副業を始めるとき、いちばん多い不安が「社会保険はどうなるのか」ではないでしょうか。
ところが、副業がアルバイトやパートの場合、130万円に届いていなくても社会保険の加入対象になることがあります。日本年金機構は、年収130万円未満であっても4分の3基準または4要件を満たした場合は被保険者になる、とはっきり書いています。
分かれ目は年収ではありません。週の所定労働時間が20時間以上かどうか、そして勤務先の規模です。
この記事でわかること
- 副業で社会保険に入るかどうかは、年収ではなく働く量で決まること(まず4分の3基準、次に週20時間と勤務先の規模)
- 「130万円の壁」は扶養に入り続けられるかの基準で、加入するかどうかの基準とは別物であること
- 月8.8万円という賃金の条件が撤廃される見込みで、その時期の書きぶりが年金機構と厚労省で違うこと
- 勤務先の人数の条件が2027年10月に36人以上へ下がり、その後も段階的に広がること
- 本業と副業の両方で加入対象になったら、本人が10日以内に届出を出す必要があること
- 副業が業務委託なら、社会保険が新たに増えることは原則ないこと
- 雇用保険は週20時間未満なら対象外で、社会保険とは別の物差しで判断されること
- 保険料が増えるかわりに、厚生年金の上乗せと、休業時の収入保障が付いてくること
保険料を引かれたら手取りが減る。扶養から外れたら家計が苦しくなる。だから130万円を超えないように調整する。よく聞く話です。ところがその前提が、いま崩れかけています。月8.8万円という賃金の条件は撤廃される見込みで、勤務先の人数という条件も10年かけて縮小・撤廃されるためです。
社会保険は、間違えると手取りにも将来の年金にも影響します。どこまでが公的な根拠にもとづく記述で、どこからが当サイトの整理なのかを先に開示しておきます。
この記事の調べ方(編集方針)
- 本記事は、副業ジャンルの記事を70本以上制作している当サイト編集部が作成しました。事実部分の出典は日本年金機構・厚生労働省の公式ページと、e-Gov法令検索の条文に限定しています。調査日は2026年9月4日です。
- 参照した各ページの更新日は本文中に明記しました。制度が動いている最中のテーマのため、更新日の新しさそのものが判断材料になります。
- 体験談は載せていません。検証できない自己実績は書かない方針を取り、公開されている制度の読み解きに徹しています。
- 保険料や年金額の個別試算は行っていません。金額は勤務先や標準報酬月額で変わります。判断は勤務先の担当者、年金事務所、加入している健康保険組合に確認してください。
- 本記事は社会保険労務士の監修を受けていません。そのぶん、解釈が分かれる論点では断定を避け、公式ページの原文表現をそのまま引用する方針を取っています。
- 後述するとおり、賃金要件の撤廃時期については日本年金機構と厚生労働省で書きぶりが違います。片方だけを載せず、両方の記述を並べています。
税金の側の手続きは、副業の確定申告のやり方と副業の源泉徴収にまとめました。この記事は、保険のほうだけに絞ります。
- 結論:加入するかどうかは、週20時間と勤務先の規模で決まります
- そもそも社会保険とは|副業では健康保険と厚生年金の2つを見ます
- 副業がアルバイト・パートの場合|加入の分かれ目は週20時間です
- 「130万円の壁」との関係|130万円未満でも加入対象になります
- 賃金要件(月8.8万円)の撤廃|公式2ページで書きぶりが違います
- 企業規模要件は2027年10月に36人以上へ|10年かけて撤廃されます
- 本業と副業の両方で加入対象になったら|届出は本人が10日以内に
- 副業が業務委託・フリーランスの場合|社会保険は増えません
- 雇用保険はどうなるのか|週20時間未満は対象外です
- 加入すると手取りはどう変わるのか|負担と給付の両面があります
- 副業を始める前に確認したい4点
- よくある質問
- まとめ
結論:加入するかどうかは、週20時間と勤務先の規模で決まります
先に結論です。副業がアルバイトやパートなら、社会保険に入るかどうかは3つの数字でほぼ決まります。
週の所定労働時間、勤務先の厚生年金被保険者の人数、そして所定内賃金の月額です。年収130万円という数字は、この判定には出てきません。
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| 副業で社会保険に入る条件は | 週20時間以上・学生でない・月8.8万円以上を満たし、勤務先が特定適用事業所(厚生年金の被保険者が51人以上の企業等。後述)であること |
| 130万円を超えなければ大丈夫か | いいえ。130万円未満でも上の条件を満たせば被保険者になる |
| 副業が業務委託なら | 使用関係がないため、副業側で社会保険が増えることは原則ない |
出典: 日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(更新日2026年4月17日)/日本年金機構 年金Q&A(短時間労働者)(更新日2024年1月24日)
当サイトが調べていていちばん意外だったのは、2行目です。「130万円の壁」という言葉があまりに有名なせいで、加入の基準まで130万円だと思い込まれているという構図が見えてきました。
130万円は、配偶者などの扶養に入り続けられるかどうかの基準です。自分が被保険者になるかどうかの基準ではありません。目的の違う2つの数字が、同じ「壁」という言葉でひとまとめにされています。
ここを分けて考えられるようになると、シフトの組み方が変わります。年収を気にして時給の低い仕事を選ぶより、週の時間数を先に決めたほうが早いからです。
まず確認するのは年収ではなく、契約書に書かれた週の所定労働時間です。手元の労働条件通知書を開いてください。
そもそも社会保険とは|副業では健康保険と厚生年金の2つを見ます
副業の文脈で「社会保険」と言うとき、指しているのは健康保険と厚生年金保険の2つです。
この2つはセットで動きます。加入条件が同じで、届出も同じ用紙で行うためです。以下、本記事で「社会保険」と書いたときはこの2つを指します。
雇用保険は別の法律で別の条件です。混ざりやすいので、後の章で分けて説明します。なお労災保険は労働時間の条件がなく仕組みも異なるため、本記事では扱いません。
会社員は「第2号被保険者」に分類されています
年金の制度は、国民年金法第7条が加入者を3つに分けています。この分類が、扶養の話を理解する土台になります。
| 区分 | 誰が該当するか | 年金保険料 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 日本国内に住所がある20歳以上60歳未満で、第2号にも第3号にも当たらない人(自営業者・フリーランス・学生など) | 自分で国民年金保険料を納める |
| 第2号被保険者 | 厚生年金保険の被保険者(会社員・公務員) | 給与から天引きされ、労使で折半 |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者の配偶者で、主として第2号の収入により生計を維持する20歳以上60歳未満の人 | 個別の負担なし |
出典: e-Gov法令検索 国民年金法 第7条。条文の表現を当サイトが要約しました。
第3号被保険者は、自分では年金保険料を払っていません。ここから外れると保険料の負担が発生します。「扶養から外れると損」と言われるのは、この第3号でいられなくなることを指しています。
ただし、外れた先が第1号か第2号かで意味がまったく違います。第1号は国民年金と国民健康保険の保険料を自分で払うだけです。第2号なら、保険料は労使折半になり、将来の年金も基礎年金に厚生年金が上乗せされます。
「使用される」とは、給与や賃金を受ける関係のことです
厚生年金保険の被保険者になるのは、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人です。国籍や性別、年金の受給の有無は問われません。
日本年金機構は、この「使用される」を注釈でこう説明しています。雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係をいう、と。試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められます。
契約書に何と書いてあるかではなく、実態で判断されるという意味です。この一文が、後で出てくる業務委託の話につながります。
副業がアルバイト・パートの場合|加入の分かれ目は週20時間です

ここが本題です。副業先で雇われて働く場合、社会保険に入るかどうかは2段階で判定されます。
第1段階は「4分の3基準」です。基準になるのは、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者です。1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、その4分の3以上なら被保険者になります。この基準は平成28年10月1日から明確化されました。
第2段階は、4分の3未満だった人に対する判定です。ここで週20時間が出てきます。
4分の3未満なら、3つの要件で判定します
まず勤務先の条件です。「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」のいずれかであること。この場合、4分の3未満のパートやアルバイトでも、次の3つをすべて満たせば被保険者になります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (ア)労働時間 | 週の所定労働時間が20時間以上であること |
| (イ)学生でないこと | 学生は対象から外れる |
| (ウ)賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上であること |
出典: 日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(更新日2026年4月17日)
ここで、公式ページの表記について1点断っておきます。年金機構は別のQ&Aページで「4分の3基準または4要件」という言い方をしていますが、適用拡大の解説ページが挙げているのは上の3つです。残る1つは「2か月を超えて雇用される見込みがあること」で、これは次の「短期の契約」の項目で扱う内容にあたります。数え方が違うだけで、判断すべき中身は同じです。
法律の側から見ると、この3つは「該当したら加入」ではなく「該当しなければ除外」という形で書かれています。根拠は厚生年金保険法第12条第5号です。4分の3未満の短時間労働者のうち、週20時間未満・報酬8.8万円未満・学生のいずれかに当たる人を、適用除外としています。
つまり3つの入り口のうちどれか1つでも通れなければ、加入しないという構造です。逆に言えば、3つとも通ってしまえば本人の意思に関係なく加入します。
特定適用事業所とは、被保険者が51人以上の企業のことです
勤務先の規模の条件です。特定適用事業所とは、1年のうち6か月以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者の総数が51人以上となることが見込まれる企業等を指します。
この人数の数え方には注意点があります。短時間労働者は含まず、共済組合員は含めます。また、企業単位で数えます。
規模が足りない企業にも道があります。被保険者の同意にもとづく事業主の申し出により、短時間労働者を加入対象とする事業所になれるためです。これを任意特定適用事業所と呼びます。この申し出があった場合、加入要件に該当するすべての短時間労働者が加入対象になります。
国に属する事業所は平成28年10月から、地方公共団体に属する事業所は平成29年4月から扱いが変わりました。どちらも被保険者数にかかわらず短時間労働者が加入対象です。役所の窓口業務などを副業にする場合は、人数の条件を考える必要がありません。
短期の契約なら、そもそも被保険者になりません
日雇いや短期の副業は、別の理由で対象外になります。厚生年金保険法第12条が、被保険者としない人を列挙しているためです。
| 被保険者とされない人 | 被保険者となる場合 |
|---|---|
| 日々雇い入れられる人 | 1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から |
| 2か月以内の期間を定めて使用される人 | 当初の雇用期間が2か月以内でも、その期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は契約当初から |
| 所在地が一定しない事業所に使用される人 | いかなる場合も被保険者とならない |
| 季節的業務(4か月以内)に使用される人 | 継続して4か月を超える予定で使用される場合は当初から |
| 臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人 | 継続して6か月を超える予定で使用される場合は当初から |
出典: 日本年金機構 適用事業所と被保険者(更新日2026年6月26日)/e-Gov法令検索 厚生年金保険法 第12条
2行目の書きぶりに注目してください。2か月以内の契約でも、更新が見込まれるなら契約の当初から被保険者になります。短期契約を繰り返して回避する、という発想は制度側で先回りされています。
短期・単発の副業そのものの選び方は、タイミー副業の始め方で扱っています。
「130万円の壁」との関係|130万円未満でも加入対象になります

130万円は「扶養に入り続けられるか」の基準であり、130万円未満でも週20時間などの要件を満たせば加入対象になります。冒頭に書いた点を、ここで詳しく確認します。
健康保険の被扶養者として認定される要件のひとつに、年収130万円未満という収入要件があります。この数字は、誰かの扶養に入り続けられるかどうかの基準です。
日本年金機構は、この収入要件について明確に書いています。「年収が130万円未満であっても、4分の3基準または4要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります」と。
| 比較項目 | 130万円の基準 | 週20時間の基準 |
|---|---|---|
| 何を判定するか | 他人の扶養に入り続けられるか | 自分が被保険者になるか |
| 主体 | 扶養する側の健康保険 | 自分の勤務先 |
| どちらが優先か | 被保険者になれば扶養の話は消える | こちらが先に判定される |
| 年収130万円未満なら | 扶養に入れる可能性がある | 週20時間以上なら関係なく加入 |
出典: 日本年金機構 年金Q&A(短時間労働者)(更新日2024年1月24日)の記述を当サイトが表に整理しました。
年収130万円以上になった場合の扱いも、厚生労働省が説明しています。週20時間未満で働く場合でも、年収130万円以上になると配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れます。国民年金と国民健康保険の保険料が発生します。収入が一時的に上がった場合は、事業主の証明により引き続き扶養が認められる特例があります。
130万円の枠には、19歳から22歳の例外があります
扶養認定の金額は、年齢や状態によって変わります。ひとつの数字ではありません。
| 扶養認定を受ける人 | 年間収入の基準 |
|---|---|
| 原則 | 130万円未満 |
| 60歳以上の人、または厚生年金保険法による障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者 | 180万円未満 |
| 19歳以上23歳未満の人(被保険者の配偶者を除く) | 150万円未満 |
出典: 日本年金機構 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて(更新日2026年5月1日)。180万円の枠は、障害年金などの給与以外の収入があるとこの方法が使えません。
大学生の子どもがアルバイトを掛け持ちする場合、150万円という枠で見ることになります。ただし、学生だからといって加入しないとは限りません。次の項目で例外を確認します。
2026年4月から、労働条件通知書ベースの認定が始まっています
被扶養者の認定方法にも変更が入りました。令和8年(2026年)4月1日以降の新しい取り扱いです。
見るのは、労働条件通知書などの労働契約内容がわかる書類です。そこに記載のある賃金から見込まれる年間収入が130万円未満であること。かつ、他の収入が見込まれないこと。この2つを満たし世帯の要件もクリアすれば、原則として被扶養者に該当するものとして取り扱われます。ここでいう賃金には、諸手当および賞与も含まれます。
従来の判定方法では基準額を超えていても、労働契約の段階で超えていなければ認定できる可能性があるという変更です。年金機構自身がそう書いています。
ただし、この取り扱いには使えない場面があります。
| 使えないケース | 理由 |
|---|---|
| 届の「被扶養者になった日」から起算して契約期間が1年未満 | 年間収入の判定ができない |
| 「シフト制による」など労働時間の記載が不明確 | 同上 |
| 「通勤手当有」等となっており手当の金額が不明確 | 同上 |
出典: 日本年金機構 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて(更新日2026年5月1日)
シフト制のアルバイトが除かれている点は実務上大きいところです。副業で多いのは、まさにシフト制だからです。
添付書類は2点あります。1つは労働契約内容がわかる書類です。労働条件通知書、雇用契約書、または労働条件が記載されている事業主証明を指します。もう1つは、扶養認定を受ける人からの「給与収入のみである」旨の申立書です。申立書は本人が記載する必要があります。
「学生でないこと」には、無視できない例外があります
学生であっても社会保険に加入するケースがあります。理由は2つです。
1つ目は働く量です。日本年金機構の回答はこうです。学生であっても適用事業所に使用され4分の3基準を満たす場合は、正社員等と同様に一般被保険者として被保険者となる、と。3要件は4分の3未満の人に対する判定なので、それ以上働けば学生でも加入します。
2つ目は「学生」の定義そのものです。年金機構は、次に当たる人は学生でも健康保険・厚生年金保険の対象になると説明しています。
| 学生でも対象になる人 |
|---|
| 卒業した後も引き続き当該適用事業所に使用されることとなっている者 |
| 一部の教育施設に在学する者 |
| 休学中の者 |
| 定時制課程および通信制課程に在学する者 |
| その他これらに準じる者(いわゆる社会人大学院生等) |
出典: 日本年金機構 年金Q&A 短時間労働者の要件に「学生でないこと」がありますが、「学生」とはどのような者を指すのですか/同 学生は、4分の3基準に該当していても、学生という理由のみをもって被保険者とならないのですか(2ページとも更新日の記載なし・2026年9月4日確認)。該当する教育施設の詳細は厚生年金保険法施行規則第9条の6および健康保険法施行規則第23条の6に列記されています。
働きながら夜間や通信制で学んでいる人は、ここに当たります。「学生だから対象外」で片づけると判断を誤ります。
賃金要件(月8.8万円)の撤廃|公式2ページで書きぶりが違います
月8.8万円という賃金の条件は撤廃される見込みですが、その時期の書きぶりは日本年金機構と厚生労働省で違います。ここからは、これから動く話です。
日本年金機構のページには、こう書かれています。最低賃金以上で週20時間以上働く場合は所定内賃金が月額8.8万円以上となるため、この要件は令和8年10月に撤廃予定です、と。令和8年10月は2026年10月です。
一方、厚生労働省のページの書きぶりは違います。撤廃の時期は、法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断する、としています。時期を断定していません。
| 出典 | 賃金要件の撤廃時期についての記述 |
|---|---|
| 日本年金機構(更新日2026年6月30日) | 「この要件は令和8年10月に撤廃予定です」(令和8年10月=2026年10月) |
| 厚生労働省 | 「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断します」 |
出典: 日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内(更新日2026年6月30日)/厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について。両ページの原文をそのまま引用しました。
当サイトとしては、この2つの記述を並べて示すにとどめます。2026年10月という時期を断定はしません。年金機構は「予定」という語を使っており、厚労省は最低賃金の動向を見極めるとしているためです。
1,016円という数字の意味も添えておきます。厚労省の説明によると、最低賃金1,016円以上の地域で週20時間以上働くと年額換算で約106万円になります。いわゆる「106万円の壁」の正体は、この月8.8万円という条件でした。
撤廃されると何が変わるのか。賃金の条件が消えるため、判定に残るのは週20時間と学生でないことの2つだけになります。時給がいくらであっても、週20時間働けば加入対象という形に近づきます。
企業規模要件は2027年10月に36人以上へ|10年かけて撤廃されます

勤務先の人数の条件も動きます。こちらは時期がはっきり書かれています。
日本年金機構が明記しているのは、令和9年(2027年)10月からの変更です。厚生年金保険の被保険者数が36人以上の企業等で働く短時間労働者が、加入対象になります。さらに、令和11年(2029年)10月以降も企業等の範囲が段階的に拡大されるとしています。
厚生労働省は、この改正の狙いをこう説明しています。企業規模要件を縮小・撤廃し、賃金要件の撤廃とあわせることで、短時間労働者が週20時間以上働けば、働く企業の規模にかかわらず社会保険に加入するようになる、と。改正の時期は10年かけて段階的に縮小・撤廃するとされています。
この改正の根拠となる法律は、令和7年5月16日に第217回通常国会へ提出されました。衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しています(厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について)。
個人事業所の適用対象も広がります
企業だけの話ではありません。個人事業所についても変更があります。
現在、個人事業所のうち常時5人以上の者を使用する法定17業種の事業所は、社会保険に必ず加入することとされています。物の製造、土木・建設、物の販売、教育・研究、医療、社会福祉などが挙げられています。
改正では、法定17業種に限らず、常時5人以上の者を使用する全業種の事業所を適用対象とするよう拡大されます。ただし2029年10月の施行時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外です。
副業先が小さな個人商店や飲食店の場合、この改正が効いてくる可能性があります。
保険料の負担を軽くする時限措置も用意されています
新たに加入対象になる人向けに、特例的・時限的な措置が設けられます。就業調整を減らすための支援策です。
以下に出てくる標準報酬月額とは、保険料を計算するために給与を段階に区切った金額のことです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 従業員数50人以下の企業などで働き、企業規模要件の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者であって、標準報酬月額が12.6万円以下であるもの |
| 期間 | 3年間 |
| 内容 | この措置の利用を希望する事業主は、事業主の負担割合を増やし、被保険者の負担を軽減できる |
| 事業主の追加負担 | その全額を制度全体で支援 |
出典: 厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について(更新日の記載なし・2026年9月4日確認)
注意したいのは、これが事業主が希望した場合の措置だという点です。自動的に適用されるとは書かれていません。該当しそうなら、勤務先に確認する価値があります。
本業と副業の両方で加入対象になったら|届出は本人が10日以内に

2か所で同時に加入対象になったら、会社ではなく本人が10日以内に届出を出します。ここが副業ならではの論点です。
被保険者が同時に複数(2か所以上)の適用事業所に使用されることとなった場合の扱いです。被保険者本人の届出により、主たる事業所を選択します。そのうえで、管轄する年金事務所または保険者等を決定します。
この届出は、会社ではなく本人が出します。事実発生から10日以内に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を日本年金機構へ提出する必要があります。
保険料は「合算してから按分」されます
複数事業所での保険料の決まり方は、直感と少しずれます。順番がすべてです。
先に用語を1つ。按分とは、決まった総額を一定の割合で分けることをいいます。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 合算する | それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定する |
| 2. 按分する | 保険料は、決定した標準報酬月額による保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬月額に基づき按分して決定する |
| 3. 通知する | 決定した標準報酬月額および保険料額は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターから、それぞれの事業所へ通知される |
出典: 日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き(更新日2025年12月25日)
3行目に、副業を知られたくない人が気にする情報が含まれています。決定した標準報酬月額と保険料額は、それぞれの事業所へ通知されます。両方の会社に、合算後の数字が届く仕組みです。
これは住民税の通知とは別の経路で情報が動きます。会社に知られたくない場合の考え方は、副業が会社にバレない方法で整理しています。
提出先と方法
届出の提出先は、選択した事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所です。提出方法は電子申請、郵送、窓口持参から選べます。
前提が1つあります。「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」が、事業所から提出されていることです。新たに被保険者となる場合は、事業所から資格取得届が提出されているか確認してください。
健康保険組合に加入している事業所を選択した場合は、加入先の健康保険組合にも手続きが必要です。
マイナンバーを記載して提出する場合、マイナンバーが確認できる書類と身元確認書類が必要になります。窓口ならマイナンバーカードの提示、郵送ならカードの表裏両面のコピーなどです。
副業が業務委託・フリーランスの場合|社会保険は増えません

副業が業務委託なら、使用関係がないため社会保険が新たに増えることは原則ありません。雇われない働き方について見ていきます。
前に確認したとおり、厚生年金保険の被保険者になるのは適用事業所に「使用される」人です。日本年金機構はこれを、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係と説明しています。
業務委託契約で報酬を受け取る働き方には、この使用関係がありません。そのため、副業側で社会保険が新たに発生することは原則ありません。本業で厚生年金に加入していれば、その状態が続きます。
| 副業の形 | 社会保険の扱い | 手取りへの影響 |
|---|---|---|
| アルバイト・パート(雇用) | 要件を満たせば副業先でも被保険者になる | 保険料が増える/給付も増える |
| 業務委託(非雇用) | 使用関係がないため原則対象外 | 社会保険料の増加はない |
当サイトが日本年金機構 適用事業所と被保険者(更新日2026年6月26日)の「使用される」の定義にもとづいて整理しました。個別の判断は年金事務所に確認してください。
ただし、契約書の名称だけで決まるわけではありません。年金機構は「雇用契約書の有無などとは関係なく」と書いています。実態が雇用に近ければ、業務委託という名前でも使用関係が認められる余地があるという読み方になります。時間や場所を細かく指示され、業務の進め方の裁量がない働き方は、この論点に触れます。
契約形態で税金も労働時間の扱いも変わる点は、オンライン秘書 副業の始め方で具体例とともに扱いました。
本業を辞めて独立する場合は、話が別になります
会社員をやめて副業だけになる場合は、第2号被保険者ではなくなります。国民年金法第7条の第1号被保険者に移ることになり、国民年金保険料と国民健康保険料を自分で納めることになります。
副業を事業として続けるつもりなら、開業届の話も関わってきます。手順は副業の開業届の出し方にまとめました。
雇用保険はどうなるのか|週20時間未満は対象外です

社会保険と混同されやすい制度です。判定の物差しが違います。
雇用保険法第6条は、適用しない人を列挙しています。第1号が、1週間の所定労働時間が20時間未満である者です。第2号は、同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者。第4号は学校の学生または生徒で一定の者です。
| 制度 | 週20時間の扱い | 契約期間の条件 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 20時間以上が加入の入り口(他の要件も必要) | 2か月以内の期間を定めた雇用は原則除外 |
| 雇用保険 | 20時間未満は適用除外 | 継続31日以上の雇用見込みがなければ適用除外 |
出典: e-Gov法令検索 雇用保険法 第6条/同 厚生年金保険法 第12条。両制度の条文を当サイトが対比しました。副業先が2か所以上ある場合の雇用保険の取り扱いは、当サイトでは条文から確定できなかったため、ハローワークに確認してください。
同じ「20時間」でも意味が反対です。社会保険では20時間以上が加入の入り口、雇用保険では20時間未満が除外の入り口になっています。
65歳以上には、複数の職場を合算できる仕組みがあります
雇用保険法第6条第1号には、括弧書きの例外があります。第37条の5第1項の規定による申出をして高年齢被保険者となる者を除く、という部分です。
つまり週20時間未満でも、申出によって高年齢被保険者になる道が条文上に用意されているということです。複数の職場の時間を合わせて雇用保険に入る、という発想の仕組みです。
当サイトが確認できたのは条文の建て付けまでです。申出の具体的な要件と手続きは、ハローワークに確認してください。
加入すると手取りはどう変わるのか|負担と給付の両面があります
保険料が増える話だけをすると、片側しか見ていないことになります。厚生労働省は、加入のメリットを2つ挙げています。
| 制度 | 加入して増えるもの |
|---|---|
| 厚生年金 | 「基礎年金」に加えて「厚生年金」が受け取れる |
| 健康保険 | 病気やけが、出産のため会社を休んだ場合に収入が保障される |
出典: 厚生労働省 社会保険の加入対象の拡大について(更新日の記載なし・2026年9月4日確認)
厚生労働省は、扶養から外れることを心配する質問への回答でも同じ趣旨を書いています。保険料は発生する。ただし将来受け取れる年金について、基礎年金に加えて厚生年金が終身で支給される、と。健康保険においても、病気やけが、出産で会社を休んだ場合の給付が充実する、としています。
本記事では具体的な金額の試算は行いません。保険料も年金額も標準報酬月額で変わり、当サイトが一般化した数字を出すと誤解を招くためです。厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」に、年金額・保険料のシミュレーションが用意されています。
「週20時間未満に抑える」という選択も一応は成り立ちます
負担を避けたい場合の選択肢も、事実として書いておきます。ただし条件があります。
厚生労働省の説明はこうです。週の所定労働時間が20時間未満であれば、原則として社会保険の加入対象にはなりません。残業等により一時的に労働時間が週20時間以上になったとしても、社会保険には加入しない、と。
ここに続きがあります。週20時間以上で働く状況が2か月を超えて続くようであれば、加入対象となることがあります。一時的な超過と、恒常的な超過は分けて扱われるということです。
「たまたま今月だけ多かった」は問題になりません。「先月も今月も来月も20時間超え」は判定が動きます。
週20時間を境に、保険料も将来の年金も変わります。副業のシフトを決める前に、契約書の所定労働時間の欄を確認してください。
副業を始める前に確認したい4点
ここまでの内容を、着手前のチェックに落とし込みます。順番に見ていけば、自分がどうなるかの見当がつきます。
1. 契約が「雇用」か「業務委託」かを確認する
まずここです。雇用なら社会保険の判定に入りますが、業務委託なら原則として判定に入りません。契約書の表題だけでなく、業務の指示のされ方まで見てください。
2. 労働条件通知書の「週の所定労働時間」を見る
実際に働いた時間ではなく、契約上の所定労働時間で判定されます。週20時間という線がどちら側にあるかを確認してください。シフト制で記載が不明確な場合、扶養認定の新しい取り扱いも使えなくなります。
3. 副業先の従業員数を確認する
厚生年金保険の被保険者が51人以上かどうかです。2027年10月からは36人以上に下がります。人数が足りなくても、任意特定適用事業所になっていれば加入対象です。求人票では分からないため、面接時に聞くのが確実です。
4. 本業ですでに加入しているかを確認する
本業で厚生年金に入っている人が、副業先でも要件を満たしたとき。この場合は二以上事業所勤務届が必要になります。この届出は本人が10日以内に出すものです。会社任せにしていると期限を過ぎます。
よくある質問
副業の収入が年130万円未満なら、社会保険に入らなくて済みますか
いいえ。日本年金機構は「年収が130万円未満であっても、4分の3基準または4要件を満たした場合は、厚生年金保険・健康保険の被保険者となります」と明記しています。130万円は扶養に入り続けられるかの基準であり、自分が被保険者になるかどうかの基準ではありません。
副業がクラウドソーシングの業務委託なら、保険料は増えますか
原則として増えません。厚生年金保険の被保険者になるのは適用事業所に「使用される」人で、年金機構はこれを労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係と説明しています。業務委託にはこの使用関係がありません。ただし年金機構は「雇用契約書の有無などとは関係なく」とも書いており、実態で判断されます。
本業と副業の両方で加入対象になったら、保険料は二重に取られますか
二重にはなりません。それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定し、その保険料額を各事業所の報酬月額に基づいて按分します。ただし本人が事実発生から10日以内に「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
月8.8万円の条件はいつ撤廃されますか
日本年金機構のページには「この要件は令和8年10月に撤廃予定です」と書かれています。令和8年10月は2026年10月です。一方、厚生労働省は「法律の公布から3年以内で、全国の最低賃金が1,016円以上となることを見極めて判断します」としており、時期を断定していません。当サイトでは両方の記述を並べて示すにとどめ、時期の断定は避けています。
勤務先が小さい会社なら、週20時間以上でも入らずに済みますか
現時点では、厚生年金保険の被保険者が51人以上の特定適用事業所等でなければ短時間労働者は対象外です。ただし2027年10月から36人以上に引き下げられ、2029年10月以降も段階的に拡大されます。また、規模が足りなくても事業主の申し出により任意特定適用事業所となっている場合は加入対象です。
学生でも副業で社会保険に入りますか
入ることがあります。理由は2つです。1つは働く量で、日本年金機構は、学生であっても4分の3基準を満たす場合は一般被保険者として被保険者となる、と回答しています。もう1つは「学生」の範囲です。卒業後も引き続き同じ事業所に使用されることとなっている者、休学中の者、定時制課程および通信制課程に在学する者などは、学生でも対象になります。
2か月だけの短期バイトなら加入しませんか
2か月以内の期間を定めて使用される人は原則として被保険者とされません。ただし日本年金機構は例外を示しています。当初の雇用期間が2か月以内であっても、その期間を超えて雇用されることが見込まれる場合は、契約当初から被保険者となる、と。更新の見込みがあるかどうかで結論が変わります。
雇用保険にも入ることになりますか
社会保険とは別の判定です。雇用保険法第6条第1号は、1週間の所定労働時間が20時間未満である者を適用除外としています。同条第2号では、同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者も除外されます。条件が異なるため、片方だけ加入することもあります。副業先が2か所以上ある場合の取り扱いは、ハローワークに確認してください。
保険料が増えるだけで、得はないのですか
厚生労働省は2点を挙げています。厚生年金に加入すると基礎年金に加えて厚生年金が受け取れること。健康保険に加入すると、病気やけが、出産のため会社を休んだ場合に収入が保障されることです。また、従業員数50人以下の企業などで新たに加入対象となり標準報酬月額が12.6万円以下の場合、3年間の保険料調整の措置が用意されています。
会社に副業がバレる経路になりますか
複数事業所で加入した場合、決定した標準報酬月額および保険料額が、選択した事業所を管轄する事務センターからそれぞれの事業所へ通知されます。合算後の数字が両方の会社に届く仕組みです。住民税とは別の経路になります。
一時的に週20時間を超えてしまったらどうなりますか
厚生労働省の説明はこうです。週の所定労働時間が20時間未満であれば、残業等により一時的に労働時間が週20時間以上になったとしても、社会保険には加入しない、と。ただし週20時間以上で働く状況が2か月を超えて続くようであれば加入対象となることがある、とも書かれています。
「自分のケースだとどう進めればいい?」と迷ったら、営業×PMの実務経験者が1対1で伴走する個別相談をご利用ください。60分で方向性と最初の一手が決まります。
まとめ
副業の社会保険は、年収ではなく働き方の形で決まります。
判定の順番は決まっています。まず雇用か業務委託か。雇用なら4分の3基準。それに届かなければ、週20時間・学生でない・月8.8万円という3つの要件と、勤務先の規模です。
| 覚えておくこと | 内容 |
|---|---|
| 加入の分かれ目 | 年収130万円ではなく、週の所定労働時間20時間 |
| 130万円の意味 | 扶養に入り続けられるかの基準。加入判定とは別物 |
| 賃金要件 | 月8.8万円。年金機構は令和8年10月に撤廃予定と記載、厚労省は最低賃金を見極めて判断と記載 |
| 企業規模要件 | 現在51人以上。2027年10月から36人以上、2029年10月以降も段階的に拡大 |
| 2か所で加入したら | 本人が10日以内に二以上事業所勤務届。報酬を合算して按分 |
| 業務委託の副業 | 使用関係がないため原則として社会保険は増えない |
制度が動いている最中のテーマです。今日の判断が、来年には変わります。だからこそ、公式ページの更新日を見る習慣が効きます。情報の鮮度を自分で確かめられるからです。
次の一手は決まっています。手元の労働条件通知書を開いて、週の所定労働時間の欄を見てください。そこに書かれた数字が20時間より上か下かで、これから起きることが変わります。
税金の側の準備は、副業の確定申告のやり方と副業の源泉徴収にまとめています。あわせて読むと、副業を始めたあとに来る手続きの全体像がつかめます。
週20時間か、それ未満か。決めてから副業先を選ぶと、あとで慌てずに済みます。

