キッチンカーの副業は、車を買って週末のイベントに出れば始められると思われがちです。けれども食品衛生法の上では、キッチンカーは「動く飲食店」として扱われます。
キッチンカー副業は、保健所の飲食店営業の許可を、営業車1台ごとに受けてから始めます。許可書を受け取るまでは営業できません。
さらに、車に積む水タンクの容量(約40L・80L・200L)で、出せるメニューの範囲が決まります。先にメニューを決め、それに合う車を用意する順番です。
この記事でわかること
- キッチンカーに要る許可が「飲食店営業(自動車)」であること
- 許可は営業車1台ごとで、効く範囲は自治体ごとに違うこと
- 水タンク約40L・80L・200Lで扱えるメニューが分かれること
- 仕込みは、作業に応じた営業許可を受けた施設で行うこと
- 道路に止めて売るには警察署長の許可が別に要ること(道路交通法第77条)
- 無許可営業は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金であること(食品衛生法第82条)
pm-linkle編集部が作成しました。調査日は2026年10月27日です。専門家の監修は受けておらず、e-Gov法令検索と保健所が公開している資料の原文を引用する方針です。確認できなかった論点は記事の末尾にまとめています。
車を使う副業は軽貨物副業でも扱いました。あちらは荷物を運ぶ側で、届出先は運輸支局です。この記事は食べ物を売る側で、窓口は保健所になります。お酒も売りたい人は酒類販売副業もあわせて読んでください。
目次
車を探す前に、出したいメニューに要るタンク容量を確かめてください。タンク容量の節へ進む
結論:許可・責任者・出店場所の3つがそろって始められます
キッチンカー副業は、車を用意しただけでは始められません。法令と保健所の手続で、そろえるものが3つあります。
1つ目は保健所の営業許可です。食品衛生法第55条は、飲食店などの営業を営もうとする人に都道府県知事の許可を求めています。2つ目は食品衛生責任者です。3つ目は、売る場所の持ち主や管理者の許可です。
| # | 必要なこと | 根拠・窓口 | 該当節 |
|---|---|---|---|
| 1 | 飲食店営業(自動車)の許可 | 食品衛生法第55条/保健所 | 2 |
| 2 | 食品衛生責任者を置く | 保健所の申請書類 | 2 |
| 3 | 出店場所の許可 | 土地の管理者/道路は警察署長 | 6 |
順番も大事です。メニューを決め、保健所に図面で相談し、そのあとで車を買うか改造します。板橋区は、事前相談なしで車を持ち込んでも検査できないと案内しています。
キッチンカーに要る許可は「飲食店営業(自動車)」です
キッチンカーで調理して売るなら、許可の業種は飲食店営業です。自治体の資料では「飲食店営業(自動車)」と書き分けられています。
根拠は食品衛生法第55条です。条文は「都道府県知事の許可を受けなければならない」と定めています。同じ条で、許可に「五年を下らない有効期間」を付けられるとしています。
岡山市は、自動車での営業を2つに分けて説明しています。
| 区分 | どんな営業か |
|---|---|
| 飲食店営業(自動車) | 固定店舗に準じた施設基準を満たす車で調理して出す |
| 飲食店営業(特殊形態第1種) | テントや簡易な設備の車、屋台で調理して出す |
この記事で扱うのは前者です。後者は設備が簡単な代わりに、原材料の細切りなどの下処理が認められていません。
食品衛生責任者は講習1回で取れます
申請には、食品衛生責任者の資格を証する書類が要ります。岡山市・倉敷市・板橋区のいずれも、申請書類に挙げています。
中央区によると、2021年6月1日から、許可や届出の対象となる施設には原則として食品衛生責任者の設置が必要です。調理師・製菓衛生師・栄養士などの資格がある人は、講習なしで就けます。
資格がない人は養成講習を受けます。東京都では東京都食品衛生協会が実施しています。中央区は「どこの都道府県で受講されても同一です」と書いています。
HACCPに沿った衛生管理も求められます
2021年6月からは、HACCPに沿った衛生管理も原則すべての営業者に求められています。食品衛生法第51条が根拠です。
小規模な営業者は、扱う食品の特性に応じた取組でよいとされています。何をどこまで記録するかは、保健所への事前相談で確かめてください。
許可は車1台ごと、効く範囲は自治体で違います
許可は人ではなく車に付きます。2台目を走らせるなら、2台目の許可も要ります。
板橋区の自動車による食品営業に係る営業許可等の取扱要綱(令和3年6月8日最終改正)は、第3条でこう定めています。「営業車一台につき該当業種の営業許可を要するものとする」。許可を受けた車には標識が交付され、見やすい位置に付けます。
都内・県内で使える例があります
許可が効く範囲は、自治体の決め方で変わります。資料で確認できた例は次のとおりです。
| 自治体 | 資料に書かれている範囲 |
|---|---|
| 板橋区 | 東京都内で許可を受けた営業車は、板橋区の許可を受けたものとみなす(要綱第3条第3項) |
| 岡山市 | 営業区域は「岡山県内一円」 |
| 倉敷市 | 岡山県内の保健所で許可を取ると県内どこでも営業できる |
逆に、都道府県をまたいだ出店で同じ許可が使えるかは、今回の資料では確認できませんでした。岡山市は、県外の人は主たる営業場所を管轄する保健所で申請するよう案内しています。県外のイベントに出るなら、出店先の保健所に先に聞いてください。
都内では申請先が仕込場所から決まります
どこの保健所に申請するかにも決まりがあります。板橋区の要綱では、優先順位が4段階です。
- 仕込場所が区内にある人
- 事務所か営業車の保管場所が区内にある人
- 申請者の住所が区内にある人
- 主たる営業地が区内にある人
都内なら、仕込場所を決めると申請先もほぼ決まります。岡山市は、設備を保管する場所を管轄する保健所に申請するよう案内しています。決め方は自治体で違います。
水タンクの容量で出せるメニューが決まります

キッチンカーでは、積んでいる給水タンクの大きさで、扱えるメニューが分かれます。編集部が確認した東京都(板橋区の要綱)・岡山市・倉敷市は、いずれも約40L・80L・200Lの3段階でした。
板橋区の要綱の別表を、そのまま表にしました。
| 給水タンク | 扱える範囲 | 容器 |
|---|---|---|
| 約40L | 簡易な調理のみ(温める、揚げる、盛り付ける等)。単一品目のみ | 使い捨て容器 |
| 約80L | 2工程程度までの簡易な調理。複数品目 | 使い捨て容器 |
| 約200L | 大量の水を要する調理、複数の工程からなる調理、仕込み | 通常の食器 |
東京都の基準では、40Lで出せるのは原則1品目だけです。唐揚げとポテトを両方出すなら、少なくとも80Lが要る計算です。岡山市の表は「簡易な調理のみ、または単一品目のみ」と書いており、読み方は保健所に確かめてください。
倉敷市のメニュー例がわかりやすいです
倉敷市保健所の案内には、メニューごとの可否が載っています。いくつか抜き出しました。
| メニュー | 40Lで可 | 80L以上で可 |
|---|---|---|
| カレーライス | レトルトの再加熱やトッピング | 車内で下処理して煮込む |
| 唐揚げ・天ぷら | 下処理済み・冷凍品を揚げる | 車内で下処理した食材を揚げる |
| ハンバーガー | 下処理済みの食材を挟んで全体を加熱 | バンズとパテを別々に加熱して組み合わせる |
| かき氷 | 氷にシロップをかける | 下処理済みの生の果物をのせる |
同じ料理でも、車内で下処理をするかどうかで、40Lか80Lかが分かれます。倉敷市の資料では、200Lは「固定店舗の飲食店と同様の食品提供が可能」という位置付けです。「何を出すか」より「車内で何をするか」で決まると考えると、判断を誤りにくくなります。
倉敷市は、給水タンクと排水タンクの「必要量をそれぞれ準備」するよう案内しています。板橋区は、外部から給排水を直結する場合も、搭載するタンク容量に応じた扱いにすると書いています。
タンク以外の設備も決まっています
倉敷市の案内に並んでいる設備は次のとおりです。
- 手洗い専用シンク(蛇口はレバー式か自動)
- 運転席の後ろの区画、調理中は閉じる内窓
- 換気設備、照明設備、冷蔵設備
- 蓋つきのごみ箱、清掃しやすい床と壁
これらは固定店舗と同じ考え方の設備です。中古車を買う場合も、この一覧と図面を持って保健所に相談してから契約してください。
仕込みは許可を受けた施設で行います
車内で全部の作業をしないなら、仕込場所が要ります。板橋区の要綱は、仕込場所を「行われる作業に応じた営業許可施設であること」としています。
ここでいう仕込みには、食材を切る・加工する・包む作業が含まれます。器具の洗浄、給水タンクへの給水、食材の保管をする場所も仕込場所です。
家族が使う自宅の台所は、そのままでは仕込場所になりません。選択肢は3つに分かれます。
| やり方 | 必要なこと |
|---|---|
| 既存の飲食店を借りる | その店が作業に応じた許可を持っていること |
| シェアキッチンを使う | 施設の許可の範囲を利用規約で確かめる |
| 車内で仕込む | 約200Lのタンクなど、仕込みに要る設備を車に積む |
板橋区の要綱には「保健所長が営業許可を要さないと認めた場合」という例外もあります。使えるかは保健所ごとの判断です。
申請時には、仕込場所の営業許可書の写しを確認されることがあります。板橋区の手引きが挙げている書類の一つです。
道路では売れず、出店場所の許可が別に要ります

保健所の許可は、食品を扱ってよいという許可です。どこで売ってよいかは別の問題になります。
道路交通法第77条第1項第3号は、「場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者」に、所轄警察署長の許可を求めています。板橋区の手引きも、公道での営業は道路交通法の対象で、所轄警察署の指導に従うよう書いています。
さらに板橋区は、設備を車外に置くことと、私有地での長時間の停車も認めていません。
現実の出店先は3つです
副業で週末に出るなら、出店先はおおむね次の3つです。
| 出店先 | 誰の許可を取るか |
|---|---|
| イベント・マルシェ | 主催者(出店料・出店規約あり) |
| 商業施設・オフィスの敷地 | 土地の所有者か管理者 |
| 出店場所の仲介サービス | 仲介先の規約と土地の管理者 |
公園で売りたい場合は、公園の管理者に使用の可否を確かめてください。どの場所でも、火気や発電機の使用条件は主催者や管理者ごとに違うので、契約前に確かめてください。
車内の改造は車検証の変更も確かめます
調理台やシンクを車内に固定すると、車の形状や乗車定員が変わることがあります。この場合は車検証の手続も関わってきます。
道路運送車両法第67条は、自動車検査証の記録事項に変更があったとき、15日以内に変更記録を受けるよう定めています。保安基準に合わなくなるおそれがあれば、構造等変更検査を受けるよう命じられます。
キッチンカー用の車を「8ナンバー(特種用途自動車)」で登録する例が多く紹介されています。ただし、どの構造なら8ナンバーになるかの要件は、今回は国土交通省の原資料で確かめきれませんでした。改造業者と運輸支局に、登録区分まで含めて確認してください。
無許可営業は200万円以下の罰金です
許可を受けずに営業すると、刑事罰の対象です。食品衛生法第82条は、第55条第1項の規定に違反した者を「二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金」に処すると定めています。情状により両方を科すこともできます。
板橋区の手引きも、許可書を受け取るまでは営業できないと明記しています。許可書は営業中に必ず携帯し、営業の大要に変更があればその都度届け出ます。
許可が出るまでの日数を見込んで、出店日を決めてください。今日やることへ進む
収入と税金、会社に知られる経路
キッチンカーの売上は、本業の給与とは別の所得になります。会社員なら、確定申告の要否から確かめます。
国税庁のタックスアンサーNo.1900では、給与を1か所から受けていて、給与以外の所得の合計が20万円を超える人は確定申告が必要です。所得は売上から材料費・出店料・燃料代などの経費を引いた額です。
開業届は国税庁No.2090の手続です。2026年10月27日時点の同ページは、提出時期を「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」と書いています。書き方は副業の開業届の出し方にまとめました。
会社に知られる経路の一つが、住民税の通知です。対策の考え方は副業がバレない方法で扱っています。そもそも就業規則で副業が認められているかを、先に確かめてください。
車の購入費や改造費は、金額によって一度に経費にできないことがあります。考え方は副業の経費の記事を参照してください。
今日やることは5つです

ここまでの内容を、始める順番に並べ直しました。車を探すのは3番目です。
- 出したいメニューと、車内でやる工程を書き出す。工程数で、必要なタンク容量(約40L・80L・200L)の見当を付けます。
- 仕込場所を決める。借りる店かシェアキッチンか、車内で仕込むかを選びます。都内なら申請先もこれで決まります。
- 図面を持って保健所に事前相談する。車を買う前か改造前に行きます。
- 食品衛生責任者の講習を予約する。調理師などの資格があれば不要です。
- 申請し、検査を受け、許可書を受け取る。検査日は給水タンクに水を入れて行きます。
申請から営業までの日数は、世田谷区が「都内で営業を開始する10~14日前を目安に」書類を出すよう案内しています。板橋区は、許可書の交付まで約1週間から10日としています。
手数料は自治体で違います。世田谷区の飲食店営業は18,300円でした(2026年10月22日更新のページ)。岡山市と倉敷市は17,000円です。
税金の手続まで先に確かめたい人は、こちらも読んでください。副業の確定申告
よくある質問
検索で聞かれることの多い6問に短く答えます。根拠は各節に置いてあります。
Q1. キッチンカーの副業に資格は必要ですか。
保健所の飲食店営業の許可と、食品衛生責任者が必要です。食品衛生責任者は、調理師などの資格がなければ養成講習を受けて就きます(許可の節)。
Q2. 自宅の台所で仕込みをしてもいいですか。
家族が使う自宅の台所は、そのままでは仕込場所になりません。仕込場所は作業に応じた営業許可施設であることが求められます。許可のある店やシェアキッチンを借りるか、約200Lのタンクを積んで車内で仕込みます(仕込みの節)。
Q3. 40Lのタンクで何が売れますか。
東京都の基準では、温める・揚げる・盛り付ける程度の簡易な調理で、単一品目のみです。容器は使い捨てを使います。複数品目なら約80L、複数工程や通常の食器なら約200Lです(タンク容量の節)。
Q4. 1つの許可で全国どこでも営業できますか。
確認できた例は、板橋区の「都内の許可は区内でもみなす」と、岡山県内の「県内一円」までです。県外で出店するなら、出店先の保健所に先に確かめてください(許可の範囲の節)。
Q5. 道路に止めて売ってもいいですか。
道路で場所を移動せずに店を出すには、道路交通法第77条で所轄警察署長の許可が要ります。副業の出店先は、イベントや私有地の敷地が中心です(出店場所の節)。
Q6. 無許可で営業するとどうなりますか。
食品衛生法第82条で、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象です。許可書を受け取るまでは営業できません(罰則の節)。
この記事の調べ方と、埋まらなかった論点
- pm-linkle編集部が2026年10月27日に調査して作成しました。弁護士・行政書士・税理士の監修は受けていません。制度の内容は、e-Gov法令検索の食品衛生法・道路交通法・道路運送車両法、板橋区・世田谷区・中央区・岡山市・倉敷市の公開資料、国税庁のタックスアンサーに限って引用しています。
- 編集部が実際に資料を開いて確認した所見は2件です。1つは、板橋区の取扱要綱の給水タンク別表と、倉敷市・岡山市の40L・80L・200Lの区分が同じ考え方で並んでいたこと。もう1つは、同じ飲食店営業の手数料が、世田谷区で18,300円、岡山市・倉敷市で17,000円と、自治体で違っていたことです。
確認できなかった論点
- 都道府県をまたいで出店するときに、元の許可がどこまで使えるか。出店先の保健所で確かめてください。
- 8ナンバー(特種用途自動車)として登録できる構造の要件。国土交通省の原資料を今回は読み切れていません。
- 食品衛生責任者の養成講習の受講料。実施団体の案内で確かめてください。
- キッチンカーの売上や利益の公的統計。収入の目安は示していません。
- 車両の購入費・改造費、イベントの出店料、PL保険の相場。公的な資料では確認できませんでした。
- LPガス・発電機の使用条件(消防の扱い)。出店先の主催者と、所轄の消防署で確かめてください。
- 東京都の施行条例別表第2にある施設基準の細目。板橋区の要綱が参照している条例本文は今回確認していません。

