公務員は副業禁止。そう覚えている人がほとんどだと思います。実際、私も取材で公務員の方に聞くと、最初に返ってくるのは「うちは無理です」でした。
結論から書きます。公務員の副業は「禁止」ではなく「許可制・承認制」です。そして2026年4月、国家公務員のルールが動きました。人事院は自営兼業の承認基準を新しくつくり、「職員の有する知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」を承認できる対象に加えています。人事院が示した事業イメージには、はっきりこう書かれています。「ハンドメイド品の販売」「スポーツや芸術の教室」。
もうひとつ。不動産賃貸で承認が必要になる家賃収入のラインが、年500万円から年1,000万円に上がりました。500万円のまま書かれた解説が、いまもそのまま残っています。
この記事でわかること
- 公務員の副業は禁止ではなく、国家公務員は承認制・地方公務員は許可制であること
- 2026年4月から、ハンドメイド販売や教室の運営が国家公務員の承認対象になったこと
- その承認には開業届と事業計画書が要り、承認期間は2年までであること
- 不動産賃貸で承認が要るラインが、年500万円から年1,000万円に上がったこと
- 太陽光発電も、10キロワット以上から50キロワット以上に変わったこと
- 国家公務員は、営利企業の従業員として働く兼業は原則として認められていないこと
- 地方公務員は建て付けが違い、総務省が「営利企業の従業員との兼業も可能」と明記したこと
- 報酬を得て働く兼業の時間目安が、週8時間・月30時間・1日3時間であること
- 許可基準を決めている自治体が64%、公表しているのが56%にとどまること
- 実際に許可されている自営兼業に、書道教室やヨガインストラクターがあること
公務員の副業の話は、いつも「できる・できない」の二択で語られます。ところが実際の条文を読むと、争点はそこにありません。どの条文に当たる副業なのか、そして誰の許可を取るのか。ここを外すと、同じ仕事でも手続きが変わります。
この記事の調べ方(編集方針)
- 本記事は、副業ジャンルの記事を84本以上制作している当サイト編集部が作成しました。事実部分の出典は人事院・総務省・国税庁の公式資料に限定し、URLと確認日を本文中に明記しています。調査日は2026年9月13日です。
- 本記事は弁護士・社会保険労務士の監修を受けていません。そのぶん、解釈が分かれる論点では断定を避け、公式資料の原文表現をそのまま引用する方針を取っています。
- 引用した人事院規則14-8の運用通知は、2026年9月13日に人事院ウェブサイトで確認した版です。同ページには「最終改正:令和7年12月19日職審―451」と表示されています。
- 地方公務員の許可基準は自治体ごとに違います。本記事で挙げる自治体の事例は、総務省が公表資料に掲載しているものだけを紹介しています。最終的な可否はご自身の任命権者に確認してください。
- 体験談は載せていません。公式資料に記載を確認できなかった論点は「確認できませんでした」と明記しています。
本記事の調査で埋まらなかった論点
今回当たったのは、人事院「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」、人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」、総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」と別添の分科会報告書、総務省「地方公務員の兼業について(第4回分科会 資料3)」、国税庁タックスアンサーNo.2090です。そのうえで、次の点は確認できませんでした。
- 新しい承認基準で、収入の上限額がいくらかを示した人事院の記述。申請書に「収入の予定年額」を書かせる規定は確認できましたが、金額の上限そのものを示した公表資料は見つかりませんでした。
- アフィリエイトやブログ、動画投稿の広告収入が、国家公務員のどの条文に当たるかを正面から整理した公表資料。人事院・内閣人事局のいずれにも、この形態を名指しした記述は確認できませんでした。本記事では当てはめを断定していません。
- 新制度の運用開始後に、実際に何件が承認されたかの統計。承認実績の報告は毎年1月末までに人事院へ行う規定ですが、2026年9月13日時点で新基準ぶんの公表数値は確認できませんでした。
副業を始めたあとの税金の手続きは副業の確定申告のやり方に、開業届そのものの書き方は副業の開業届の出し方にまとめています。この記事は、公務員が副業を始める前の「許可と承認」だけに絞ります。
目次
- 結論:禁止ではなく、許可・承認を受ければできます
- 国家公務員と地方公務員で、根拠の条文が違います
- 国家公務員|103条と104条は、別々の手続きです
- 【2026年4月】ハンドメイドと教室が、承認対象に入りました
- 新しい承認基準は5つ|開業届と事業計画書が要ります
- 承認は2年まで|異動したら1か月以内に取り直します
- 不動産の線も動きました|500万円から1,000万円へ
- それでも自営に当たる条件が、7つ残っています
- 太陽光は10キロワットから50キロワットになりました
- 変わらなかったこと|営利企業の従業員としての兼業
- 兼業できる時間の目安|週8時間・月30時間・1日3時間
- 地方公務員|38条の許可は、もともと緩い建て付けです
- 【2025年6月】総務省は「従業員との兼業も可能」と書きました
- 許可基準を決めている自治体は64%しかありません
- 報酬はいくらまで?「社会通念上相当」としか書いてありません
- 実際に許可されている副業|書道教室・ヨガ・地域活動
- 許可を取らずに始めた場合、どうなるか
- 副業タイプ別|手続きが要る・要らないの当てはめ
- 税金の手続きは、民間の会社員と同じです
- 今日やること|申請までの4ステップ
- よくある質問
- まとめ|線が動いた年に、線を確認しておく
- 結論:禁止なのではなく、許可・承認を受ければできます
- 国家公務員と地方公務員で、根拠の条文が違います
- 国家公務員|103条と104条は、別々の手続きです
- 【2026年4月】ハンドメイドと教室が、承認対象に入りました
- 新しい承認基準は5つ|開業届と事業計画書が要ります
- 承認は2年まで|異動したら1か月以内に取り直します
- 不動産の線も動きました|500万円から1,000万円へ
- それでも自営に当たる条件が、7つ残っています
- 太陽光は10キロワットから50キロワットになりました
- 変わらなかったこと|営利企業の従業員としての兼業
- 兼業できる時間の目安|週8時間・月30時間・1日3時間
- 地方公務員|38条の許可は、もともと緩い建て付けです
- 【2025年6月】総務省は「従業員との兼業も可能」と書きました
- 許可基準を決めている自治体は64%しかありません
- 報酬はいくらまで?「社会通念上相当」としか書いてありません
- 実際に許可されている副業|書道教室・ヨガ・地域活動
- 許可を取らずに始めた場合、どうなるか
- 副業タイプ別|手続きが要る・要らないの当てはめ
- 税金の手続きは、民間の会社員と同じです
- 今日やること|申請までの4ステップ
- よくある質問
- まとめ|線が動いた年に、線を確認しておく
結論:禁止なのではなく、許可・承認を受ければできます
公務員の副業を止めているのは「禁止規定」ではありません。許可や承認という手続きを挟む規定です。
国家公務員なら国家公務員法第103条と第104条。地方公務員なら地方公務員法第38条。どちらも「してはならない」と書いたうえで、許可や承認があれば適用しない、という構造になっています。
総務省の分科会報告書は、地方公務員法第38条についてこう整理しています。「全体の奉仕者たる職員の本質に反することがなく、しかも職務専念の義務と矛盾しない場合においては、職員の職務外の行為として営利企業等に従事することを一切禁止する必要はなく、任命権者の許可があれば、この禁止を解除することができることとされている」(総務省「地方公務員の兼業について 報告書」令和7年6月、2026年9月13日確認)。
禁止を解除できる、という書き方です。ここが「絶対禁止」との違いになります。
| 区分 | 根拠条文 | 誰の判断か |
|---|---|---|
| 国家公務員(自営・役員等) | 国家公務員法第103条 | 所轄庁の長の申出により人事院の承認(権限は委任あり) |
| 国家公務員(報酬を得て事業・事務に従事) | 国家公務員法第104条 | 内閣総理大臣および所轄庁の長の許可 |
| 地方公務員(3類型すべて) | 地方公務員法第38条第1項 | 任命権者の許可 |
表のとおり、国家公務員は入口が2つに分かれています。この分岐を知らないまま「人事課に聞いたら無理と言われた」で終わっている人が、かなりいるはずです。
まずは自分の副業がどの条文に当たるかを確認してください。
国家公務員と地方公務員で、根拠の条文が違います
同じ「公務員」でも、法律の作りが違います。そしてこの違いは、うっかりではなく意図的なものでした。
総務省の報告書は、1950年(昭和25年)11月24日の衆議院地方行政委員会での地方公務員法案の説明を引用しています。「営利企業等の従事制限につきましては、地方公共団体の実情を考慮いたしまして、国家公務員法の場合に比べまして、やや制限を緩和し、任命権者の許可を受けさえすれば、営利企業等に従事することができるものといたしたのであります」。
制度ができた時点で、地方公務員のほうが緩く設計されていた。これは実務上、けっこう大きな意味を持ちます。
同じ報告書には、制定時の解説からの引用もあります。「地方公共団体の場合、特に規模の比較的狭少な市町村においては、公務員たるべく適当な有識者有能者等であって、何等かの私企業に関係している者が極めて多いという実情にあり」。町村では、そもそも兼業していない人を集めるほうが難しかった、ということです。
ところが現実には、逆転が起きていました。報告書は、許可基準を設定している自治体のうち約9割が国家公務員の許可基準に準拠していると書いています。緩く作られたはずの地方公務員が、厳しいほうの国基準を写して運用していた。長野県からのヒアリングでも「法的に不安定な面があり、どこまでが認められるのか現場でも不安視する意見がある」という声が紹介されています。
この「写し」の状態を解くために出たのが、2025年6月の総務省通知でした。後半で詳しく扱います。
国家公務員|103条と104条は、別々の手続きです
国家公務員の兼業は、2本立てです。混同すると申請先を間違えます。
第103条|自ら営利企業を営む、役員等を兼ねる
条文はこうです。「職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない」。そして第2項で「人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない」と続きます。
第104条|報酬を得て、他の事業または事務に従事する
総務省の報告書は第104条をこう説明しています。「職員が報酬を得て、営利企業の役員等との兼業以外の兼業を行う場合には、内閣総理大臣及び所轄庁の長の許可を要する」。
自分で商売を始めるなら103条、どこかから報酬をもらって働くなら104条。ざっくりこの分け方になります。ハンドメイド品を自分の名前で売るのは前者、講演料をもらうのは後者です。
ここから先、この記事で「承認」と書いているのは103条の話、「許可」と書いているのは104条または地方公務員法38条の話です。人事院の資料も、この2語を使い分けています。
【2026年4月】ハンドメイドと教室が、承認対象に入りました
ここが今年いちばん大きく動いたところです。
人事院は2025年12月に「自営兼業制度の見直しについて(概要)」を公表し、令和8年4月、つまり2026年4月から新しい承認基準を施行すると明記しました。資料には「令和8年4月より、『職員の有する知識・技能をいかした事業』及び『社会貢献に資する事業』について、承認基準を満たせば承認可能とする」とあります(人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」令和7年12月、2026年9月13日確認)。
そして同じ資料が、事業イメージを具体的に挙げています。
| 新しく承認対象になった事業 | 人事院が挙げた事業イメージ |
|---|---|
| 職員の有する知識・技能をいかした事業 | ハンドメイド品の販売/スポーツや芸術の教室 |
| 社会貢献に資する事業 | 地域振興イベントの主催/高齢者対象の買物代行 |
ハンドメイド品の販売。公務員の副業を語る記事で、この4文字を国の資料から引ける日が来るとは思っていませんでした。
改正後の運用通知本文では、この類型はもう少し広く書かれています。「職員の有する知識又は技能を活用した著作物の創作及び販売、物品の製造及び販売、技芸の教授等」。著作物の創作と販売まで入っています。
見直し前は、不動産賃貸と太陽光発電以外の自営で承認を受ける道は、事実上ひとつしかありませんでした。2025年3月の総務省分科会に提出された当時の運用通知の抜粋には、承認基準として「当該事業が相続、遺贈等により家業を継承したものであること」と書かれています。家業を継いだ場合だけ。自分でゼロから始める副業には、入口がなかったわけです。
そこに新しい入口が2つ増えた。これが2026年4月の変化です。
なお、家業継承のルートが消えたわけではありません。改正後の運用通知にも、不動産賃貸・太陽光販売以外の事業について「当該事業が相続、遺贈等により家業を継承したものであること」を含む基準が、別の号として残っています。
ハンドメイドの売り先そのものを知りたい方は、minne副業の始め方もあわせてどうぞ。
新しい承認基準は5つ|開業届と事業計画書が要ります
では、何を満たせば承認されるのか。運用通知の第1項関係5の三号に、5つ並んでいます。以下は条番号の表記だけを整えた要約です。
- 当該事業が、所得税法第229条に規定する届出書(開業届)を提出して行うものであること
- 当該事業が、その目的及び業務内容、営業日及び営業時間、収入の予定年額等を含む事業計画書その他事業の詳細を明らかにする書面を作成して行うものであること
- 職員の官職と当該事業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと
- 事業計画書等において週休日にのみ事業を行うこととされていること等により職員の職務の遂行に支障が生じないことが明らかであること
- 上記のほか、公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと
1つめで、多くの人が止まります。開業届が前提になっているからです。
つまり「こっそり小さく試す」という始め方が、この制度では選べません。事業として届け出て、計画書を書いて、そのうえで承認をもらう。順番が逆に見えるかもしれませんが、資料の書き方はそうなっています。
開業届は税務署に出す書類で、国税庁は「個人が新たに事業を開始した場合には、所得税および源泉所得税ならびに消費税に関する各種届出書等の提出が必要となります」と案内しています(国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」令和8年4月1日現在法令等、2026年9月13日確認)。書き方は副業の開業届の出し方にまとめました。
4つめの「週休日にのみ事業を行う」も効いてきます。例示ではありますが、平日の夜に稼働する前提の計画書だと、説明の手間が増えるはずです。
「特別な利害関係」の中身は定義されています
3つめの利害関係は、抽象的に見えて、運用通知に定義があります。「補助金等の割当、交付等を行う場合、物件の使用、権利の設定等について許可、認可、免許等を行う場合、生産方式、規格、経理等に対する検査、監査等を行う場合、国税の査定、徴収を行う場合等監督関係若しくは権限行使の関係又は工事契約、物品購入契約等の契約関係」。
自分の部署が、その業界に対して許認可や検査、補助金、契約の権限を持っていないか。ここを先に確認したほうが早いです。
承認は2年まで|異動したら1か月以内に取り直します
見落とされがちな条件が2つあります。
ひとつめ。運用通知は「職員の有する知識・技能をいかした事業に係る自営又は社会貢献に資する事業に係る自営の承認は、2年を超えない期間について与えるものとする」と定めています。取りきりではなく、2年ごとの更新です。
ふたつめ。異動したら取り直しになります。原文はこうです。「自営の承認を受けた職員が昇任、転任、配置換、併任等により官職に異動を生じた場合(中略)又は承認に係る自営の内容に変更があつた場合には、当該官職の異動又は自営の内容の変更の後1月以内に改めて承認を受けなければならない」。
異動の内示が出たあと、1か月以内。この締め切りは、事業そのものの都合とは無関係にやってきます。カレンダーに入れておくべき日付です。
なお、承認を受けた職員は報告を求められることがあります。「所轄庁の長等は、法第103条第2項の規定による承認を受けた職員に対し、当該承認に係る事業について報告を求めることができる」。
不動産の線も動きました|500万円から1,000万円へ
不動産賃貸の話は、公務員の副業では定番です。そしてここも2026年4月に変わりました。
人事院の見直し概要には、改正前後の比較図が載っています。図の内容を文章にすると、こうなります。
| 項目 | 見直し前 | 見直し後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 部屋数 | 10室以上で承認必要 | 10室以上で承認必要(変更なし) |
| 賃料年額 | 500万円以上で承認必要 | 1,000万円以上で承認必要 |
| 500万〜999万円 | 承認必要 | 承認不要に |
年間の家賃収入が500万円から999万円の帯が、まるごと承認不要側に移りました。人事院の図には、その帯に「R8.4〜 承認不要に」と書き込まれています。
「公務員の不動産投資は年500万円未満まで」と書かれた解説を見かけたら、それは2026年4月より前の基準です。書かれた日付を必ず確認してください。
ただし、ここには但し書きがあります。改正後の運用通知の原文は、こうです。「不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行つている場合には、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額1,000万円以上である場合(建物の賃貸のみを行う場合にあつては、当該建物の床面積の合計が600平方メートル未満である場合を除く。)」。
括弧の中の読み方が難しいので、整理します。建物の賃貸だけをしていて、床面積の合計が600平方メートル未満なら、収入が1,000万円以上でもこの号には当たりません。面積と金額の両方を見る作りです。
それでも自営に当たる条件が、7つ残っています
金額のラインだけを見ていると足をすくわれます。運用通知は、不動産・駐車場の賃貸について、次のいずれかに当たれば自営として扱うと書いています。
| # | 自営に当たる条件(原文の要旨) |
|---|---|
| 1 | 独立家屋の賃貸で、独立家屋の数が5棟以上であること |
| 2 | 独立家屋以外の建物の賃貸で、貸与できる独立的に区画された一の部分の数が10室以上であること |
| 3 | 土地の賃貸で、賃貸契約の件数が10件以上であること |
| 4 | 賃貸物件が劇場、映画館、ゴルフ練習場等の娯楽集会、遊技等のための設備を設けたものであること |
| 5 | 賃貸物件が旅館、ホテル等特定の業務の用に供するものであること |
| 6 | 駐車場が建築物である、機械設備を設けたものである、または駐車台数が10台以上であること |
| 7 | 上記1〜3または6に定める場合と同様の事情にあると認められること |
いわゆる「5棟10室」は、このうち1と2です。この基準は今回動いていません。動いたのは金額のほうだけ、というのが正確な理解になります。
条件4と5は金額と無関係です。民泊向けの物件や、遊技設備のある物件は、規模が小さくても自営として扱われます。そして条件7は、数え方を少し変えれば逃げられる、という抜け道を塞ぐための受け皿です。形式的に9室に抑える、といった小細工は想定されていると考えたほうがいいでしょう。
なお農業については、別の書き方がされています。「農業、牧畜、酪農、果樹栽培、養鶏等 大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される場合」。数値基準ではなく、規模と目的で判断する形です。家庭菜園の延長で少し売る、という話とは切り分けられています。
太陽光は10キロワットから50キロワットになりました
不動産と同じタイミングで、太陽光発電も緩和されています。
見直し前の基準は、2025年3月の総務省分科会資料に残っています。「太陽光電気(中略)の販売 販売に係る太陽光発電設備の定格出力が10キロワット以上である場合」。
改正後の運用通知では、この数字が「50キロワット以上」になりました。人事院の図でも、10キロワット以上49キロワットまでの帯に「R8.4〜 承認不要に」と書かれています。
一般的な住宅の屋根に載る太陽光は、多くが10キロワット未満です。そこから少し規模の大きい設備まで、承認の手続きが要らなくなった形になります。
ここまでの3つの変更を並べると、方向性がはっきりします。
- 承認できる事業の種類を増やした(知識・技能/社会貢献)
- 承認が必要になる規模の線を上げた(不動産・太陽光)
人事院自身、見直しの目的を「職員のモチベーション向上等を通じた公務の活性化、職員が主体的に学びを深める機会の確保を通じた人材確保への貢献を期待」と書いています。採用難が背景にある、ということです。
変わらなかったこと|営利企業の従業員としての兼業
ここは期待しないほうがいい部分です。
総務省の報告書は、国家公務員についてこう書いています。「国家公務員では営利企業の従業員との兼業(有報酬)が原則として認められていない」。根拠は昭和41年2月11日付け総人局第97号「職員の兼業の許可について」の第3の2(5)です。
つまり、国家公務員が週末にコンビニやカフェでアルバイトをする、という形は原則の外側にあります。2026年4月の見直しは自営兼業の話であって、ここには触れていません。
ただし報告書には注記があります。「職務専念義務、職務の公正な執行及び公務の信用の確保の観点から、営利企業と特別な利害関係がなく、かつ職務の遂行に支障がないと認められるときは、兼業が許可された事例も存在する」。ゼロではない、という書き方です。
そして後で見るとおり、地方公務員はここの扱いが違います。国と地方で結論が変わる、数少ない論点のひとつです。
兼業できる時間の目安|週8時間・月30時間・1日3時間
時間の目安は、数字で示されています。
総務省の通知が、国家公務員の基準を引用する形でこう書いています。「国家公務員の場合、『「職員の兼業の許可について」に定める許可基準に関する事項について(通知)(平成31年3月28日付け閣人人第225号)』において、兼業時間数の上限の目途が示されており、週8時間又は1箇月30時間を超えるとき、また、勤務時間が割り振られた日において1日3時間を超えるときは、原則として、昭和41年通知第3の2(2)に該当するものとされている」(総務省 総行公第72号、令和7年6月11日、2026年9月13日確認)。
昭和41年通知の第3の2(2)は「兼業による心身の著しい疲労のため、職務遂行上その能率に悪影響を与えると認められるとき」です。つまり、この時間を超えると原則として許可されない事由に当たる、という組み立てになります。
ここで、適用範囲に注意が必要です。この時間の目安は、昭和41年通知すなわち国家公務員法第104条に基づく兼業許可の話です。第103条の自営兼業の承認については、運用通知に時間数の上限の定めは見当たりません。代わりに置かれているのが、前に見た「事業計画書等において週休日にのみ事業を行うこととされていること等」という条件です。自分で商売をする側と、報酬をもらって働く側で、時間の見られ方が違います。
| 単位 | 目安 |
|---|---|
| 1週間 | 8時間 |
| 1か月 | 30時間 |
| 勤務日1日あたり | 3時間 |
月30時間。ここを起点に副業を設計すると、現実的な線が見えてきます。時給換算の仕事だと、月30時間で稼げる額はおのずと決まります。作業時間が青天井になりにくい仕事を選ぶ理由が、ここにあります。
ただし自営兼業には、この通算の考え方が直接は効きません。総務省通知は「自営兼業の場合は、労働基準法第38条第1項の規定による労働時間の通算が適用されない」と書いています。そのうえで「その場合であっても、職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないかといった観点から、問題が生じないかを確認することが必要」と続きます。労基法の通算はないが、任命権者の確認はある、という整理です。
地方公務員|38条の許可は、もともと緩い建て付けです
ここから地方公務員の話に移ります。
地方公務員法第38条第1項は、3つの類型をまとめて許可の対象にしています。総務省通知の書き方を借りると、こうです。「①営利企業の役員等の地位を兼ねること、②自ら営利企業を営むこと及び③報酬を得ていかなる事業又は事務に従事すること」。
国家公務員のように103条と104条に分かれておらず、窓口は任命権者ひとつです。手続きの面ではシンプルになります。
許可の判断は、3つの基本的原則で行われます。
| 原則 | 中身 |
|---|---|
| 公務能率の確保 | 職務遂行上、能率の低下を来すおそれがないこと |
| 職務の公正の確保 | 相反する利害関係を生じるおそれがなく、その他職務の公正を妨げるおそれがないこと |
| 職員の品位の保持 | 職員および職務の品位を損ねるおそれがないこと |
この3つを満たすかどうか。裏を返せば、ここに引っかからない副業は、許可されうるということです。
数字も出ています。総務省が令和6年度に実施したフォローアップ調査によると、地方公務員の兼業許可件数は、令和5年度の実績で全体41,587件。このうち社会貢献活動に関する許可は13,498件で、前回調査から1,992件増えています。
4万件を超える許可が、すでに出ている。「公務員は副業禁止」という言葉と、この数字は噛み合いません。
【2025年6月】総務省は「従業員との兼業も可能」と書きました
地方公務員側の転換点は、2025年6月11日でした。
総務省自治行政局公務員部長から各都道府県知事・各指定都市市長・各人事委員会委員長あてに、「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」(総行公第72号)が出ています。地方公務員法第59条と地方自治法第245条の4に基づく技術的助言です。
この通知の中身で、いちばん効くのはここです。原文を引きます。
「国家公務員の場合、営利企業の従業員との兼業(有報酬)については(中略)原則、認められていないが、地方公務員においては、地方公共団体の実情及び人的資源の有効活用の点から、一律にこれを禁止するのではなく、基本的原則を満たす場合においては、各任命権者の判断において、営利企業の従業員との兼業を認めることが可能である」。
国家公務員では原則不可のものが、地方公務員では可能と明記された。ここが2025年6月の一番大きな変更点です。
自営兼業についても同様の記載があります。「職員が、任命権者の許可を得て、いわゆる自営兼業を行うことは(中略)職員個人のスキルや地域の実情を踏まえた自営兼業を認めることも可能である」。
通知の別添3には、さらに踏み込んだ例示があります。「今回明確化した営利企業の従業員との兼業(例:民間事業者におけるスポーツインストラクターなど)や、職員個人のスキルや地域の実情を踏まえた自営兼業(例:書道教室の経営など)をはじめとした兼業を行うことが可能」。
注意したいのは、これが技術的助言だということです。通知が出ただけでは、あなたの自治体の基準は変わりません。各自治体が許可基準を作り直して、はじめて現場の運用が動きます。
許可基準を決めている自治体は64%しかありません
自治体の準備状況には、かなりの差があります。総務省のフォローアップ調査結果(令和6年4月1日時点)の数字を並べます。
| 項目 | 団体数 | 割合 | 前回調査比 |
|---|---|---|---|
| 兼業許可基準を設定している | 1,152 | 64% | +25ポイント |
| 許可基準を庁内外に公表している | 1,008 | 56% | +21ポイント |
3分の1以上の自治体には、そもそも明文の許可基準がありません。そして基準を設けている団体のうち、内容が国基準に準拠しているのが982団体、独自基準が170団体。国基準準拠が85%を占めます。
総務省はこの状況に対して、はっきり書いています。「許可基準を設定していない地方公共団体においては、詳細かつ具体的な許可基準を設定し、また、許可基準を設定している地方公共団体においても、地方公務員制度創設時の考え方に立ち返り、地域の実情に即した許可基準となるよう、更なる環境整備を図っていただきたい」。
公表についても理由が書かれています。「許可基準が明確でなく、許可を得ずに兼業を行ったために懲戒処分に至るといった事案を防ぐため、各地方公共団体において許可基準を公表・周知することが重要であること」。
基準が公表されていないせいで処分が起きている。総務省がそう認識しているという事実は、押さえておく価値があります。自分の自治体の基準が見当たらないなら、それは「禁止されている」ではなく「まだ整備されていない」かもしれません。
報酬はいくらまで?「社会通念上相当」としか書いてありません
金額の上限を探している人は多いと思います。答えを先に書くと、国も総務省も、具体的な金額を示していません。
総務省通知の書き方はこうです。「兼業することによって得られる報酬額については、兼業先や兼業する事業又は事務の内容や性質によって、相当と考えられる額は異なるため、例えば、同種の事例における報酬額を参考とするなど、社会通念上相当と認められる程度であるかどうかといった観点や、地方公務員としての地位を利用した不適正な報酬額となっていないかといった観点などから、個別に判断する必要がある」。
そしてこう続きます。「許可基準を設定する際には、一律に具体的な報酬額を定めるのではなく、『社会通念上相当と認められる程度を超えない額』等とすることが考えられる」。
自治体に対して「金額を書くな」と助言しているに近い書き方です。
ただ、実際には金額を書いている自治体もあります。総務省が別添3で紹介している福島県いわき市の許可基準には、こうあります。「報酬が、社会通念上相当と認められる程度(所得額年額20万円を基準)を超えない額であること」。
年額20万円。ひとつの自治体の例にすぎませんが、実務の相場感としては参考になります。
分科会の議論では、逆方向の懸念も出ていました。「兼業した際に得る報酬の程度について、社会通念上高すぎることは問題だが、低すぎることも問題と考える。安価な労働力として買いたたかれるような懸念もある」。安すぎる仕事を受けるのも、それはそれで論点になるということです。
実際に許可されている副業|書道教室・ヨガ・地域活動
抽象論が続いたので、実例に降ろします。総務省が公表資料に載せているものだけを挙げます。
自営兼業として許可されている例
報告書にはこうあります。「総務省の調査によれば、自営兼業に該当する事例として、書道教室の運営やヨガインストラクターとしての活動など、職員個人の趣味、特技等を活かした兼業について、許可されている事例も把握されている」。
自治体の取り組み事例
| 自治体 | 内容 |
|---|---|
| 兵庫県神戸市 | 地域貢献応援制度。「報酬を伴う活動を躊躇していたが、制度ができて安心して活動できている」という職員の声を紹介 |
| 岐阜県岐阜市 | 岐阜市版「福業」ガイドラインを策定。報酬を得る場合の地域活動を含む具体的な事例を周知 |
| 福島県いわき市 | 地域貢献活動のルールを明確化。イベント講師や市内農業への従事が出ている |
| 和歌山県紀美野町 | 町民と作業しながら意見交換でき、農業の実情を知ることが住民サービス向上につながる |
| 大阪府和泉市 | 職員自身の趣味・特技を活かした活動も実施。地域貢献活動を実施する職員が増加 |
| 長野県 | 「地域に飛び出せ!社会貢献職員応援制度」を平成30年9月に創設 |
神戸市の事例には、市民団体側の声も載っています。「報酬を渡せるので市職員でも誘いやすくなった」。
制度がないと、頼むほうも気を遣っていた。ルールが明確になることの効果は、職員側だけの話ではないわけです。
時間の条件を具体的に決めている例もあります。秋田県の許可基準は「従事する時間が1週間あたり8時間かつ1か月あたり30時間を超えないこと」「勤務時間が割り振られた日において1日3時間を超えないこと」「勤務時間が割り振られた日の勤務時間外または週休日であること」。熊本県天草市は、上限時間内であっても兼業を行う時間が深夜に及ぶ場合は許可しない取扱いとしています。
自分の自治体の許可基準を、まず庁内ポータルで検索してみてください。
許可を取らずに始めた場合、どうなるか
ここは正直に書きます。処分の量定を示した統一的な公表資料は、今回の調査では確認できませんでした。
確認できたのは、処分が現に起きているという事実のほうです。総務省の分科会では、第1回の委員意見としてこう記録されています。「許可手続が明確でなく、兼業許可を得なかったために処分された職員もいる」。
報告書の別の箇所にも、同じ趣旨があります。「許可基準が明確でなく、許可を得ずに兼業を行ったために処分に至ったケースもある」。
もうひとつ、見過ごせない記述があります。「実際、こうしたことが一因ともなり、公務外での活躍が注目された職員が職場にいづらくなり、退職したという事例も指摘されている」。
手続きの問題だけでなく、職場の空気の問題でもある。総務省がそこまで書いているのは、それなりの重さがあると受け止めるべきだと思います。
だからこそ、順番が大事になります。始めてから申請するのではなく、申請してから始める。承認や許可は「あとから取れるもの」ではありません。
副業タイプ別|手続きが要る・要らないの当てはめ
よく聞かれる副業を、ここまでの整理に当てはめます。この表は当サイトによる当てはめであり、人事院や総務省が類型ごとに可否を公表しているものではありません。最終判断は所属の人事担当に確認してください。
| 副業の種類 | 国家公務員 | 地方公務員 |
|---|---|---|
| ハンドメイド品の販売 | 103条の承認(2026年4月から新基準の対象。開業届と事業計画書が必要) | 38条の許可(自営兼業として。総務省が個人スキルの自営を可能と明記) |
| スポーツ・芸術の教室 | 103条の承認(同上) | 38条の許可(書道教室の許可例あり) |
| 不動産賃貸 | 5棟10室以上、または年1,000万円以上なら103条の承認 | 38条の許可(基準は自治体ごと) |
| 太陽光発電の売電 | 定格出力50キロワット以上なら103条の承認 | 38条の許可(基準は自治体ごと) |
| コンビニ・飲食店のアルバイト | 原則として認められていない(昭和41年通知) | 任命権者の判断で可能(2025年6月通知) |
| 講演・執筆で報酬を受け取る | 104条の許可(内閣総理大臣および所轄庁の長) | 38条の許可 |
| 地域振興イベントの主催 | 103条の承認(社会貢献に資する事業として) | 38条の許可(社会貢献活動の許可が13,498件) |
| 家業の継承 | 103条の承認(相続・遺贈等の基準が存続) | 38条の許可 |
表を眺めると、境目がどこにあるかが見えてきます。国家公務員は「自分で作って売る」側が開き、「雇われて働く」側は閉じたまま。地方公務員は、どちらも任命権者の判断次第。この非対称が、2026年時点の姿です。
なお、アフィリエイトやブログ・動画の広告収入については、今回の調査で当てはめを示した公表資料が見つかりませんでした。この記事では断定を避けます。反復継続して収入を得る規模になれば「自ら営利企業を営む」に近づいていく、という方向性しか言えません。所属に確認するのが最短です。
税金の手続きは、民間の会社員と同じです
許可や承認を得たあとの税金の扱いは、公務員だからといって特別ではありません。
給与以外の所得が年20万円を超えれば確定申告が必要になる、住民税の徴収方法で勤務先に知られる経路がある、経費として落とせる範囲にルールがある。この3点は、民間の会社員とまったく同じ枠組みで動きます。
- 申告の手順は副業の確定申告のやり方
- 住民税の仕組みは副業が会社にバレない方法
- 経費の計上ルールは副業の経費
ひとつだけ、公務員に固有の注意があります。承認の申請で書いた「収入の予定年額」と、実際の申告額がかけ離れないようにしておくことです。運用通知は、承認を与えた事業について所轄庁の長等が人事院へ報告する項目として「収入の予定年額」を挙げています。予定額を書かせて、報告させる仕組みが組み込まれている以上、実績との整合は見られると考えたほうが自然です。
なお、2026年4月からの新しい承認基準では開業届の提出が前提になっています。ただし開業届を出したからといって、所得の区分が自動的に事業所得になるわけではありません。国税庁は、青色申告ができるのは「不動産所得、事業所得、山林所得のある方」としています(国税庁「No.2070 青色申告制度」令和8年4月1日現在法令等、2026年9月13日確認)。
その青色申告承認申請書の提出期限は、新規開業の場合「業務を開始した日から2か月以内」です(同)。開業届と同時に出すのがいちばん確実です。
今日やること|申請までの4ステップ
制度の全体像を覚える必要はありません。先に手を動かす順番だけ決めてしまいます。
ステップ1|自分がどちらの公務員か確認する(3分)
国家公務員なら人事院規則と各府省の内規、地方公務員なら自治体の許可基準。読む資料が違います。
ステップ2|庁内ポータルで「兼業」「営利企業への従事」を検索する(10分)
許可基準が公表されているのは全体の56%です。見つからない場合、禁止ではなく未整備の可能性があります。その場合は人事担当に直接聞くのが早道です。
ステップ3|利害関係の有無を自分で先に洗う(15分)
いまの部署が、始めたい事業の業界に対して許認可・検査・補助金・契約の権限を持っていないか。運用通知の定義に照らして確認します。ここで引っかかる場合、事業内容そのものを変えたほうが早いことがあります。
ステップ4|事業計画書の骨だけ先に書く(30分)
必要な項目は決まっています。事業の目的、業務内容、営業日と営業時間、収入の予定年額。この4つを1枚にまとめておけば、相談の質が上がります。「やっていいですか」と聞くより、紙を1枚持っていくほうが話が早いのは、たいていの組織で同じです。
この4ステップで、だいたい1時間。承認や許可の可否を考えるより先に、聞く準備を整えるほうが結果的に速いと思います。
よくある質問
Q1. 公務員の副業は、結局のところ禁止なのですか?
禁止ではありません。国家公務員法第103条・第104条、地方公務員法第38条は、いずれも許可や承認があれば適用しない、という構造になっています。地方公務員では、総務省の令和6年度フォローアップ調査で、令和5年度に41,587件の許可が出ています。
Q2. 2026年4月から、具体的に何が変わったのですか?
国家公務員の自営兼業について、3つ変わりました。1つめは「職員の有する知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」が承認対象に加わったこと。2つめは不動産賃貸で承認が必要になる賃料が年500万円以上から年1,000万円以上になったこと。3つめは太陽光発電が定格出力10キロワット以上から50キロワット以上になったことです。
Q3. ハンドメイド品を売るのに、本当に承認が取れますか?
人事院が公表した見直し概要には、承認可能とする事業のイメージとして「ハンドメイド品の販売」が明記されています。ただし承認基準を満たす必要があり、開業届の提出と事業計画書の作成が前提です。承認するかどうかの判断は各府省が行います。
Q4. 承認を受けたら、ずっと続けられますか?
いいえ。知識・技能をいかした事業と社会貢献に資する事業の承認は、2年を超えない期間で与えられます。また、昇任・転任・配置換などで官職に異動があった場合や、事業の内容に変更があった場合は、その後1か月以内に改めて承認を受ける必要があります。
Q5. 週末にアルバイトをしてもいいですか?
国家公務員と地方公務員で結論が変わります。国家公務員は、営利企業の従業員としての有報酬の兼業は昭和41年通知により原則として認められていません。地方公務員は、2025年6月11日の総務省通知で「各任命権者の判断において、営利企業の従業員との兼業を認めることが可能である」と明記されました。ただし実際に可能かどうかは、自治体の許可基準によります。
Q6. 副業に使える時間に上限はありますか?
国家公務員では、週8時間または1か月30時間を超えるとき、勤務時間が割り振られた日において1日3時間を超えるときは、原則として許可されない事由に該当するとされています。ただしこれは国家公務員法第104条に基づく兼業許可の目安で、第103条の自営兼業の承認には時間数の上限規定が見当たりません。地方公務員でも、秋田県のように同じ数字を許可基準に採用している自治体があります。
Q7. 不動産投資は年500万円までではないのですか?
2026年4月から年1,000万円以上に変わりました。500万円という数字は改正前の基準です。ただし部屋数の基準(独立家屋5棟以上、区画10室以上)は変わっていません。また、建物の賃貸のみを行う場合で床面積の合計が600平方メートル未満のときは、金額の基準から除かれる扱いになっています。
Q8. 自分の自治体に許可基準が見当たりません。禁止ということですか?
そうとは限りません。総務省の調査では、許可基準を設定している自治体は64%、公表しているのは56%にとどまります。基準が見当たらない場合は未整備の可能性があり、人事担当に確認するのが確実です。
Q9. 報酬の上限はいくらですか?
国や総務省は具体的な金額を示していません。総務省は許可基準について「一律に具体的な報酬額を定めるのではなく、『社会通念上相当と認められる程度を超えない額』等とすることが考えられる」としています。金額を明示している自治体もあり、福島県いわき市は「所得額年額20万円を基準」としています。
Q10. 許可を取らずに副業をしてしまいました。
処分の量定を示した統一的な公表資料は、今回の調査では確認できませんでした。ただし総務省の分科会では「兼業許可を得なかったために処分された職員もいる」と記録されています。まずは所属の人事担当に相談してください。
Q11. 承認や許可を取れば、確定申告は不要になりますか?
いいえ、別の話です。承認や許可は服務上の手続きで、税務の手続きは民間の会社員と同じように必要になります。給与以外の所得が年20万円を超える場合の申告や、住民税の取り扱いも同様です。
Q12. アフィリエイトやYouTubeの広告収入はどうなりますか?
今回の調査では、この形態を名指しして当てはめを示した人事院・内閣人事局・総務省の公表資料は確認できませんでした。本記事では断定を避けます。所属の人事担当に確認してください。
まとめ|線が動いた年に、線を確認しておく
長くなったので、要点だけ置いておきます。
- 公務員の副業は禁止ではなく、国家公務員は承認制、地方公務員は許可制です
- 2026年4月から、国家公務員は「知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」で承認を受けられるようになりました
- 人事院が挙げた事業イメージには、ハンドメイド品の販売とスポーツ・芸術の教室が含まれます
- その承認には開業届と事業計画書が必要で、期間は2年まで。異動後は1か月以内に取り直します
- 不動産賃貸の金額基準は年500万円以上から年1,000万円以上へ、太陽光は10キロワット以上から50キロワット以上へ上がりました
- 5棟10室の基準は変わっていません。動いたのは金額と出力です
- 国家公務員の営利企業の従業員としての有報酬の兼業は、原則として認められていません
- 地方公務員は2025年6月の総務省通知で、従業員との兼業も任命権者の判断で可能と明記されました
- 報酬を得て働く兼業の時間目安は週8時間・月30時間・勤務日1日3時間です(自営兼業の承認には時間数の上限規定が見当たりません)
- 許可基準を設定している自治体は64%、公表しているのは56%です
公務員の副業の情報は、古い基準のまま書かれたものが大量に残っています。500万円、10キロワット、家業継承のみ。どれも2026年3月までの話です。
制度そのものより先に、自分が読んでいる記事の日付を見る。今年に関しては、それがいちばん確実な入口だと思います。この記事も、次に線が動いたときには古くなります。一次資料のURLを本文に置いてあるのは、そのためです。
参照した一次資料
- 人事院「人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について(昭和31年8月23日職職―599)」最終改正 令和7年12月19日職審―451(人事院、2026年9月13日確認)
- 人事院「自営兼業制度の見直しについて(概要)」令和7年12月(PDF・人事院、2026年9月13日確認)
- 総務省「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する留意事項について(通知)」総行公第72号、令和7年6月11日(別添1 地方公務員の兼業について 報告書、別添2 実態調査結果、別添3 兼業許可基準を設定する際のポイントを含む)(PDF・総務省、2026年9月13日確認)
- 総務省「地方公務員の兼業について」第4回 地方公務員の働き方に関する分科会 資料3、令和7年3月17日(PDF・総務省、2026年9月13日確認)
- 総務省「地方公務員の兼業に関する技術的助言の通知」報道資料(総務省、2026年9月13日確認)
- 総務省「地方公務員制度等|兼業」(総務省、2026年9月13日確認)
- 国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」令和8年4月1日現在法令等(国税庁、2026年9月13日確認)
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」令和8年4月1日現在法令等(国税庁、2026年9月13日確認)
本記事は法令の解説であり、個別の事案についての助言ではありません。承認・許可の可否は、所属の人事担当または任命権者の判断によります。

