民泊副業【2026年】180日は4月1日正午からです

副業
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営業職として10年間活動、某営業会社で2000人中2位、プライム上場企業にて年間TOPセールスなどを経て、サービス開発をするためにPDMにジョブチェン、現在進行形でPM/PDMをしています。上場企業の昇進レースに見切りをつけ、副業として業務委託でPM/PDM/PMOを複数案件並列で兼務、副業が年収1,000 万を突破したので、ナレッジを「会社の外で稼ぐ PM スキルの循環」をテーマに、テンプレ・講座・コミュニティで同世代の跳躍を支援しています。

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使っていない部屋を貸せないか、と考えて180日という数字を見つけた人が、たいてい自治体とマンションの2語で止まります。180日は国が置いた天井で、天井の下で実際に何日できるかを決めるのは国ではありません。そして180日の「1年間」は、暦年でも年度でもなく4月1日の正午からです。

ユイカ(副業初心者)
空いてる部屋を民泊にしたいんですけど…年180日までって聞いて、それなら半分は使えるしいけるかなって。でも調べたら自治体とかマンションとか出てきて、もう分からなくなっちゃって…

リンク(運営者)
そこで止まるの、すごく分かります。結論から言うと、180日は国が置いた天井だけなんですよ。実際に何日できるかは、国じゃない人が決めます。

ユイカ(副業初心者)
えっ、国が決めてないんですか?じゃあ誰が…

リンク(運営者)
都道府県か市、マンションの管理組合、それに大家さんです。この3つのどれか1つが「だめ」と言ったら、その物件は0日になります。順番に見ていきますね。

この記事でわかること

  • 180日の起点が4月1日の正午であること(施行規則第3条)
  • 1日の区切りが正午で、1泊2日は1日として数えること
  • 条例は「やってよい日数」ではなく「やってはいけない期間」を指定する形式であること(施行令第1条第1号)
  • 2026年7月15日の技術的助言で、条例による年間365日の禁止が可能になったこと
  • その制限が既存の届出住宅にも猶予期間つきで及びうること
  • 管理規約に禁止の定めがなくても、管理組合の意思を確認した書類が要ること(施行規則第4条第3項第13号)
  • 賃貸なら承諾書1通、転貸なら承諾書2通が必要であること
  • 居室が6室以上、または不在が1時間を超えると管理業者への委託が義務になること
  • 委託すると6つの義務が自分から法律上消えること(法第11条第2項)
  • 定期報告が偶数月の15日までで、しなければ30万円以下の罰金であること
  • 所得が原則として雑所得で、赤字を給料と通算できないこと(国税庁情報)
  • 届け出た6万5,837件のうち2万3,767件が既に廃止されていること(観光庁・2026年7月15日時点)

ここから先は、調べ方と未解決の論点を先に開示します。制度の中身は目次のあとから始まります。

この記事の調べ方(編集方針)

本記事の調査で埋まらなかった論点

今回当たったのは、住宅宿泊事業法、同法施行令、同法施行規則、旅館業法、同法施行令、国家戦略特別区域法、同法施行令、消費税法(いずれもe-Gov法令検索の現行条文)、住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)、観光庁の2026年7月15日付技術的助言、観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」、国税庁「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」、Airbnbの公式ヘルプです。そのうえで、次の点は確認できませんでした。

  • 消防法令適合通知書の扱い。施行規則第4条第4項が列挙する添付書類に消防法令適合通知書は含まれていません。自治体が運用で求めているかどうかは、横断的な資料を確認できませんでした。窓口で聞いてください。
  • ゼロ日規制を実際に定めた条例の有無。2026年7月15日の通知から本記事の調査日まで2か月半しか経っておらず、条例の制定状況を網羅した公的資料を確認できませんでした。
  • 1件あたりの平均的な宿泊料と稼働日数。観光庁の施行状況は日数と宿泊者数を公表していますが、宿泊料の分布を確認できませんでした。
  • 住宅宿泊管理業者へ委託する場合の委託料の相場。公定価格がなく、公式に料率を公開している事業者を横断的に特定できませんでした。
  • 副業として届出をしている個人の件数。施行状況は法人と個人を分けて公表していません。
  • 「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」の判定基準。施行規則第2条第3号の文言は確認できましたが、何日以上の居住が必要かという数値基準を公式資料に確認できませんでした。

遊休資産を貸す副業としては、スペースマーケットの副業とインスタベースの副業も別にまとめてあります。どちらも時間貸しです。時間貸しと民泊を分けているのは「寝具を使わせるかどうか」の一点です。この記事は、寝具を置いた側の話に絞ります。

目次

  1. 結論:180日は天井で、日数を決めるのは4者です
  2. 民泊は届出、旅館業は許可です
  3. 「宿泊」は寝具を使うことです
  4. 住宅と呼べる家屋は3類型です
  5. 180日は4月1日の正午から数えます
  6. 条例は「やってはいけない期間」を指定します
  7. 2026年7月に国の見解が変わりました
  8. 管理組合にも決定権があります
  9. 賃貸と転貸では承諾書の枚数が違います
  10. 届出は開始日の前日までです
  11. 届出書の記載事項を数えます
  12. 欠格事由は8つあります
  13. 届出のあとに来る義務は6つです
  14. 消防の確認は届出の前です
  15. 宿泊者名簿には職業を書きます
  16. 説明するのは騒音とごみと火災です
  17. 苦情対応に営業時間はありません
  18. 居室が6室以上なら委託が必要です
  19. 不在が許されるのは原則1時間です
  20. 隣に住んでいれば委託は要りません
  21. 委託すると義務が自分から消えます
  22. 標識の様式は管理の形で変わります
  23. 定期報告は偶数月の15日までです
  24. 予約の代理を頼める相手は2種類です
  25. 180日を超えるなら33平方メートルです
  26. 特区民泊は3日以上の賃貸借です
  27. 所得は原則として雑所得です
  28. 宿泊税は預かって納めます
  29. 手数料3%と15.5%は同じことです
  30. 初期費用は見積もりを取る項目です
  31. 手取りを計算します
  32. 罰則は5段階に分かれています
  33. 辞めた人がつまずく場所
  34. 届け出た人の36%は辞めています
  35. 住宅宿泊事業法の外にある法令
  36. 始める前に確認する5つのこと
  37. 今日やること
  38. よくある質問
  39. まとめ
目次

結論:180日は天井で、日数を決めるのは4者です

民泊でできる日数を決める4つの主体と、それぞれがゼロにできる場面を並べた比較図

民泊でできる日数は、4つの主体がそれぞれ別の根拠で決めます。

多くの解説記事は「許可ではなく届出なので始めやすい。ただし年間180日まで」と書きます。前半は正しいです。後半は、正しいけれど足りません。

先に1語だけ置きます。条文に何度も出てくる保健所設置市等は、保健所を置いている市と特別区のことです。政令指定都市や中核市が当たります。物件がその区域にあるかどうかで、届出の窓口と条例を決める主体が都道府県から市区に変わります。

天井を置くのは国です。天井を下げるのは、都道府県か市区、管理組合、そして賃貸人です。このうち1つがゼロと言えば、その物件は0日になります。

そして2026年に大きな変更がありました。2026年7月15日、技術的助言が地方公共団体に発出されました。条例で年間365日の禁止(ゼロ日規制)を認める内容です。2017年のガイドラインが「適切ではない」としてきた運用が、9年目に反転しました。

国が置いた上限は180日です。住宅宿泊事業法第2条第3項が、この事業を定義しています。「人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないもの」です。180日を超えた瞬間、その事業は住宅宿泊事業ではなくなります。

ただし180日は上限であって、権利ではありません。下の4者のうち1つでも禁止すれば、その物件でできる日数はゼロになります。

決める主体 根拠 決められること
国 法第2条第3項 年間180日という天井
都道府県・保健所設置市等 法第18条・施行令第1条 区域ごとに実施してはならない期間
管理組合 施行規則第4条第3項第13号 区分所有建物での実施の可否
賃貸人・転貸人 施行規則第4条第3項第11号・第12号 借りている住宅での実施の可否

この4者は互いに上書きしません。全部が「よい」と言ったときだけ、届出が受理されます。

届出という言葉から、紙を出せば終わる手続きを想像するかもしれません。実際には、上の3者から得た書類を添えないと届出書が完成しません。許可制ではないのに、書類が揃うまで事業を始められない構造になっています。

日数を決めるのはこの4者です。そのうえで、日数とは別に計画を止める相手が2つあります。消防署と、自宅にローンがある場合の金融機関です。どちらも住宅宿泊事業法の外にあります。

賃貸マンションに住んでいる方は、承諾書の枚数だけ先に読んでください。話が早く終わります。

民泊は届出、旅館業は許可です

同じ「人を泊めて金銭を受け取る」行為が、2つの制度に分かれています。

旅館業法第3条第1項は「旅館業を営もうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない」と定めています。許可です。審査があり、構造設備の基準を満たさないと下りません。

住宅宿泊事業法第3条第1項は、この許可を外す条文です。原文を引きます。

> 都道府県知事(中略)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。

> (住宅宿泊事業法第3条第1項)

「かかわらず」が効いています。届出をすれば、旅館業の許可を受けずに人を泊められます。

届出は審査ではありません

届出に対する知事の権限は、受理と届出番号の通知です。施行規則第4条第7項は「都道府県知事は、第一項の届出があったときは、届出者に、届出番号を通知しなければならない」と書いています。裁量で拒否する条文はありません。

かわりに、欠格事由に当たる人は「営んではならない」という形で外されます。この構造は後で詳しく見ます。

逆向きの排除もあります

旅館業の許可を持っている人は、住宅宿泊事業者になれません。法第2条第3項が、この事業を営む者を「旅館業法第三条の二第一項に規定する営業者以外の者」と限定しています。

項目 住宅宿泊事業(民泊) 旅館業(簡易宿所など)
手続き 届出 許可
日数の上限 年間180日 なし
使える家屋 住宅に限る 施設を設ける
学校周辺の規制 条文なし おおむね100メートル
面積の基準 居室の床面積が宿泊者1人当たり3.3平方メートル 客室の延床面積33平方メートル(簡易宿所)
宿泊を断ること 制限する条文なし 旅館業法第5条で制限
両方の兼営 できない できない

延床面積の下限がないことと、学校周辺の規制がないことは、民泊のほうが緩い部分です。かわりに居室の床面積に応じた宿泊者数の制限が乗ります。1人当たり3.3平方メートルです。そして180日の天井と条例の制限も乗っています。

「宿泊」は寝具を使うことです

法律上の「宿泊」を決めているのは、時間ではなく寝具です。

住宅宿泊事業法第2条第2項は「この法律において『宿泊』とは、寝具を使用して施設を利用することをいう」と定めています。旅館業法第2条第5項も、同じ言い回しで「宿泊」を定義しています。2つの法律が同じ定義を共有しています。

深夜に6時間使わせても、寝具を出さなければ宿泊ではありません。逆に昼間の2時間でも、寝具を使わせれば宿泊です。

時間貸しのプラットフォームが寝具を嫌う理由

レンタルスペースの掲載規約には、寝具の設置を禁じる条項がよく置かれています。時間貸しの仲介は住宅宿泊仲介業の登録を受けていません。寝具があると、違法民泊の仲介になってしまいます。

この構造は、スペースマーケットの副業の記事で規約の原文を引いて整理しています。同じ部屋を貸す副業でも、布団を1組置くかどうかで適用される法律が入れ替わります。

貸し方 寝具 適用される制度
時間貸しのレンタルスペース 置かない 住宅宿泊事業法の外
民泊 置く 住宅宿泊事業法(届出)
ホテル・簡易宿所 置く 旅館業法(許可)
1か月以上の単位で貸す 置く 旅館業法の下宿営業(許可)

最後の行は見落としやすい部分です。旅館業法第2条第4項の「下宿営業」は、「施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」です。1か月単位にすれば規制を外れる、という話ではありません。別の許可に移ります。

住宅と呼べる家屋は3類型です

民泊に使える住宅の3類型と、住宅に当たらない家屋を可否で並べたリスト図

民泊に使える家屋は、法律上「住宅」に限られます。空き家であれば何でもよいわけではありません。

法第2条第1項は、2つの要件をどちらも満たす家屋を「住宅」と呼びます。1つは設備、もう1つは使われ方です。

設備は4つです

施行規則第1条が挙げる設備は、台所、浴室、便所、洗面設備の4つです。この4つが設けられていなければ、そもそも住宅に当たりません。

浴室はシャワールームでも足りるのかという疑問が出ます。条文は「浴室」としか書いていません。判断は窓口に確認してください。

使われ方は3類型です

施行規則第2条が、人の居住の用に供されていると認められる家屋を3つに限定しています。原文を引きます。

> 一 現に人の生活の本拠として使用されている家屋

> 二 入居者の募集が行われている家屋

> 三 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

> (住宅宿泊事業法施行規則第2条)

そして同条は、この3類型に当たるものであって「事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く。)の用に供されていないもの」と重ねて絞っています。

類型 典型例 必要な添付書類
第1号:生活の本拠 自宅の空き部屋 (追加書類なし)
第2号:入居者募集中 賃貸募集をかけている空室 募集の広告など募集中を証する書類
第3号:随時居住 別荘、セカンドハウス 随時居住していることを証する書類

第2号は抜け道に見えます。募集をかけたまま民泊に回せば、常に住宅として扱われるのではないか。実際には募集中であることを証する書類が要り、家賃と条件を伴う本気の募集でなければ通りません。

事務所として使っている部屋を民泊に回す場合も、第2号か第3号の形を作る必要があります。「使っていない部屋」ではなく「居住の用に供されている部屋」でなければ届出はできません。

180日は4月1日の正午から数えます

180日の起点と1日の区切り、数える対象を4段階で示した手順図

180日の起点は、1月1日でも4月1日の午前0時でもありません。

住宅宿泊事業法施行規則第3条が、算定方法を定めています。この条文が本記事でいちばん驚いた箇所です。原文を引きます。

> 法第二条第三項の国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数は、毎年四月一日正午から翌年四月一日正午までの期間において人を宿泊させた日数とする。この場合において、正午から翌日の正午までの期間を一日とする。

> (住宅宿泊事業法施行規則第3条)

読み取れることが3つあります。順に見ます。

起点は4月1日の正午です

年度でも暦年でもありません。4月1日の正午が区切りです。3月31日の正午から4月1日の正午までの1日は、前の期間に入ります。

4月1日の朝から泊まっているゲストがいる場合も同じです。その1日は前の期間として数えます。

1年が365個の枠に分かれます

この条文は、1年を正午区切りの「枠」に切っていると読めます。枠の数は365個(うるう年は366個)です。そのうち宿泊者がいた枠の数が180を超えてはいけません。

数え方は枠を単位にします。宿泊が1つの枠に収まれば1日、2つの枠にかかれば2日です。

滞在の形 かかる枠 数える日数
15時イン→翌10時アウト 1枠に収まる 1日
15時イン→翌々10時アウト 2枠にかかる 2日
22時イン→翌11時アウト 1枠に収まる 1日
13時イン→翌13時アウト 2枠にかかる 2日

1行目が一般的な1泊2日です。15時から翌10時までは、どちらも同じ枠の中に収まります。1泊2日は1日です。

レイトチェックアウトは1日多く使います

4行目に注意してください。チェックアウトを正午より後にすると、次の枠に入ります。宿泊日数が1日増えます。

1泊で2日を消費する形になるため、180日の設計に直接効きます。条文の文言から素直に読める結論ですが、金額にも日数にも影響します。届出の前に窓口で確認してください。

数えるのは「宿泊させた日数」です

ガイドラインは、この点をはっきり書いています。原文を引きます。

> 日数の算定については、宿泊料を受けて届出住宅に実際に人を宿泊させた日数について算定するのであって、宿泊料を受けた日数や宿泊者を募集した日数ではない。

> (住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)・令和6年12月24日最終改正)

掲載しただけの日、予約が入らなかった日は数えません。実際に人が泊まった日だけを数えます。

同じ日に別のグループが2組泊まっても1日です。ガイドラインは、複数の住戸を1つの届出住宅として届け出ている場合も同じ扱いになると書いています。

180日をフルに使う計画を立てる前に、条例の仕組みを読んでください。天井より低い線が引かれている区域があります。

条例は「やってはいけない期間」を指定します

条例が制限するのは日数ではありません。期間です。

法第18条は、都道府県(または保健所設置市等)に制限の権限を与えています。原文を引きます。

> 都道府県(中略)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。

> (住宅宿泊事業法第18条)

そして施行令第1条が、条例の作り方を3つの基準で縛っています。第1号が形式を決めています。

> 一 法第十八条の規定による制限は、区域ごとに、住宅宿泊事業を実施してはならない期間を指定して行うこと。

> (住宅宿泊事業法施行令第1条第1号)

引き算ではなく期間の指定です

条例は「年間60日まで」という書き方をしません。「この区域では月曜から木曜は実施してはならない」という形で書きます。曜日の指定と、季節の指定。どちらの形も取れます。

結果として日数が減りますが、減り方は曜日や季節の形で決まります。180日から120日を引くのではなく、カレンダーに禁止の帯が引かれるイメージです。

条例の書き方 実際に営業できる形
平日は実施してはならない 金土日だけ営業できる
4月から10月は実施してはならない 11月から3月だけ営業できる
住居専用地域では通年実施してはならない その地域では0日

3行目が、2026年7月に論点になった「ゼロ日規制」です。

区域と期間の両方に理由が要ります

施行令第1条第2号は、区域の指定を「土地利用の状況その他の事情を勘案して(中略)生活環境の悪化を防止することが特に必要である地域内の区域」に限っています。第3号は、期間の指定を「宿泊に対する需要の状況その他の事情を勘案して(中略)特に必要である期間内」に限っています。

区域の理由と期間の理由は別に必要です。どちらも「特に必要である」という重い条件が付いています。

市町村の意見を聴きます

施行規則第14条が置いているのは、都道府県が条例を定めようとする場合の手続です。「あらかじめ、当該都道府県の区域内の市町村の意見を聴くよう努めなければならない」という努力義務です。努力義務です。

条例を作る主体が都道府県でも、実際の生活環境を知っているのは市町村です。条文はその距離を埋めようとしています。

ユイカ(副業初心者)
ぶっちゃけ、条例なんて自分の区にはないだろうと思ってました…

リンク(運営者)
その前提が2026年に崩れました。7月に、条例で年間365日禁止してもいい、という技術的助言が出ています。8年以上「それはだめ」としてきた運用が反転した形です。窓口への電話が最初の一手になります。

2026年7月に国の見解が変わりました

民泊の副業を検討している人が2026年に読むべき資料は、法律ではなく1通の通知です。

「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」が2026年7月15日に地方公共団体へ発出されました。厚生労働省健康・生活衛生局生活衛生課長、国土交通省不動産・建設経済局不動産業課長、観光庁観光産業課長の3課長連名です。ゼロ日規制とは、条例で年間365日の実施を禁止することです。

従来は「適切ではない」とされていました

報道発表資料は、これまでの運用を1行で示しています。2017年12月のガイドラインでは、ゼロ日規制について「適切ではない」としてきた、と明記されています。

9年近く続いた「実質的な全面禁止はできない」という前提が、2026年7月に外れました。

可能になる場合は2つ示されています

通知は、条件を付けて可能性を認めています。前提は、今後住宅宿泊事業の実施が拡大することが見込まれる場合です。そのうえで2つの場合が挙げられています。

1つは環境です。住宅地や教育施設等の周辺が対象です。制限を行わなければ、宿泊者の頻繁な往来によって住宅地の静穏な居住環境や教育施設等の清純な環境が損なわれるおそれがある場合です。

もう1つは人です。住宅地などにおいて、制限を行わなければ定住人口や地域コミュニティーの維持が困難になるおそれがある場合です。

どちらも、合理的に必要と認められる限度において行うことが可能であるという整理になっています。

さらに強い必要性がある場合の記述が続きます。既存の届出住宅に対しても、一定の猶予期間を設けた上で制限することが認められています。

これは副業として始める人にとって重い情報です。届出をして設備を揃えたあとに、条例で禁止される道が開いています。

時期 ゼロ日規制の扱い 既存の届出住宅
2017年12月〜2026年7月 適切ではない 対象にする想定なし
2026年7月15日以降 条件付きで可能 猶予期間つきで制限しうる

ICTによる管理も条例で義務づけられます

通知はもう1つの論点を含んでいます。騒音計や出入口のカメラを設置してモニタリングを行う、という内容です。一定期間(過去1年間分など)のデータ保存も、条例で義務づけることが考えられるとしています。

騒音計とカメラは初期費用です。条例が求める区域では、空き部屋を貸すだけの副業ではなくなります。

この記事を読んだあとに必ずやること

条例は自治体ごとに違い、2026年7月の通知を受けて今後変わります。物件の所在地を管轄する都道府県か保健所設置市等の窓口で、最新の条例を確認してください。本記事は個別の自治体名を挙げません。挙げた時点で古くなるためです。

条例が確認できたら、次は管理組合と賃貸人です。この2つで止まる物件のほうが多いです。

管理組合にも決定権があります

分譲マンションの一室で民泊をする場合、届出の前に管理組合の側を片付ける必要があります。

施行規則第4条第3項第13号が、届出書の記載事項として求めているものを見てください。原文を引きます。

> 十三 住宅がある建物が二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものである場合においては、規約に住宅宿泊事業を営むことを禁止する旨の定めがない旨(当該規約に住宅宿泊事業を営むことについての定めがない場合は、管理組合(中略)に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がない旨を含む。)

> (住宅宿泊事業法施行規則第4条第3項第13号)

「書いていない」では足りません

括弧の中が肝心です。規約に民泊の記載が一切ない場合、「禁止する意思がない」ことを管理組合に確認しなければなりません。沈黙は許可と同じではありません。

そして施行規則第4条第4項ルは、その確認を書類で出させます。管理組合に禁止する意思がないことを確認したことを証する書類です。

規約の状態 必要な対応 添付書類
禁止する定めがある 民泊はできない —
民泊を認める定めがある 規約の写しを出す 専有部分の用途に関する規約の写し
何も書いていない 管理組合に意思を確認する 規約の写し+確認したことを証する書類

3行目が実務でつまずく行です。理事会に説明して、禁止する意思がないことを文書でもらう必要があります。総会の議決を求められることもあります。

規約の変更は出席者の4分の3です

区分所有建物の規約は、集会の決議で変更できます。建物の区分所有等に関する法律第31条第1項が要件を定めています。

> 規約の設定、変更又は廃止は、集会において、区分所有者(中略)の過半数(中略)の者であつて議決権の過半数(中略)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数による決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

> (建物の区分所有等に関する法律第31条第1項)

引用したのは2026年4月1日に施行された改正後の条文です。改正前の解説と数え方が違うため、古い記事と照らし合わせると混乱します。

読み方に注意が必要です。4分の3は「出席した区分所有者」の4分の3です。全戸の4分の3ではありません。出席者が少ない集会では、少数で規約が変わります。

後段も読んでおいてください。すでに民泊を営んでいる区分所有者に対して禁止の規約を新設する場合、それが「特別の影響」に当たるなら承諾が必要になります。当たるかどうかは争いのある論点で、本記事では確定した扱いを確認できませんでした。弁護士に相談する領域です。

管理規約が後から変わることもあります

届出のあとに規約が改正されて民泊が禁止されれば、その物件では続けられません。

条例と同じ構造です。始めた時点の適法性が、続けられることを保証しません。

賃貸と転貸では承諾書の枚数が違います

借りている部屋で民泊をする場合、必要な承諾書の数が立場で変わります。

施行規則第4条第3項の第11号と第12号が、この差を作っています。

> 十一 届出をしようとする者が賃借人である場合においては、賃貸人が住宅宿泊事業の用に供することを目的とした賃借物の転貸を承諾している旨

> 十二 届出をしようとする者が転借人である場合においては、賃貸人及び転貸人が住宅宿泊事業の用に供することを目的とした転借物の転貸を承諾している旨

> (住宅宿泊事業法施行規則第4条第3項第11号・第12号)

転借人は2通です

賃借人なら賃貸人から1通です。転借人(サブリースの借り手など)は、賃貸人と転貸人の両方から承諾が必要です。合計2通になります。

施行規則第4条第4項のチとリが、この承諾を書面で出させています。口頭の了解では届出書を完成できません。

立場 承諾をもらう相手 承諾書の枚数
一戸建ての所有者 なし 0通
分譲マンションの所有者 管理組合 管理組合の確認書
賃貸マンションの賃借人 賃貸人 1通
分譲マンションの賃借人 賃貸人と管理組合 1通+管理組合の確認書
転借人 賃貸人と転貸人 2通

4行目が見落とされやすい組み合わせです。分譲マンションを借りている場合、大家さんの承諾書と管理組合の確認書の両方が必要になります。

「転貸」の承諾であることに意味があります

条文は「住宅宿泊事業の用に供することを目的とした転貸を承諾している旨」と書いています。一般的な転貸の許可ではありません。民泊に使うという目的を明示した承諾でなければ足りません。

賃貸借契約書に「転貸を禁ずる」とだけ書かれた物件を考えます。大家さんに口頭で聞いて「いいよ」と言われた、では書類になりません。用途を書いた承諾書を作ってもらう必要があります。

ここで多くの人の計画が止まります。賃貸で民泊を始めるハードルは、法律ではなく大家さんです。

届出は開始日の前日までです

届出の時期は、省令が1行で決めています。

施行規則第4条第1項は「法第三条第一項の届出は、住宅宿泊事業を開始しようとする日の前日までに、第一号様式による届出書を提出して行うものとする」と定めています。

前日までです。許可のように審査期間を待つ構造にはなっていません。書類が揃っていれば、前日に出して翌日から始められる建前です。

提出先は民泊制度運営システムです

条文は「届出書を提出して」としか書いていません。実務の窓口はオンラインです。観光庁が用意した民泊制度運営システムから届出でき、後で見る定期報告も同じシステムから出します。

そして多くの自治体が、届出の前に事前相談を求める運用をしています。前日までという期限は法令上の下限であって、実務の所要期間ではありません。事前相談から届出番号の通知まで、数週間を見込んでください。

実務では書類の準備が時間を食います

前日まででよいのは届出書の提出です。添付書類は前日までに揃っていなければなりません。管理組合の確認書、賃貸人の承諾書、住宅の登記事項証明書、市町村長の証明書などが並びます。

準備するもの 取得先 時間がかかる度合い
住宅の図面 自作または業者 中
登記事項証明書 法務局 小
破産手続開始の決定を受けていない旨の証明書 市町村長 小
管理組合の確認書 管理組合・理事会 大
賃貸人の承諾書 賃貸人 大
誓約書 自作 小

下の2行が読めない要素です。理事会が月1回しか開かれない建物では、そこが実質的な締め切りになります。

変更と廃業の期限は別です

始めるときの期限と、変わったときの期限は違います。ここを混ぜると罰則の種類まで変わります。

届出の種類 期限 根拠
事業開始の届出 開始の前日まで 施行規則第4条第1項
氏名・住所などの変更 変更から30日以内 法第3条第4項
管理業者の変更 あらかじめ 法第3条第4項
廃業・死亡・解散 その日から30日以内 法第3条第6項

管理業者の変更だけ「あらかじめ」です。事後ではありません。委託先を変えるときは、変える前に届け出ます。

届出書の記載事項を数えます

届出書に何を書くかは、法律と省令の2段階で決まっています。

法第3条第2項が7号を挙げ、そのうち第6号と第7号を省令に投げています。施行規則第4条第2項が第6号を3つに、第3項が第7号を13に展開します。

法律側の7号

号 記載事項
1 商号、名称又は氏名及び住所
2 法人の場合は役員の氏名
3 未成年者の場合は法定代理人の氏名及び住所
4 住宅の所在地
5 営業所又は事務所を設ける場合はその名称及び所在地
6 委託する場合は管理業者の情報など(省令で3項目)
7 その他省令で定める事項(省令で13項目)

省令が足す13項目

施行規則第4条第3項の13号のうち、副業で始める人が引っかかりやすいものを挙げます。

第6号は住宅の不動産番号です。登記情報から取ります。第7号は施行規則第2条各号の家屋の別、つまり3類型のどれかです。第8号は一戸建ての住宅、長屋、共同住宅、寄宿舎の別です。第9号は住宅の規模です。

第10号が独特です。宿泊させる間に不在とならない場合は、その旨を書きます。不在にならないことを申告する欄があるということは、不在かどうかが制度上の分岐点だという意味です。

第11号から第13号が、前の2つのH2で見た承諾と管理組合の項目です。

図面には床面積を3種類書きます

施行規則第4条第4項トが、図面に明示する事項を4つ挙げています。台所・浴室・便所・洗面設備の位置、間取りと出入口、各階の別、そして床面積です。

床面積は1つではありません。居室、宿泊室、宿泊者の使用に供する部分(宿泊室を除く)の3つを分けて書きます。

区分 意味
居室 法第5条にいう居室(衛生確保の対象)
宿泊室 宿泊者の就寝の用に供する室
宿泊者の使用に供する部分 宿泊室を除く、宿泊者が使う部分

3つに分けるのは、法第5条の宿泊者数の制限が居室の床面積に応じて決まるためです。図面の段階で、受け入れられる人数が決まります。

書類は省略されることがあります

施行規則第4条第6項は「都道府県知事は、特に必要がないと認めるときは、この規則の規定により届出書に添付しなければならない書類の一部を省略させることができる」と定めています。

省略の権限は知事側にあります。自分の判断で減らすことはできません。

欠格事由は8つあります

届出は審査されませんが、営んではならない人が法律で定められています。

法第4条は「次の各号のいずれかに該当する者は、住宅宿泊事業を営んではならない」として8号を並べています。届出を拒否する形ではなく、営むことを禁じる形です。

号 欠格事由 期間
1 心身の故障により的確に遂行できない者 —
2 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 復権まで
3 廃止を命ぜられた者 命令の日から3年
4 拘禁刑以上の刑、またはこの法律・旅館業法違反の罰金 執行終了から3年
5 暴力団員または元暴力団員 やめた日から5年
6 行為能力の制限を受けた未成年者で法定代理人が該当 —
7 法人で役員が第1号から第5号に該当 —
8 暴力団員等が事業活動を支配する者 —

第4号の読み方に注意してください。拘禁刑以上ならすべての犯罪が対象ですが、罰金刑はこの法律と旅館業法の違反に限られます。他の法律の罰金は欠格事由になりません。

第1号の中身は施行規則第6条の2が定めています。精神の機能の障害により、必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者です。

誓約書で申告します

施行規則第4条第4項ワとハが、欠格事由に該当しないことを誓約する書面を求めています。役所が調べるのではなく、本人が誓約する形です。

虚偽の届出には罰則があります。法第73条第1号は、虚偽の届出をした者を6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処し、併科できると書いています。届出の中でいちばん重い罰則が、この虚偽です。

届出のあとに来る義務は6つです

非常用照明器具の設置が不要になる条件と必要になる条件を可否で並べたリスト図

届出が受理されると、法律上の義務が6つ発生します。

法第5条から第10条までが並んでいます。順に見ます。

条 義務 内容
第5条 衛生の確保 宿泊者1人当たり3.3平方メートル、定期的な清掃及び換気
第6条 安全の確保 非常用照明器具の設置、避難経路の表示
第7条 外国人への快適性・利便性 設備の使用方法の外国語案内、交通手段の情報提供
第8条 宿泊者名簿 備付け、記載、知事の要求があれば提出
第9条 生活環境への悪影響の防止の説明 騒音の防止など、外国人には外国語で
第10条 苦情等への対応 周辺住民からの苦情と問合せに適切かつ迅速に

この6つが、次のH2で見る「委託すると消える義務」の中身です。

衛生の中身は3.3平方メートルです

法第5条は中身を厚生労働省令に投げています。厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則は条が分かれておらず、1文で2つを定めています。

> 一 居室の床面積は、宿泊者一人当たり三・三平方メートル以上を確保すること。

> 二 定期的な清掃及び換気を行うこと。

> (厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則)

受け入れられる人数は、居室の床面積を3.3平方メートルで割った数です。16.5平方メートルなら5人、19.8平方メートルなら6人が上限です。畳で数えると、1畳を1.62平方メートルで計算した10畳は4人になります。届出の図面に床面積を書く理由がここにあります。

非常用照明器具には例外があります

法第6条は「非常用照明器具の設置、避難経路の表示」を条文の中に例示しています。非常用照明器具は、停電時に自動で点灯する照明です。

ただし例外があります。国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第1条第1号は「国土交通大臣が定めるところにより」設けるとしており、国土交通省告示がただし書を置いています。

> ただし、届出住宅に人を宿泊させる間、住宅宿泊事業者が不在とならない場合であって、宿泊室の床面積の合計が五十平方メートル以下であるときは、この限りでない

> (国土交通省告示第1109号第一。国土交通省「民泊の安全措置の手引き」令和6年4月1日最終改訂より)

条件は2つだけです。不在とならないことと、宿泊室の床面積の合計が50平方メートル以下であること。手引きは「建て方に関わらず」と明記しており、マンションでも免除されます。

条件 非常用照明器具
不在とならない(一時的な不在を除く)かつ宿泊室の合計50平方メートル以下 不要(一戸建て・長屋・共同住宅を問わない)
家主不在型 必要
宿泊室の合計が50平方メートルを超える 必要

自宅の1部屋を貸す形は、多くの場合1行目に当たります。建物の種類ではなく、不在かどうかと宿泊室の面積で決まります。工事を発注する前に確認してください。

外国語の義務は2か所にあります

法第7条は外国人観光旅客への案内を、法第9条第2項は外国人観光旅客への外国語での説明を求めています。外国人を受け入れるつもりがなくても、条文は免除していません。

Airbnbのような国際的な仲介を使う前提であれば、この2つは最初から必要です。

消防の確認は届出の前です

届出の前に消防署で確認する3つの手順を示した手順図

住宅宿泊事業法の条文だけを読んでいると、消防が出てきません。実務では届出の前に来ます。

観光庁の民泊制度ポータルサイトは、消防法令への適合について「届出の前に建物の所在地を管轄する消防署等に確認する必要があります」としています。施行規則第4条第4項が列挙する添付書類に消防法令適合通知書はありませんが、適合そのものは別の話です。

設備の費用が形態で変わります

消防設備の要求は、家主居住型か不在型か、建物の種類と面積で変わります。自動火災報知設備の工事が必要になる場合、初期費用の最大の項目になります。

この記事で扱った条例・管理組合・賃貸人を全部クリアしても、消防設備の見積もりで計画が止まることがあります。

届出前に消防署へ電話します

確認する内容は3つです。自分の物件が消防法令上どの用途に当たるか、必要な設備は何か、市町村の火災予防条例で届出が必要かです。

3つめは書類名で聞くと早く終わります。観光庁のポータルサイトは、条例に基づき「防火対象物使用開始届出書」の提出が必要となる場合があると書いています。「防火対象物使用開始届出書は要りますか」と聞いてください。

本記事では、自治体ごとの運用と設備の実勢価格を確認できませんでした。金額は消防署への相談後に見積もりで確定させてください。

宿泊者名簿には職業を書きます

名簿の記載事項は、多くの人が想像するより1つ多いです。

施行規則第7条第3項が定めています。原文を引きます。

> 法第八条第一項の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項は、宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日のほか、宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号とする。

> (住宅宿泊事業法施行規則第7条第3項)

職業が入っています

氏名、住所、宿泊日は予想できます。職業を書かせる項目があることは見落とされがちです。チェックイン時の確認項目に入れておく必要があります。

旅券番号が要る相手は限られます

条文は「日本国内に住所を有しない外国人」と限定しています。日本に住んでいる外国人には、国籍と旅券番号を求める根拠がありません。

宿泊者 氏名・住所・職業・宿泊日 国籍・旅券番号
日本人 要る 要らない
日本に住所がある外国人 要る 要らない
日本に住所がない外国人 要る 要る

日本人と日本に住所がある外国人について、旅券の写しを求める根拠はありません。必要以上に個人情報を集めないでください。

本人確認は対面かICTです

施行規則第7条第1項の「正確な記載を確保するための措置」の中身は、本人確認です。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、対面またはICTを活用した方法を挙げています。

ICTを使う場合の要件は2つです。1つは「宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること」です。もう1つは「当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること」です。

2つめの要件があるため、どこからでもアップロードできる仕組みでは足りません。届出住宅内またはその近傍からの発信であることを確認する必要があります。

そして外国人については、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存することが求められています。名簿の国籍と旅券番号は、この写しから転記する形になります。

保存は3年です

施行規則第7条第1項は、名簿を「当該宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し、その作成の日から三年間保存する」と定めています。

起点は宿泊日ではなく作成の日です。第2項により、置く場所は届出住宅または営業所・事務所のどちらかです。第4項により、電子的な記録でも構いません。紙面に明確に表示できることが条件です。

提出を求められることがあります

法第8条第1項の末尾は「都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない」です。保管するだけでなく、求められたら出します。

宿泊者の側にも義務があります。法第8条第2項は「宿泊者は、住宅宿泊事業者から請求があったときは、前項の(中略)事項を告げなければならない」と定めています。

説明するのは騒音とごみと火災です

説明義務の中身は、省令が3つ+1つの形で列挙しています。

施行規則第8条第2項が挙げるのは4つです。騒音の防止、ごみの処理、火災の防止について配慮すべき事項、そしてその他必要な事項です。

項目 説明する内容の例
騒音の防止 深夜の会話、バルコニーの使用、上階への配慮
ごみの処理 分別の方法、収集日、置き場所
火災の防止 喫煙の可否、火気の使用、避難経路

ごみの処理が入っていることに注目してください。近隣からの苦情でいちばん多いのは騒音ですが、条文はごみを騒音と並べています。

方法は書面の備付けでも足ります

施行規則第8条第1項は「書面の備付けその他の適切な方法により行わなければならない」と定めています。対面で口頭説明する必要はありません。

部屋にハウスルールの冊子を置く運用が、条文の「書面の備付け」に当たります。外国人には外国語版が要ります。

苦情対応に営業時間はありません

法第10条は短い条文です。そして厳しい条文です。

> 住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならない。

> (住宅宿泊事業法第10条)

時間の限定がありません

「適切かつ迅速に」に時間帯の限定はありません。深夜の騒音の苦情は深夜に来ます。条文はそれを想定した書き方になっています。

苦情の相手は宿泊者ではなく周辺住民です。宿泊者とのやり取りは仲介サイトのメッセージで足りますが、住民は別の経路で連絡してきます。

ここが副業として続かない理由になります

平日は会社で働き、週末に民泊を運営する形を考えます。苦情は会社にいる時間にも来ます。

法第11条第1項第2号の委託義務と合わせて読みます。制度はこの負担を管理業者に移す前提です。自分で全部やる形は、居住しながら少数の部屋を貸す場合に限られる設計です。

次のH2から、その分岐点を見ます。

会社員として始めるなら、委託が必要になる条件と委託すると消える義務を続けて読んでください。設計が変わります。

居室が6室以上なら委託が必要です

自分で管理する場合と管理業者へ委託する場合の条件と義務の違いを並べた比較図

管理業者への委託が義務になる条件は2つです。どちらかに当たれば委託します。

先に用語を置きます。宿泊させる間に不在にならない形を家主居住型、不在になる形を家主不在型と呼びます。窓口も管理会社も仲介サイトも、この2語で話します。委託義務の分岐はこの2つです。

法第11条第1項が定めています。

> 住宅宿泊事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、(中略)当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を一の住宅宿泊管理業者に委託しなければならない。

> 一 届出住宅の居室の数が、(中略)国土交通省令・厚生労働省令で定める居室の数を超えるとき。

> 二 届出住宅に人を宿泊させる間、不在(一時的なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものを除く。)となるとき(中略)。

> (住宅宿泊事業法第11条第1項)

居室の数は5です

施行規則第9条第2項は「法第十一条第一項第一号の国土交通省令・厚生労働省令で定める居室の数は、五とする」と1行で書いています。

条文は「五を超えるとき」です。5室までは自分で管理でき、6室以上になると委託が義務になります。

居室の数 委託義務(第1号)
1〜5室 なし
6室以上 あり

委託は「全部」です

施行規則第9条第1項第1号が求めるのは「届出住宅に係る住宅宿泊管理業務の全部を契約により委託すること」です。一部だけ委託して残りを自分でやる形は認められません。

そして法第11条第1項は「一の住宅宿泊管理業者に」と書いています。複数の業者に分けることもできません。

自分が管理業者なら自分でできます

法第11条第1項のただし書が例外を作っています。住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者である場合の規定です。自ら管理業務を行うなら委託しなくてよい、という内容です。

住宅宿泊管理業は法第22条第1項の登録が必要です。2026年7月15日時点の登録件数は4,529件です。副業で始める人がここを目指す動線ではありません。

ユイカ(副業初心者)
会社に行ってる間に泊めてもらうのが理想なんですけど、それって大丈夫ですか?

リンク(運営者)
そこが分かれ目です。不在が許されるのは原則1時間まで。出勤している8時間は「一時的な不在」に入りません。会社員が平日に受け入れるなら、管理業者への委託が義務になります。

不在が許されるのは原則1時間です

第2号の「不在」が、実務でいちばん問われる条件です。

法第11条第1項第2号は、一時的な不在を省令で除いています。施行規則第9条第3項が、その一時的な不在を定義しています。

> 法第十一条第一項第二号の国土交通省令・厚生労働省令で定めるものは、日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在とする。

> (住宅宿泊事業法施行規則第9条第3項)

省令に数字はありません

条文を読んでも時間が出てきません。数字はガイドラインにあります。原文を引きます。

> 日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間は、原則1時間とする。ただし、生活必需品を購入するための最寄り店舗の位置や交通手段の状況等により当該行為が長時間にわたることが想定される場合には、2時間程度までの範囲とする。

> (住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン))

原則1時間、条件つきで2時間程度までです。

通勤は一時的な不在ではありません

ガイドラインは「日常生活を営む上で通常行われる行為」の中身も示しています。生活必需品の購入等を想定したもの、という整理です。業務等により継続的に長時間不在とするものは該当しません。

不在の理由 一時的な不在に当たるか
近所のスーパーへの買い物(30分) 当たる
少し離れた店舗への買い物(1時間半) 当たりうる
会社に出勤している8時間 当たらない
旅行で3日間家を空ける 当たらない

会社員が平日の日中に宿泊者を受け入れる形は、第2号に該当します。つまり委託が義務になります。

数字の出どころを確認してください

1時間という数字は法律でも省令でもありません。ガイドラインという通達に書かれた運用の基準です(令和6年12月24日最終改正版でも同じ文言です)。窓口が別の運用をしている例に備えて、届出の前に必ず確認してください。

隣に住んでいれば委託は要りません

不在でも委託しなくてよい例外が1つあります。条件が2つそろったときだけです。

施行規則第9条第4項が定めています。原文を引きます。

> 一 住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が、同一の建築物内若しくは敷地内にあるとき又は隣接しているとき(住宅宿泊事業者が当該届出住宅から発生する騒音その他の事象による生活環境の悪化を認識することができないことが明らかであるときを除く。)。

> 二 届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行うものの数の合計が五以下であるとき。

> (住宅宿泊事業法施行規則第9条第4項)

距離ではなく認識可能性です

第1号の括弧が本質です。同一の建築物内にあっても、騒音等を認識することができないことが明らかなら例外から外れます。条件は物理的な距離ではなく、異変に気づけるかどうかです。

大規模なタワーマンションで、自室が2階、届出住宅が40階という配置を考えます。同一の建築物内ですが、騒音を認識できるとは言えません。

配置 例外に当たるか
自宅の隣の部屋 当たる
同じ敷地の離れ 当たる
隣の建物 当たる(隣接)
同じ建物の遠い階 認識できなければ当たらない
徒歩10分の別の物件 当たらない

5室の数え方が第1号と違います

第2号は「自ら行うものの数の合計が五以下」です。法第11条第1項第1号の「五を超えるとき」とは数え方の向きが違います。

第1号は届出住宅の居室の数、第4項第2号は自ら管理する居室の合計です。複数の届出住宅を持っている場合、合計で数えます。

委託すると義務が自分から消えます

委託の効果は、義務の追加ではなく移転です。

法第11条第2項が定めています。

> 第五条から前条までの規定は、住宅宿泊管理業務の委託がされた届出住宅において住宅宿泊事業を営む住宅宿泊事業者については、適用しない。

> (住宅宿泊事業法第11条第2項)

消えるのは第5条から第10条です

「第五条から前条まで」は第5条、第6条、第7条、第8条、第9条、第10条です。前のH2で見た6つの義務が、そのまま適用対象から外れます。

委託すると、6つが法律上自分の義務ではなくなります。衛生確保、安全確保、外国人への案内、宿泊者名簿、生活環境の説明、苦情対応です。深夜の苦情電話も、法律上は管理業者の仕事です。

残る義務があります

消えるのは6つです。全部ではありません。

義務 委託後 根拠
衛生・安全・外国語・名簿・説明・苦情 消える 法第11条第2項
標識の掲示 残る 法第13条
定期報告 残る 法第14条
変更・廃業の届出 残る 法第3条第4項・第6項
予約の代理の委託先の制限 残る 法第12条

標識と定期報告は、委託しても自分の義務のままです。ここを管理業者任せにして報告を落とすと、法第76条第3号の30万円以下の罰金に触れます。

民事の責任は残ります

消えるのは住宅宿泊事業法上の義務です。民事の責任は移りません。

残るのは3つです。近隣への不法行為責任、建物の設置や保存に瑕疵があった場合の工作物責任、そしてゲストに対する安全への配慮です。工作物責任とは、建物や設備の欠陥で他人に損害が出たときに占有者や所有者が負う責任のことです。「法律上は管理業者の仕事」という整理は、行政上の義務についての話です。

委託先は書面で選べます

委託料の相場が分からなくても、契約の中身は比べられます。住宅宿泊管理業者には、管理受託契約を締結する前に説明する義務があります。

国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第14条が、説明事項を9つ挙げています。報酬とその支払の時期と方法、報酬に含まれていない費用が並びます。業務の一部の再委託に関する事項、責任及び免責に関する事項も説明事項です。

見積もりを取るときは、この9項目が説明されるかどうかを見てください。説明しない相手は、それ自体が判断材料になります。

委託料は経費になります

委託料は住宅宿泊事業の必要経費です。雑所得でも経費は引けます。金額の相場は本記事では確認できませんでした。

経費の考え方は副業の経費の記事に整理してあります。自宅の一部を使う場合の按分は、後のH2で国税庁の資料を引いて見ます。

標識の様式は管理の形で変わります

標識は1種類ではありません。4つの区分で様式が決まります。

施行規則第11条が定めています。

区分 該当する人 自分がどれか 様式
第1号 自ら管理業務を行う者(第2号・第3号を除く) 居住しながら自分で管理する 第4号様式
第2号 不在の例外に当たり自ら行う者(管理業者でない) 隣接の例外を使って自分で管理する 第5号様式
第3号 不在時に自ら行う者(管理業者であるもの) 自分が管理業者の登録を持っている 第6号様式
第4号 管理業者へ委託する者 委託する 第6号様式

同じ「自分で管理する」でも、居住しながらか、不在の例外を使っているかで様式が分かれます。自分がどの区分に当たるかを届出の時点で確定させる必要があります。

掲示する高さまで決まっています

法第13条が求めるのは「届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に」標識を掲げることです。届出住宅ごとです。複数の部屋を貸している場合、部屋ごとに掲げます。

観光庁の民泊制度ポータルサイトは、掲示する高さを「概ね地上1.2メートル以上1.8メートル以下」としています。表札を掲げる門扉の高さから、玄関ドアの標準寸法2メートルの高さ以内という説明です。

玄関の内側では「公衆の見やすい場所」になりません。

共同住宅は共用部にも掲げます

マンションの場合、部屋の前だけでは足りません。ポータルサイトは共用部への掲示を求めています。「個別の住戸に加え、共用エントランス、集合ポストその他の公衆が認識しやすい箇所へ簡素な標識を掲示してください」という記述です。

共用部への掲示は管理組合の承諾なしにできません。管理組合との調整は、届出前の確認事項ではなく掲示義務の中身そのものです。

標識には氏名と届出番号が出ます

標識の様式は、届出番号と氏名または商号を掲げる形になっています。匿名で運営することはできません。

近隣に民泊であることが分かるのは、この標識からです。住民税の経路とは別に、副業が会社にバレない方法で扱った論点がここにもう1つあります。

掲示しないと30万円以下の罰金です

法第76条第2号が、第13条違反を30万円以下の罰金と書いています。標識は最も小さな義務に見えて、罰則が付いています。

定期報告は偶数月の15日までです

報告の期限は、省令が月と日で指定しています。

施行規則第12条第2項が定めています。

> 住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の十五日までに、それぞれの月の前二月における前項各号に掲げる事項を、都道府県知事に報告しなければならない。

> (住宅宿泊事業法施行規則第12条第2項)

偶数月の15日、対象は前2か月です

年6回です。2月15日に12月と1月分、4月15日に2月と3月分という形で続きます。

報告期限 対象期間
2月15日 前年12月・1月
4月15日 2月・3月
6月15日 4月・5月
8月15日 6月・7月
10月15日 8月・9月
12月15日 10月・11月

4月1日正午が日数の起点なのに、報告は4月15日に2月・3月分を出す形です。日数を数える区切りと報告の区切りは一致していません。省令の条文を並べて数えていて、ここは設計として気になりました。

報告する項目は4つです

施行規則第12条第1項が挙げるのは、宿泊させた日数、宿泊者数、延べ宿泊者数、国籍別の宿泊者数の内訳です。

宿泊者数と延べ宿泊者数が別に並んでいます。国籍別の内訳が要るため、宿泊者名簿を国籍まで整理して残しておく必要があります。

ゼロでも報告します

条文は「宿泊させた日数」を報告事項としています。0日だった期間も報告の対象です。報告をしなければ法第76条第3号の30万円以下の罰金です。

副業で年に数回しか貸さない人でも、年6回の報告は必要です。ここが実務でいちばん落ちやすい義務だと考えています。

報告を落とすと30万円以下の罰金です。読み進める前に、カレンダーに年6回を入れてください。

報告もシステムから出します

提出方法は届出と同じです。観光庁の民泊制度ポータルサイトは「定期報告は、民泊制度運営システムを利用して行うことが原則となります」としています。

委託していても、この報告は自分で出します。管理業者が代行してくれるかどうかは契約の中身で決まります。見積もりの段階で確認してください。

予約の代理を頼める相手は2種類です

宿泊の予約を他人に取ってもらう場合、頼める相手が限定されています。

法第12条が定めています。

> 住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約(中略)の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならない。

> (住宅宿泊事業法第12条)

登録か免許のどちらかが必要です

住宅宿泊仲介業者は法第46条第1項の登録を受けた者です。旅行業者は旅行業法第6条の4第1項の旅行業者です。この2種類以外に予約の代理や媒介を頼むことはできません。

2026年7月15日時点の住宅宿泊仲介業の登録件数は66件です。管理業の4,529件と比べて極端に少ない数字です。仲介は全国規模の事業者に集中しています。

委託先 根拠 2026年7月時点の登録数
住宅宿泊仲介業者 法第46条第1項の登録 66件
旅行業者 旅行業法第6条の4第1項 (本記事では確認せず)

違反すると50万円以下の罰金です

法第75条が、第11条第1項と第12条の違反を50万円以下の罰金と書いています。委託義務の違反と同じ重さです。

登録のない仲介サイトに掲載すると、こちらが罰則を受けます。掲載先が登録事業者かどうかは、自分で確認する義務が実質的にあります。

確認する方法は登録番号です。住宅宿泊仲介業者は登録番号を持っています。掲載を申し込む前に、その番号が示されているかを見てください。示されていない相手に予約の代理や媒介を委託すると、50万円以下の罰金を負うのは委託した側です。

通知する事項があります

施行規則第10条は、委託しようとするときに商号・名称・氏名と、届出住宅の所在地と届出番号を通知させます。届出番号を伝えるのは、仲介側が違法物件を排除するためです。

180日を超えるなら33平方メートルです

住宅宿泊事業の届出と簡易宿所営業の許可の違いを日数と面積と学校規制で並べた比較図

180日で足りない場合、制度を乗り換えることになります。乗り換え先は旅館業の簡易宿所営業です。

旅館業法施行令第1条第2項が、簡易宿所の構造設備の基準を7つ挙げています。第1号が面積です。

> 一 客室の延床面積は、三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。

> (旅館業法施行令第1条第2項第1号)

10人未満なら面積が下がります

括弧の中を見てください。宿泊者数を10人未満で申請すれば、3.3平方メートル×人数で足ります。4人なら13.2平方メートルです。

申請する宿泊者数 必要な客室の延床面積
4人 13.2平方メートル
6人 19.8平方メートル
9人 29.7平方メートル
10人以上 33平方メートル

33平方メートルという数字だけが独り歩きしていますが、少人数なら条件は下がります。

学校の100メートル規制が乗ります

旅館業法第3条第3項が、学校の周辺に制限を置いています。対象は学校、幼保連携型認定こども園、児童福祉施設などの敷地の周囲おおむね100メートルの区域内です。清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるときは、許可を与えないことができます。

住宅宿泊事業法にこの条文はありません。届出の民泊は、小学校の隣でも法律上は禁じられていません。条例が制限していなければ営めます。

2026年7月の技術的助言が「教育施設等の周辺」を挙げたのは、この空白を条例で埋める発想です。旅館業法にある規制が民泊にはない、という構造が背景にあります。

両方は営めません

法第2条第3項が住宅宿泊事業者を「旅館業法第三条の二第一項に規定する営業者以外の者」と限定しています。簡易宿所の許可を取ったら、同じ主体として住宅宿泊事業者ではなくなります。

180日を使い切ってから許可に切り替える、という運用はできません。年度の途中で乗り換えるなら、どちらか一方に決めます。

特区民泊は3日以上の賃貸借です

3つめの制度が国家戦略特別区域にあります。日数の上限がないかわりに、滞在期間の下限が付きます。

国家戦略特別区域法第13条第1項が「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」の特定認定を定めています。特定認定とは、都道府県知事がその事業を政令の要件に該当すると認める手続です。同条第5項は「認定事業者が行う(中略)認定事業については、旅館業法第三条第一項の規定は、適用しない」としています。

期間は条例が3日から10日の間で決めます

国家戦略特別区域法施行令第13条第2号が定めています。

> 二 施設を使用させる期間が三日から十日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(中略)の条例で定める期間以上であること。

> (国家戦略特別区域法施行令第13条第2号)

「2泊3日以上」と説明されることが多いのは、条例が下限の3日を採用している区域があるためです。条文の建て付けは「3日から10日の範囲内で条例が決める」です。

一居室25平方メートルが原則です

同条第3号イは「一居室の床面積は、二十五平方メートル以上であること」と定めています。ただし書で、知事が外国人旅客の快適な滞在に支障がないと認めた場合は例外です。

同号は設備も並べています。台所、浴室、便所、洗面設備に加えて、家具と器具が並びます。寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理のために必要な器具又は設備、清掃のために必要な器具です。民泊の届出より設備の要求が細かいです。

申請前に近隣へ説明します

同条第7号は、特定認定の申請前に施設の周辺地域の住民に対して適切な説明が行われていることを要件にしています。住宅宿泊事業の届出にはこの要件がありません。

制度 手続き 日数の上限 滞在の下限 面積の基準
住宅宿泊事業 届出 年間180日 なし 居室1人当たり3.3平方メートル
特区民泊 特定認定 なし 3〜10日(条例) 一居室25平方メートル
簡易宿所 許可 なし なし 延床33平方メートル

特区民泊は「賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき使用させる」形です。宿泊契約ではありません。契約書の形から作り直す必要があります。

そして特区民泊は指定区域が限られます。区域ごとに新規認定の方針が見直されることがあるため、実施を検討する場合は最新の受付状況を窓口で確認してください。本記事では区域別の受付状況を確認できませんでした。

所得は原則として雑所得です

民泊の所得区分は、国税庁が文書で示しています。不動産所得ではありません。

国税庁「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」が、平成30年6月13日付(個人課税課情報第6号、資産課税課情報第8号、消費税室情報第4号)で公表されています。

原則は雑所得です

この情報は、住宅宿泊事業による所得を「原則として雑所得に区分されます」としています。

不動産所得でない理由は3つです

1つめは対価の中身です。宿泊者の安全等の確保や一定程度の宿泊サービスの提供が義務づけられています。そのため受領する対価には、部屋の使用料以外のものが含まれます。寝具等の賃貸料、クリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、日用品費、観光案内等の役務提供の対価です。

2つめは使える家屋の限定です。3類型に限られ、宿泊日数も制限されていることが挙げられています。

3つめは事業の性質と規模と期間です。

寝具の賃貸料とクリーニング代が対価に入っているから不動産の貸付けではない、という理由づけになっています。法第5条から第10条の義務が、税務上の所得区分まで動かしています。

事業所得になる形もあります

情報は例外も書いています。専ら住宅宿泊事業による所得により生計を立てているなどの場合です。所得税法上の事業として行われていることが明らかなら事業所得に該当する、という内容です。

副業として月に数回貸す形は、この例外に当たりません。

状況 所得区分
会社員が空き部屋を年100泊貸す 雑所得
民泊の所得で生計を立てている 事業所得
建物を賃貸に出している(民泊ではない) 不動産所得

経費は按分します

情報は按分の方法も示しています。1つは面積です。主に住宅宿泊事業に利用している部分の床面積が、総床面積に占める割合を基にするなどして計算します。もう1つは日数です。実際に宿泊客を宿泊させた日数を基にするなど、合理的な方法により按分します。

床面積と日数の2軸で按分します。年100泊なら、按分率は床面積比×(100日÷365日)という形になります。家事按分の考え方は副業の経費の記事に詳しく書いてあります。

雑所得だと使えない制度があります

所得区分が雑所得であることの帰結は、損益通算だけではありません。

青色申告の制度は事業所得・不動産所得・山林所得を対象にしています。雑所得では青色申告特別控除も、純損失の繰越控除も、青色事業専従者給与も使えません。青色申告者を対象にした少額減価償却資産の特例も対象外です。

制度 雑所得 事業所得
損益通算 できない できる
青色申告特別控除 使えない 使える
純損失の繰越控除 使えない 使える
少額減価償却資産の特例 使えない 使える(青色申告者)
一括償却資産(20万円未満・3年均等) 使える 使える

設備投資を経費で一気に回収する設計は、雑所得では成り立ちません。10万円以上の設備は減価償却の対象になり、耐用年数に応じて分けて落とします。

ただし例外が1つあります。取得価額が20万円未満なら一括償却資産として3年で均等に落とせます。青色申告の要件がないため、雑所得でも使えます。

消費税は課税取引です

消費税法では住宅の貸付けが非課税です。ただし条文に除外があります。

> 十三 住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分をいう。)の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされている場合(中略)に限るものとし、一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)

> (消費税法別表第二第13号)

除外の中身は政令にあります。消費税法施行令第16条の2は「住宅の貸付けに係る期間が一月に満たない場合」および旅館業に係る施設の貸付けに該当する場合を挙げています。

民泊は1か月未満の貸付けなので、非課税から外れます。宿泊料は課税取引です。

そのうえで、消費税法第9条第1項が基準期間の課税売上高1,000万円以下の事業者の納税義務を免除しています。副業の規模なら免税事業者に当たります。登録の判断は副業のインボイスの記事を見てください。

宿泊税は預かって納めます

所得税とは別に、宿泊者から預かって納める税があります。

宿泊税は法定外目的税です。地方税法第4条第6項と第5条第7項が、道府県と市町村に「別に税目を起こして」目的税を課する道を開いています。条例で導入した自治体では、住宅宿泊事業者が特別徴収義務者になります。特別徴収義務者とは、自分の税ではない税を相手から預かって代わりに納める立場のことです。

預かる税は利益ではありません

宿泊料に上乗せして受け取り、申告して納めます。徴収を忘れても納税義務は残るため、自腹になります。

所得税は利益が出てから払う税です。宿泊税は利益が出ていなくても預かって納める税です。性質が違います。

税 誰が負担するか 忘れたときの影響
所得税・住民税 事業者 申告漏れ
消費税 宿泊者(免税事業者なら納めない) 規模により納税
宿泊税 宿泊者 徴収漏れは自腹

導入しているかは自治体ごとです

税率も対象も自治体ごとに違い、改定もあります。本記事は個別の自治体名と税率を挙げません。条例の確認と同じ電話で、宿泊税の有無も聞いてください。

仲介サイトの料金設定で宿泊税をどう扱うかも決める必要があります。宿泊料に含めるか、別途受け取るかで運用が変わります。

手数料3%と15.5%は同じことです

仲介手数料の料率は、2つの方式で大きく違って見えます。比べると差はほとんどありません。

Airbnbの公式ヘルプが2つの方式を示しています。分割負担型とシングルサービス料です。

方式 ホスト負担 ゲスト負担
分割負担型 3% 14.1〜16.5%
シングルサービス料 15.5%(多くのホスト) なし

ゲストの総支払をそろえて比べます

3%のほうが安く見えます。ただし分割負担型では、ゲストが14.1〜16.5%を上乗せして払います。ゲストが財布から出す総額をそろえて比べないと、比較になりません。

ここからの数字はすべて本記事が置いた前提です。ゲストが払う総額を12,000円にそろえます。

方式 表示する宿泊料 ホストが払う手数料 ホストの受取
シングル15.5% 12,000円 1,860円 10,140円
分割型(ゲスト14.1%) 10,517円 316円 10,201円
分割型(ゲスト16.5%) 10,300円 309円 9,991円

ゲスト料率が14.1%なら分割型が61円有利です。16.5%なら149円不利です。どちらも1泊あたり1%未満の差にとどまります。

手数料は「取られるもの」ではありません

数字を並べて気づいたのは、料率の大小が手取りをほとんど動かさないことです。動かすのは表示価格です。分割型はゲストの画面で価格が上がり、シングルは上がりません。

料率の比較より、どちらの方式でゲストが予約しやすいかを考えるほうが実益があります。3%という数字だけで方式を選ぶ意味は薄いです。

手数料より委託料のほうが大きい構造です

副業で始める人の支出で大きいのは、仲介手数料ではなく管理業者への委託料です。不在時に委託が義務になるため、会社員は原則としてここを払います。

15.5%を気にする前に、委託が義務になるかどうかを確定させてください。この順番が逆になっている解説をよく見かけます。

初期費用は見積もりを取る項目です

民泊を始めるときに最初にかかる項目と毎月かかる項目を2列で並べた比較図

金額を置けない項目は、項目のまま並べます。抜けを防ぐほうが先です。

本記事では設備の実勢価格を公的資料で確認できませんでした。そのため金額は書きません。かわりに、見積もりを取るべき項目を並べます。

設備と備品

項目 必要になる条件
寝具・リネン 常に必要(寝具がないと宿泊ではありません)
家具・家電・Wi-Fi 宿泊者が使う部分に応じて
非常用照明器具 不在とならず宿泊室の合計50平方メートル以下なら不要(建て方を問わない)
避難経路の表示 常に必要(法第6条)
消防設備 消防署の確認で決まる
鍵の受け渡しの仕組み 対面しない場合
騒音計・カメラ 条例がICT管理を義務づけた区域
標識 常に必要(共同住宅は共用部にも)

書類と手続き

図面の作成、登記事項証明書、市町村長の証明書、行政書士に頼む場合の報酬が並びます。届出そのものに手数料の条文はありません。

毎月かかるもの

清掃、リネンの交換、消耗品、水道光熱費の按分が並びます。ごみの処理費用と保険料、そして家主不在型なら管理業者への委託料です。

委託料は売上に対する料率で決まることが多いため、売上の見込みと同時に見積もりを取ってください。本記事では料率の相場を確認できませんでした。

手取りを計算します

年間の売上から仲介手数料を引いた受取額の内訳を示した計算図

ここまでの条文と料率で、年間の手取りの構造を出します。金額はすべて本記事が置いた前提です。

前提を先に並べます。自宅の空き部屋1室、家主居住型、不在の例外に当たるため委託なしとします。手数料はシングルサービス料15.5%、1泊12,000円、年間100泊です。

項目 金額 根拠
年間の売上 1,200,000円 12,000円×100泊(前提)
Airbnbホスト手数料 186,000円 15.5%(公式ヘルプ)
差引後の受取 1,014,000円 —
経費 本記事では置かない 按分が人によって違うため
所得区分 雑所得 国税庁情報

100泊は180日の55%です

100泊は上限の180日に対して55%です。稼働率で言えば年間27%です。条例が平日を禁止している区域では、この100泊も組めません。

180日をフルに使う前提で他の解説記事や試算例を読むと、条例の確認が抜けているものが目につきます。制度上の上限と、実際に組める日数は別です。

委託すると構造が変わります

会社員として平日の日中に受け入れるなら委託が義務です。委託料が乗り、かわりに6つの義務が消えます。

形 委託料 消える義務 残る義務
居住しながら自分で管理 なし なし 6つ全部+標識+報告
不在で委託 かかる 6つ 標識+報告+届出

委託料の相場は本記事では確認できませんでした。見積もりを取って、上の売上から引いてください。

所得税と住民税を引きます

受取額は手取りではありません。ここから経費を引いた残りが雑所得になり、給与所得と合算して総合課税されます。

所得税の税率は課税所得に応じて変わるため、同じ利益でも人によって手取りが違います。加えて住民税がかかります。受取1,014,000円という数字は、税引き前の金額です。

20万円以下なら所得税の申告は不要です

年に1〜2回しか貸さない場合の分岐を置きます。所得税法第121条第1項第1号は、1か所から給与を受けて源泉徴収されている人について、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下なら確定申告書の提出を要しないと書いています。給与等の金額が2,000万円以下であることも条件です。

ただしこれは所得税の話です。住民税の申告は20万円以下でも必要になります。市区町村の窓口で確認してください。

民泊の所得 所得税の確定申告 住民税の申告
20万円以下 不要(条件を満たす場合) 必要
20万円を超える 必要 確定申告で足りる

赤字を給料と通算できません

雑所得で押さえておく点が1つあります。所得税法第69条第1項は、損益通算の対象を「不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額」に限っています。

雑所得はこの4つに入っていません。初期投資で赤字になっても、給与所得から引けません。

不動産所得だと思って設備投資の計画を立てると、ここで見込みが外れます。国税庁が民泊を雑所得と整理している意味は、この一点に集約されます。

確定申告の手順は副業の確定申告にまとめてあります。住民税から会社に伝わる仕組みは副業が会社にバレない方法です。開業届の扱いは副業の開業届を見てください。

ユイカ(副業初心者)
義務が多すぎて、どれか忘れそうで怖いです…

リンク(運営者)
分かります。いちばん落ちやすいのは定期報告ですね。偶数月の15日までに年6回、泊めた日数が0日でも出します。忘れると30万円以下の罰金なので、先にカレンダーに6回入れておいてください。

罰則は5段階に分かれています

住宅宿泊事業法の罰則は、義務の重さで5つに分かれています。

罰則 対象 根拠
6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 虚偽の届出、業務停止・廃止命令違反 法第73条
50万円以下の罰金 委託義務違反、予約の代理の委託先違反 法第75条
30万円以下の罰金 名簿、標識、定期報告、変更届、検査拒否 法第76条
拘留または科料 宿泊者が名簿事項を偽って告げた 法第77条
20万円以下の過料 廃業等の届出をしない、虚偽 法第79条

いちばん重いのは虚偽の届出です

法第73条第1号が虚偽の届出を6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金としています。併科できます。届出そのものに審査がないぶん、虚偽への罰が重く設定されています。

管理組合の確認を取らずに「規約に禁止の定めがない」と書いた場合、ここに触れます。

委託義務違反は50万円です

法第75条が第11条第1項の違反を50万円以下の罰金としています。不在にして委託していない状態は、それ自体が罰則の対象です。

トラブルが起きたかどうかに関係ありません。会社に出勤している間に宿泊者を置いていて、委託していなければ違反です。

廃業の届出忘れは過料です

法第79条は、法第3条第6項の届出をしない場合を20万円以下の過料と書いています。過料は刑罰ではありません。罰金や科料と違い、前科になりません。

やめるときの届出を軽く扱ってよいという話ではありません。制度上の位置づけが違うという整理です。

用語 性質 前科
罰金 刑罰 つく
科料 刑罰(罰金より軽い) つく
過料 秩序罰(行政上の制裁) つかない

宿泊者にも罰があります

法第77条は、宿泊者が法第8条第2項に違反して名簿の記載事項を偽って告げた場合を拘留または科料としています。事業者ではなく宿泊者への罰則です。

偽名でチェックインさせると、宿泊者側にも罰則が及びます。名簿の確認を丁寧にやる理由はここにもあります。

法人には両罰規定があります

法第78条が両罰規定です。従業者が違反行為をしたときは、行為者を罰するほか法人または人にも各本条の罰金刑を科します。個人でも、家族に運営を任せていれば適用の対象です。

命令が先に来ます

罰則の前に行政処分があります。法第15条が業務改善命令、法第16条第1項が1年以内の業務停止命令、第2項が廃止命令です。廃止を命じられると、法第4条第3号により3年間は再開できません。

罰則の中でいちばん落ちやすいのは定期報告です。カレンダーに6回の予定を入れてから始めてください。

辞めた人がつまずく場所

近隣からの通報から業務停止命令までの行政処分の流れを4段階で示した手順図

罰則の前に、行政処分と民事の問題があります。

観光庁の統計では届け出た人の36%が既に廃止していますが、理由は公表されていません。以下は制度上たどりうる経路の整理です。

近隣の通報から命令まで

苦情は自治体に行きます。法第17条第1項が報告徴収と立入検査を、法第15条が業務改善命令を、法第16条第1項が1年以内の業務停止命令を用意しています。

命令に違反すると法第73条第2号で6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。廃止を命じられると、法第4条第3号により3年間は再開できません。

無断で始めると契約を解除されます

賃貸人の承諾を得ずに始めた場合、行政手続の問題だけでは終わりません。民法第612条が定めています。

> 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

> 2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

> (民法第612条)

承諾書がないまま始めると、住む場所を失う可能性が制度上あります。

続けられなくなる外側の要因

条例の改正、管理規約の改正、賃貸借契約の終了、金融機関からの指摘が並びます。どれも自分の努力では動かせません。

辞めるときにも義務が残ります

廃止の届出は30日以内です。宿泊者名簿の3年保存は、廃止しても作成日から3年です。標識の撤去と、賃貸物件なら原状回復も残ります。

届け出た人の36%は辞めています

制度全体の数字を見ておきます。始める判断の材料になります。

観光庁「住宅宿泊事業法の施行状況」の2026年7月15日時点の数値です。

項目 件数
届出件数(累計) 65,837件
事業廃止件数 23,767件
現在の届出住宅数 42,070件
住宅宿泊管理業の登録 4,529件
住宅宿泊仲介業の登録 66件
施行当初(2018年6月15日)の届出件数 2,210件

3件に1件以上が撤退しています

届け出た65,837件のうち、23,767件が既に廃止されています。割合は36.1%です。

この数字を最初に見たとき、思っていたより高いと感じました。届出から撤退までの期間は公表されていないため、いつ辞めたのかは分かりません。

計算 値
廃止件数÷届出件数 36.1%
現存件数÷届出件数 63.9%
施行当初からの増加倍率 約19倍

現存数は増えています

現在の届出住宅数42,070件は、前回の5月集計から1,325件増えています。撤退が多いのに総数は増えている状態です。新規の届出が撤退を上回っています。

ここに2026年7月の技術的助言が重なります。実施が拡大することが見込まれる場合にゼロ日規制を認める、という通知の前提が、この増加傾向です。

東京都に宿泊日数の58%が集中しています

観光庁は宿泊実績も公表しています。2026年4月1日から5月31日までの2か月の数値です。

項目 値
全国の宿泊日数 624,088日(前年同期比138.6%)
全国の延べ宿泊者数 1,745,359人泊(前年同期比133.0%)
東京都の宿泊日数 362,082日
北海道の宿泊日数 33,094日
京都府の宿泊日数 32,218日

東京都の362,082日は、全国624,088日の58.0%に当たります。2位の北海道の11倍です。地方で始める場合、全国の数字はほとんど参考になりません。

1件あたりの稼働は年90日弱です

上の2つの数字から概算できます。以下は本記事の計算です。

宿泊日数624,088日を届出住宅数42,070件で割ると、2か月で1件あたり約14.8日です。6倍して年間に直すと約89日になります。

上限180日の半分です。この記事が手取りの試算で年間100日と置いたのは、この概算に近い水準です。180日をフルに使う前提の試算は、平均から大きく離れています。

なお宿泊実績は4月から5月、届出住宅数は7月15日時点の数値です。期間がずれているため、あくまで概算として見てください。

仲介業の66件という数字

仲介業の登録が66件しかないことは、副業として始める人に直接影響します。法第12条により、予約の代理や媒介を頼める相手は登録事業者と旅行業者だけです。

選択肢が少ないぶん、掲載先を選ぶ手間は小さいです。かわりに手数料の交渉の余地もありません。

住宅宿泊事業法の外にある法令

ここまでの条文をすべて満たしても、別の法令で止まることがあります。5つ挙げます。

建築基準法:用途地域で乗り換えられません

住宅宿泊事業は建築基準法上「住宅」のままなので、用途変更に当たりません。第一種低層住居専用地域でも営めます。

簡易宿所は違います。建築基準法別表第二は、第二種中高層住居専用地域、工業地域、工業専用地域について「ホテル又は旅館」を建築してはならない建築物に挙げています。

第一種・第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、田園住居地域は方式が違います。建築できる建築物を列挙する形で、ホテル又は旅館が挙がっていません。

住居専用地域の物件は、180日を超えたくても簡易宿所に乗り換える道がありません。用途変更して特殊建築物とする場合は、同法第87条第1項により確認の手続も必要です。

自分の物件の用途地域は、自治体の都市計画情報で調べられます。条例を問い合わせるときに一緒に確認してください。

廃棄物処理法:ごみは事業系です

民泊から出るごみは事業活動に伴って生じた廃棄物です。廃棄物の処理及び清掃に関する法律第3条第1項が定めています。

> 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

> (廃棄物の処理及び清掃に関する法律第3条第1項)

家庭ごみの集積所に出せるかどうかは自治体のルールで決まります。マンションのごみ置き場に出して管理組合と衝突する事例が想定されます。近隣トラブルでごみが騒音と並ぶ理由は、法第9条の説明義務だけではありません。

火災保険:用途が変われば前提が変わります

住宅用の火災保険は、住宅としての使用を前提にしています。民泊に使う場合の扱いは保険会社と商品によって違います。

ゲストの失火や室内での事故は、頻度が低くて損害が大きい事象です。本記事では個別の商品の約款を確認できませんでした。契約している保険会社に、民泊に使う旨を伝えて確認してください。

住宅ローン:資金使途の確認が要ります

自宅にローンが残っている場合、資金使途は「自ら居住する住宅」であることが前提になっているのが一般的です。

住宅借入金等特別控除も、居住用部分の要件があります。条例と管理組合と大家さんを全部クリアしても、金融機関で止まることがあります。本記事では個別の商品要件を確認できませんでした。借入先に確認してください。

個人情報保護法:名簿は個人データです

宿泊者名簿には氏名、住所、職業、宿泊日が入り、外国人なら国籍と旅券番号と旅券の写しが加わります。個人データとして安全管理の対象です。

3年保存する紙の名簿と画像データの置き場所を、届出の前に決めてください。仲介サイトの管理画面に任せきりにできない部分です。

始める前に確認する5つのこと

順番を間違えると手戻りが大きい項目が5つあります。

条例、管理組合か賃貸人、不在、消防、そして設備と図面です。この順で片付けてください。

条例を最初に確認します

物件の所在地を管轄する都道府県か保健所設置市等の窓口で、条例の有無と内容を確認します。2026年7月15日の通知を受けて改正の検討が進んでいる区域があります。

ここで禁止されていれば、以下の4つを調べる必要はありません。

管理組合か賃貸人を次に当たります

分譲なら管理組合、賃貸なら賃貸人です。転借なら賃貸人と転貸人の2者です。書面をもらうまでに数週間かかります。

不在になるかを確定させます

平日の日中に出勤するなら、原則として委託が義務です。隣接の例外に当たるかどうかを、施行規則第9条第4項の2つの条件で確かめます。

消防署に相談します

自分の物件が消防法令上どの用途に当たるか、必要な設備は何かを聞きます。ここで設備工事が必要になると、初期費用が一段上がります。

立場ごとに必要なものが違います

同じ180日の制度でも、立場によって集める書類と止まる相手が変わります。

立場 家屋の類型 止まる相手 承諾・確認の書類
一戸建ての所有者 第1号(生活の本拠) 自治体・消防署 なし
分譲マンションの所有者 第1号 管理組合 規約の写し+確認書
賃貸マンションの賃借人 第1号 賃貸人(分譲賃貸なら管理組合も) 承諾書1通(分譲賃貸なら+規約の写しと確認書)
転借人 第1号 賃貸人と転貸人 承諾書2通
所有している賃貸用の空室 第2号(入居者募集中) 自治体(区分所有なら管理組合) 募集中を証する書類
別荘・セカンドハウス 第3号(随時居住) 自治体・消防署 随時居住を証する書類

消防署はどの立場でも共通です。表には代表的な相手だけを書いています。

自宅にローンが残っている場合は、どの立場でも金融機関が追加で止まる相手になります。

設備と図面を最後に用意します

台所、浴室、便所、洗面設備の4つがあるかを確認し、図面に3種類の床面積を書きます。非常用照明器具は、不在とならず宿泊室の合計が50平方メートル以下なら不要です(建て方を問いません)。

順番 確認すること 止まったら
1 条例と宿泊税 別の区域を探す
2 管理組合・賃貸人 別の物件を探す
3 不在の有無 委託料を見積もる
4 消防署への相談 設備工事を見積もる
5 設備と図面 図面を作り直す

自宅にローンが残っている場合は、1と2の間に金融機関への確認を挟んでください。

今日やること

民泊を始める前に確認する5つの手順と所要時間を示した手順図

読み終えてすぐできることを5つ挙げます。所要時間は本記事が置いた目安です。

所在地の自治体名を確認します

物件の所在地が、都道府県の管轄か保健所設置市等の管轄かを確認します。届出の窓口と条例の主体が変わります。所要5分です。

条例の有無を窓口に問い合わせます

自治体の住宅宿泊事業の担当課に電話します。聞くのは条例の有無と内容、そして2026年7月の通知を受けた改正予定です。所要15分です。

管理規約か賃貸借契約書を読みます

分譲なら専有部分の用途に関する規約、賃貸なら転貸の条項を読みます。民泊の記載を探します。所要20分です。

消防署に電話します

物件の所在地を管轄する消防署に、民泊に使う場合の設備と届出を聞きます。所要15分です。

4月1日からの日数を数え直します

既に貸している人は、4月1日正午起点で日数を数え直します。暦年で数えていた人は数字がずれます。所要20分です。

止まる場所は決まっています。条例と、管理規約。そこで止まるなら、40分以内に判断がつきます。

手順 所要時間 止まる可能性
自治体の確認 5分 低い
条例と宿泊税の問い合わせ 15分 高い
規約・契約書の確認 20分 高い
消防署への電話 15分 中くらい
日数の数え直し 20分 —

合計で1時間15分です。設備を買う前に、この時間を使ってください。

よくある質問

制度の細部について、条文で答えられる範囲をまとめます。

自宅に住みながら1部屋だけ貸す形でも届出は必要ですか。

必要です。法第3条第1項は住宅宿泊事業を営む場合の届出を定めており、部屋数による除外はありません。宿泊料を受けて寝具を使わせれば事業に当たります。

友人を無料で泊めるのは届出が要りますか。

要りません。法第2条第3項が「宿泊料を受けて」と定めています。宿泊料を受けなければ住宅宿泊事業ではありません。清掃費などの名目で金銭を受け取る場合は、実質が宿泊の対価かどうかで判断されます。窓口に確認してください。

何人まで泊められますか。

居室の床面積を3.3平方メートルで割った数が上限です。厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則が「居室の床面積は、宿泊者一人当たり三・三平方メートル以上を確保すること」と定めています。16.5平方メートルなら5人です。畳で数えると、1畳1.62平方メートルの10畳は4人になります。

180日を数えるとき、キャンセルされた日は入りますか。

入りません。ガイドラインは「日数の算定については、宿泊料を受けて届出住宅に実際に人を宿泊させた日数について算定するのであって、宿泊料を受けた日数や宿泊者を募集した日数ではない」としています。

2部屋を同時に貸したら1日で2日分になりますか。

なりません。施行規則第3条は「人を宿泊させた日数」を数えます。同じ日に別のグループが2組泊まっても1日です。起点は毎年4月1日正午で、正午から翌日の正午までを1日とします。

チェックアウトを午後にすると日数は増えますか。

増えます。施行規則第3条は正午から翌日の正午までを1日と書いています。正午を過ぎてチェックアウトすると次の枠に入るため、1泊で2日を消費します。180日の設計に直接効くので、届出の前に窓口で確認してください。

会社員でも民泊の届出はできますか。

できます。法第4条の欠格事由に会社員であることは含まれていません。ただし平日の日中に不在となる形では、法第11条第1項第2号により住宅宿泊管理業者への委託が義務になります。公務員の場合は承認の基準が別にあるため、公務員の副業の記事を見てください。

未成年でも届出できますか。

条件つきでできます。法第4条第6号は、営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が欠格事由に該当するものを除いています。法第3条第2項第3号により、法定代理人の氏名と住所を届出書に書きます。

賃貸マンションでも民泊はできますか。

賃貸人の承諾が必要です。施行規則第4条第3項第11号は、賃借人の場合に「賃貸人が住宅宿泊事業の用に供することを目的とした賃借物の転貸を承諾している旨」を届出書に書かせます。承諾を得ずに始めた場合、民法第612条第2項により賃貸人は契約を解除できます。

分譲マンションの管理規約に民泊の記載がない場合はどうなりますか。

管理組合に確認が必要です。施行規則第4条第3項第13号は、規約に定めがない場合に「管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がない旨」を含むとしています。同条第4項ルにより、確認したことを証する書類を添付します。

民泊の副業でいくら稼げますか。

本記事は宿泊料の相場を確認できなかったため、金額を置いていません。稼働の目安は概算できます。観光庁の2026年4月から5月の宿泊日数624,088日を届出住宅数42,070件で割ると、1件あたり2か月で約14.8日です。年間に直すと約89日で、上限180日の半分です。

初期費用はいくらかかりますか。

本記事では設備の実勢価格を公的資料で確認できなかったため、金額を置いていません。見積もりを取る項目は、寝具とリネン、家具家電、避難経路の表示、消防設備、鍵の受け渡しの仕組み、標識、図面の作成です。非常用照明器具は、不在とならず宿泊室の合計が50平方メートル以下なら不要です(建て方を問いません)。

所得が20万円以下なら確定申告は不要ですか。

所得税の確定申告は不要になる場合があります。所得税法第121条第1項第1号は、1か所から給与を受けて源泉徴収されている人について、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下なら申告書の提出を要しないとしています。住民税の申告は20万円以下でも必要です。

民泊の所得は不動産所得になりますか。

なりません。国税庁は原則として雑所得に区分されると書いています。理由は対価の中身です。寝具等の賃貸料やクリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、観光案内等の役務提供の対価が含まれることを挙げています。生計を立てている場合は事業所得です。

民泊の赤字を給料と相殺できますか。

できません。所得税法第69条第1項の損益通算の対象は不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得です。国税庁は住宅宿泊事業による所得を原則として雑所得と整理しているため、この4つに入りません。

管理業者に委託すれば苦情の電話は来なくなりますか。

法律上の義務はなくなります。法第11条第2項により、第5条から第10条までが適用されなくなります。ただし近隣住民が事業者に連絡してくること自体を止める条文はありません。標識の掲示と定期報告は委託しても残ります。

標識を室内に貼っても構いませんか。

構いません、とは言えません。法第13条は「公衆の見やすい場所」に掲げることを求めています。観光庁は概ね地上1.2メートル以上1.8メートル以下とし、共同住宅では共用エントランスや集合ポストにも掲示するとしています。掲示しない場合は法第76条第2号により30万円以下の罰金の対象です。

定期報告を忘れたらどうなりますか。

法第76条第3号により30万円以下の罰金の対象です。報告は毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の15日までに、前2か月分を都道府県知事に出します。宿泊させた日数が0日の期間も報告します。提出は民泊制度運営システムからが原則です。

180日を超えたら何が起きますか。

その事業は法第2条第3項の定義を外れます。届出で営める範囲を超えるため、旅館業法第3条第1項の無許可営業の問題になります。旅館業法第10条第1号は、無許可営業を6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金としています。

ゼロ日規制が決まったら、すぐ営業できなくなりますか。

2026年7月15日付の技術的助言は、既存の届出住宅を制限する場合に一定の猶予期間を設けることを前提にしています。猶予の長さは条例ごとに決まります。条例案が出た段階で内容を確認してください。

まとめ

民泊の副業は、180日という数字だけで設計できません。

制度の骨格を5行で置きます。

  1. 180日は国が置いた天井で、起点は4月1日の正午です(施行規則第3条)
  2. 条例は区域ごとに「実施してはならない期間」を指定し、2026年7月から年間365日も可能になりました
  3. 管理組合と賃貸人の承諾がなければ届出書が完成しません(施行規則第4条第3項)
  4. 居室6室以上、または不在が1時間を超えると管理業者への委託が義務です(施行規則第9条)
  5. 所得は原則として雑所得で、赤字を給料と通算できません(国税庁情報・所得税法第69条第1項)

始める判断は、2番と3番だけで9割つきます。条例で禁止されていれば設備の話は要りません。管理組合が認めなければ物件を変えるしかありません。

そして2026年は、始めた後に禁止される可能性が制度上開いた最初の年です。3課長連名の技術的助言は、既存の届出住宅にも猶予期間つきで制限が及びうると書いています。回収期間の長い設備投資は、この前提で考えてください。

条文を並べて数えていて最後に思ったことがあります。この制度は「住宅であること」を手放さない設計です。台所と浴室と便所と洗面設備、居住の用に供されている3類型、居室の床面積に応じた宿泊者数の制限。民泊は宿泊施設の小型版ではなく、住宅のまま人を泊める制度です。

同じ遊休資産を貸す副業も別にまとめてあります。時間貸しの側がスペースマーケットの副業とインスタベースの副業、物の預かりの側がモノオクの副業です。寝具を置かない形なら、届出も180日も条例も関係ありません。そこから始める選択もあります。

まずは今日やることの5項目を1時間15分でやってみてください。設備を買う前に判断がつきます。

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