社会保険料控除などの適用による還付を受けるための確定申告はできる
- 公的年金等以外の所得金額が20万円以下で確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合がある
- 平成27年分以後、源泉徴収の対象とされない外国の年金を受給している方は、この制度の適用はできない
2つ目が実務では効きます。所得税の申告が要らなくても、住民税の申告は別です。20万円ルールの詳細は副業の確定申告のやり方にまとめています。
なお、副業が事業として続くなら経費の扱いも関わってきます。10万円以上のものをどう処理するかは副業の経費で扱っています。
働き方別|支給停止に効く・効かない
ここまでを1枚にまとめます。65歳以上で老齢厚生年金を受け取りながら副業をする場合の整理です。
| 副業の形 | 厚生年金に加入するか | 在職老齢年金への影響 | 所得税・住民税 |
|---|---|---|---|
| 業務委託・請負 | しない | なし | かかる |
| フリーランス受注 | しない | なし | かかる |
| 原稿料・講演料 | しない | なし | かかる |
| 不動産賃貸 | しない | なし | かかる |
| アフィリエイト・広告収入 | しない | なし | かかる |
| パート(加入要件を満たす) | する | あり | かかる |
| パート(週20時間未満など) | しない | なし | かかる |
| 自分の会社から役員報酬 | する(法人の適用事業所) | あり | かかる |
いちばん右の列を見てください。どの働き方でも税金はかかります。違うのは真ん中の列だけです。
そしてもうひとつ、表に書けない変数があります。将来の年金額です。厚生年金に加入する働き方を選べば、在職定時改定で毎年10月に年金が増えていきます。加入しない働き方を選べば、増えません。
「いま止まる額」と「これから増える額」。この2つを並べて考える必要があります。
よくある勘違い5つ
公式資料の突き合わせで、繰り返し出てくる誤解を並べます。
1. 基準は62万円だ
2026年度は65万円です。62万円は法律成立時(2025年6月)の、2024年度水準での金額です。
2. 基準を超えたら年金が全部止まる
止まるのは超過分の半額です。1万円超えたら5,000円。
3. 基礎年金も止まる
止まりません。機構は「老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります」と書いています。
4. 副業で稼いだら年金が止まる
厚生年金に加入する働き方でなければ、総報酬月額相当額は動きません。業務委託の収入は計算に入りません。
5. 70歳になれば止まらない
止まります。被保険者ではなくなり保険料も払いませんが、在職による支給停止は続きます。
この5つのうち2つ以上に当てはまっていたら、いま読んでいる解説記事の日付を確認してください。
今日やること|3ステップ
ステップ1|自分の基本月額を確認する
年金証書または「ねんきんネット」で、老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額を確認します。老齢基礎年金と合算した額ではありません。ここを間違えると、全部ずれます。
ステップ2|総報酬月額相当額を出す
標準報酬月額+(直近1年の標準賞与額の合計÷12)。標準報酬月額は、会社から渡されている「標準報酬決定通知書」や給与明細の社会保険料から逆算できます。
ステップ3|合計して65万円と比べる
合計が65万円以下なら、支給停止はありません。超えるなら、超過分の半額が止まります。
そのうえで、副業を足すかどうかを考えます。足す副業が業務委託なら、ステップ2の数字は動きません。雇われて厚生年金に加入するなら、報酬が合算されて標準報酬月額が上がります。
判断がつかないときは、年金事務所で試算してもらうのがいちばん早いです。基本月額と見込みの報酬額を持っていけば、その場で計算してもらえます。
よくある質問
Q1. 2026年度の支給停止の基準額はいくらですか
月65万円です。日本年金機構は「令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)に基づき、令和8年4月から、年金が減額になる基準額(賃金と老齢厚生年金の合計)が月51万円から65万円に引き上げられました」と書いています。なお同機構は「令和8年度の基準額で、毎年度、賃金の変動に応じて改定されます」とも注記しています。
Q2. なぜ「62万円」と書いてある記事が多いのですか
62万円は法律が成立した2025年6月時点の額だからです。厚生労働省は「改正後の支給停止基準額(62万円)は、法律成立時(2025年6月)の額です。2026年4月からは65万円になります」と明記しています。同省の説明では、62万円は2024年度の賃金水準で計算した数字です。
Q3. 基準額を超えると、年金は全額止まりますか
いいえ。計算式は「基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2」です。超えた分の半額が止まります。ただし、この計算結果がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)が全額支給停止になると日本年金機構は書いています。
Q4. 老齢基礎年金も止まりますか
止まりません。日本年金機構の留意事項に「老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります」と記載されています。在職老齢年金で調整されるのは、老齢厚生年金の報酬比例部分です。
Q5. 副業で業務委託の仕事をすると、年金は減りますか
在職老齢年金の計算には入りません。この制度は「厚生年金保険の被保険者であるとき」に調整されるもので、計算に使う総報酬月額相当額は標準報酬月額と標準賞与額から作られるためです。ただし、業務委託の収入にも所得税と住民税はかかります。なお、副業という語でこの整理を名指しした公式資料は2026年9月14日時点で確認できませんでした。個別の判断は年金事務所にご確認ください。
Q6. 本業と副業の両方で厚生年金に加入したら、どうなりますか
報酬が合算されます。日本年金機構は「それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します」と書いています。保険料は各事業所の報酬月額に基づいて按分されます。合算された標準報酬月額が総報酬月額相当額に反映されるため、支給停止の額に影響します。
Q7. 二以上事業所勤務届は会社が出してくれますか
本人が出します。日本年金機構は「事実発生から10日以内に被保険者が『健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届』を日本年金機構へ提出する必要があります」と書いています。提出先は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所です。電子申請、郵送、窓口持参のいずれも可能です。
Q8. 賞与は在職老齢年金にどう効きますか
支給月だけでなく、1年かけて効きます。総報酬月額相当額の定義は「(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12」です。直近1年間の標準賞与額の合計を12で割った額が、毎月上乗せされます。
Q9. 70歳を過ぎたら支給停止はなくなりますか
なくなりません。日本年金機構は「平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職による支給停止が行われます」と書いています。ただし保険料負担はなく、70歳以上の期間は年金額の再計算にも反映されません。
Q10. 2026年10月から、パートは全員が厚生年金に入りますか
全員ではありません。賃金要件(月8.8万円)の撤廃日を2026年10月1日とする方針は厚生労働省年金局の政令案概要(公布予定日:令和8年7月上旬)で確認できますが、同じ資料に「特定減額特例対象者」の規定があります。最低賃金法第7条の規定の適用を受ける労働者で報酬が8.8万円未満の人は、当分の間、厚生年金の被保険者とならないとされています。
Q11. 年金をもらっていると、確定申告は必要ですか
公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告の必要はありません(国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」)。ただし国税庁は「公的年金等以外の所得金額が20万円以下で確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります」とも注記しています。
Q12. 働くと年金は増えますか
65歳以上70歳未満で厚生年金に加入していれば増えます。毎年9月1日を基準日として、前年9月から当年8月までの加入期間が年金額に反映され、10月分から見直されます(在職定時改定)。ただし日本年金機構は「年金額が再計算された結果、支給停止額が変更となる場合があります」とも書いています。
まとめ
2026年の在職老齢年金について、押さえる点は5つです。
- 基準額は月65万円。62万円は法律成立時(2025年6月)の、2024年度水準の数字
- 止まるのは超過分の半額。全額ではない
- 老齢基礎年金と経過的加算は止まらない
- 厚生年金に加入しない副業は、計算に入らない
- 70歳以降も支給停止は続く。保険料は払わず、年金も増えない
今年この分野で起きたことは、数字がひとつ動いたという話ではありません。法律を作ったときの数字と、施行されたときの数字が違った。それだけで、検索して出てくる解説の一部は3万円ずれた数字を示すことになります。
制度が動く年は、いつもこうなります。国会を通った瞬間に大量の解説記事が出て、そのあと施行日に数字が確定する。更新されるのは一次資料だけです。
この記事も、来年度の基準額が発表されれば古くなります。本文に機構と厚労省のURLを置いてあるのは、そのためです。
参照した一次資料
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」更新日2026年4月1日(日本年金機構、2026年9月14日確認)
- 日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」更新日2025年12月25日(日本年金機構、2026年9月14日確認)
- 日本年金機構「在職老齢年金早見表」(PDF・日本年金機構、2026年9月14日確認)
- 厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」(厚生労働省、2026年9月14日確認)
- 厚生労働省「働きながら年金を受給する皆さま 在職老齢年金制度が改正されます」(2026年1月時点版)(PDF・厚生労働省、2026年9月14日確認)
- 厚生労働省年金局年金課「厚生年金保険法施行令等の一部を改正する政令案について(概要)」(PDF・e-Gov パブリックコメント、2026年9月14日確認)
- 国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」令和8年4月1日現在法令等(国税庁、2026年9月14日確認)
- 厚生労働省「年金制度の仕組み 第10 在職老齢年金・在職定時改定」(PDF・厚生労働省、2026年9月14日確認)
本記事は制度の解説であり、個別の事案についての助言ではありません。支給停止額の確定や加入要件の判定は、年金事務所および各保険者の判断によります。

