大学受験で使った参考書がまだ棚にあります。平日の夜に2時間だけ空いています。オンラインなら移動もありません。オンライン家庭教師の副業は、たいていこの順番で始まります。
そして多くの解説記事が、次の一文を置きます。「オンライン家庭教師は資格が要らないので誰でも始められます」。これは間違いではありません。資格の要件は法令にありません。
ただし、資格が要らないことと、義務が何もないことは別です。家庭と直接契約したとき、教える側は特定商取引法の「役務提供事業者」になります。副業でも、個人でも変わりません。
そのうえで、この記事が扱うのは次の一点です。義務が発生するかどうかは、契約の期間が2か月を超えるかと、総額が5万円を超えるかの2つで決まります。どちらかを下回れば、この章の規制は原則として始まりません。
消費者庁のQ&Aと政令の別表を並べて読んでいて、いちばん手が止まったのがここでした。小学校を受験する子を教えると、法律の外に出ます。同じ子の学校の補習を教えると、法律の中に入ります。教える相手も場所も同じままです。
この記事でわかること
- ファックスやテレビ電話による学習指導が「家庭教師」に当たると消費者庁が明記していること
- 家庭教師と学習塾を分けるのが「事業者が用意した場所かどうか」の一点だけであること
- 小学校受験の対策と大学生の補習が、この章の対象から外れること
- 規制が始まるのは期間2か月超と総額5万円超の両方を満たしたときだけであること(施行令第24条)
- 副業の個人でも「営利の意思をもって、反復継続して」教えれば役務提供事業者に当たること
- 直接契約では概要書面と契約書面の2通が必要で、交付の時期も別であること(法第42条)
- 書面の不交付と記載漏れに6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金があること(法第71条第1号)
- 契約書面の受領から8日間は、既に提供した授業の代金も請求できないこと(法第48条第6項)
- 月謝を上げるなど契約を変更すると、8日間がもう一度動き出すこと(消費者庁Q&A)
- 市販の教材をPDFで送れないこと(著作権法第35条の対象から営利の教育が除かれる)
- 生徒が未成年なら契約の当事者を親権者にする必要があること(民法第5条)
- 自分のサイトで募集すると通信販売にも当たり、広告に住所と電話番号が要ること(法第11条)
この記事の調べ方(編集方針)
- 本記事は、副業ジャンルの記事を90本以上制作している当サイト編集部が作成しました。制度部分の出典は、法令はe-Gov法令検索の現行条文、解釈は消費者庁・国税庁・文部科学省・公正取引委員会が公開している資料に限定しています。調査日は2026年9月27日です。
- 解釈の部分は消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」と消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第4章(令和6年3月19日版)から読み取りました。電子交付の運用は消費者庁「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」で確認しました。
- 本記事は弁護士・税理士の監修を受けていません。そのぶん、解釈が分かれる論点では断定を避け、条文と公式資料の原文をそのまま引用する方針を取っています。個別の契約が規制対象かどうかの判断は、消費生活センターか弁護士に確認してください。
- 金額は、法令で定まっているものと公的統計だけを置きます。中途解約の上限額や罰金の額は政令と法律の数字なのでそのまま示します。時給・生徒あたりの月謝・プラットフォームの相場には公定価格がないため、金額を置きません。
- 体験談は載せていません。筆者はオンライン家庭教師として稼働した経験がありません。時間や金額の試算はすべて「本記事が置いた前提」と明記しています。
- プラットフォームの条件は運営各社の公式ページの記載に限定し、まとめサイトの数字は使っていません。条件は改定されるため、申し込む前に公式ページで確認してください。
本記事の調査で埋まらなかった論点
今回当たったのは、特定商取引に関する法律、同法施行令、同法施行規則、消費者契約法、個人情報保護法、所得税法、所得税法施行令、労働基準法、学校教育法、民法、民事訴訟法、著作権法、消費税法、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律とその施行令(いずれもe-Gov法令検索の現行条文)、消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」、消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」、消費者庁「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」、消費者庁が平成30年2月16日に公表した指示の資料、国税庁の所得税基本通達と質疑応答事例、文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」、昭和60年12月19日の労働基準法研究会報告です。そのうえで、次の点は確認できませんでした。
- オンライン家庭教師の指導料の相場。国が定めた価格はなく、公的統計で「オンラインの個別指導」に絞った数値を確認できませんでした。
- 副業として稼働している家庭教師の人数。総務省の就業構造基本調査に「家庭教師」の区分を確認できませんでした。
- 家庭教師に関する消費生活相談の件数。国民生活センターが公表している2025年度の概要に、商品・サービス別の内訳として家庭教師の件数を確認できませんでした。
- オンライン家庭教師の講師報酬の分布。プラットフォーム各社の公式ページで手数料を公開しているのは一部にとどまり、横断的な集計値を確認できませんでした。
- 個人の役務提供事業者が指示や業務停止命令を受けた実例。消費者庁の執行事例は公表されていますが、特定継続的役務提供と個人事業者を掛け合わせた事例を確認できませんでした。
- プラットフォームが家庭と契約する主体になっているかどうかの各社の整理。利用規約の全文を確認できた社が限られたため、本記事は一般的な構造の説明にとどめています。
教える副業としては、ストアカの副業とココナラの副業も別にまとめてあります。どちらも単発の講座や出品が中心です。継続して同じ生徒を受け持つ形になると、必要なものが出品ページから書面に変わります。この記事は、その境目に絞ります。
目次
- 結論:相手と期間と総額の3つで変わります
- オンライン指導は法律上の「家庭教師」です
- 学習塾との違いは場所だけです
- 対象から外れる3つのケースがあります
- 同じ英語でも目的で項が変わります
- 副業の個人でも「役務提供事業者」です
- 2か月を超えないと規制は始まりません
- 5万円は費目の合計で数えます
- 回数券に期限がないと常に対象です
- 直接契約では書面が2通必要です
- 概要書面の記載事項は11項目です
- 契約書面には担当者の氏名が要ります
- 赤枠赤字と8ポイントは省けません
- 電子交付には事前の承諾が要ります
- 書面を出さないと拘禁刑があります
- 禁止行為は3つに分かれています
- 姓だけ書いて処分になった例があります
- 8日間は理由なしで解約されます
- 済んだ授業の代金も請求できません
- 8日を過ぎても中途解約はできます
- 上限は1か月分の授業料か5万円です
- 契約を変更すると8日がやり直しです
- 教材を売ると一緒に解約されます
- 市販の教材をPDFで送れません
- 違約金は平均的な損害までです
- 契約するのは保護者です
- 自分のサイトで募集すると通信販売です
- プラットフォーム経由だと立場が変わります
- 手数料30%の手取りを計算します
- 源泉徴収は支払う側で決まります
- 雇用なら労働時間が通算されます
- 生徒の名簿を作った時点で事業者です
- 家庭教師費の平均は年2万円台です
- 始める前に確認する3つのこと
- この記事が扱わない3つのこと
- 今日やること
- よくある質問
- まとめ
- 結論:相手と期間と総額の3つで変わります
- オンライン指導は法律上の「家庭教師」です
- 学習塾との違いは場所だけです
- 対象から外れる3つのケースがあります
- 同じ英語でも目的で項が変わります
- 副業の個人でも「役務提供事業者」です
- 2か月を超えないと規制は始まりません
- 5万円は費目の合計で数えます
- 回数券に期限がないと常に対象です
- 直接契約では書面が2通必要です
- 概要書面の記載事項は11項目です
- 契約書面には担当者の氏名が要ります
- 赤枠赤字と8ポイントは省けません
- 電子交付には事前の承諾が要ります
- 書面を出さないと拘禁刑があります
- 禁止行為は3つに分かれています
- 姓だけ書いて処分になった例があります
- 8日間は理由なしで解約されます
- 済んだ授業の代金も請求できません
- 8日を過ぎても中途解約はできます
- 上限は1か月分の授業料か5万円です
- 契約を変更すると8日がやり直しです
- 教材を売ると一緒に解約されます
- 市販の教材をPDFで送れません
- 違約金は平均的な損害までです
- 契約するのは保護者です
- 自分のサイトで募集すると通信販売です
- プラットフォーム経由だと立場が変わります
- 手数料30%の手取りを計算します
- 源泉徴収は支払う側で決まります
- 雇用なら労働時間が通算されます
- 生徒の名簿を作った時点で事業者です
- 家庭教師費の平均は年2万円台です
- 始める前に確認する3つのこと
- この記事が扱わない3つのこと
- 今日やること
- よくある質問
- まとめ
結論:相手と期間と総額の3つで変わります

オンライン家庭教師の副業は、契約の相手と期間と総額の3つで、別の法律関係になります。
資格は要りません。届出も要りません。ただし、家庭と直接契約したときだけ、特定商取引法の第4章が動き出します。この章の名前は「特定継続的役務提供」です。
動き出す条件は2つそろったときに限られます。役務の提供期間が2か月を超えること、そして相手が支払う金銭の総額が5万円を超えることです。特定商取引に関する法律施行令の第24条が、この2つを定めています。
| 判断する軸 | 規制が始まらない側 | 規制が始まる側 |
|---|---|---|
| 契約の相手 | プラットフォームと業務委託 | 家庭と直接契約 |
| 役務の提供期間 | 2か月以内(1か月単位の更新を含む) | 2か月を超える |
| 支払う金銭の総額 | 5万円以下 | 5万円を超える |
| 指導の目的 | 小学校・幼稚園の受験対策 | 中学以上の入試・学校の補習 |
| 生徒の学校 | 大学生の授業の補習 | 小中高生の学校の補習 |
3つの軸のうち1つでも左側にとどまれば、書面の交付義務もクーリング・オフも発生しません。右側に全部そろったときだけ、教える側が事業者として扱われます。
この記事は、右側にそろったときに何が必要になるかを条文で並べます。そのうえで、左側にとどめる設計も示します。
オンライン指導は法律上の「家庭教師」です
オンラインで教える行為は、法律上「家庭教師」に分類されます。
消費者庁は、Q&Aの中でこの点を明記しています。原文を引きます。
> ◎ファックスやテレビ電話による学習指導(通信教育)
> 役務の提供の形態を問わず、ファックスやテレビ電話によって提供されるいわゆる通信教育についても、入学試験や学校教育の補習のための学力の教授にあたれば「家庭教師」に該当します。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」)
「役務の提供の形態を問わず」という一句が効きます。画面越しかどうかは分類に影響しません。判断されるのは、教えている内容が「学力の教授」に当たるかどうかです。
Q&Aは「学力の教授」の意味も示しています。「理論、知識を教えることにより学力を向上させること」です。一方で、次の2つは学力の教授に当たらないとされています。
- 単なる教材の利用方法の説明
- 進学情報の提供
志望校の選び方を相談に乗るだけなら、この章の対象から外れます。数学の解き方を教え始めた時点で、対象に入ります。
「家庭教師」の条文はこう書かれています
政令の別表第四の四の項が、家庭教師の定義です。長いので、そのまま引きます。
> 学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び小学校を除く。)、同法第百二十四条に規定する専修学校若しくは同法第百三十四条第一項に規定する各種学校の入学者を選抜するための学力試験(義務教育学校にあつては、後期課程に係るものに限る。五の項において「入学試験」という。)に備えるため又は学校教育(同法第一条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)における教育をいう。同項において同じ。)の補習のための学力の教授(同項に規定する場所以外の場所において提供されるものに限る。)
> (特定商取引に関する法律施行令 別表第四 四の項・第一欄)
括弧が4つ入ります。読み解く順番は、入学試験の対象校、補習の対象校、場所の3つです。順に見ていきます。
学習塾との違いは場所だけです
家庭教師と学習塾を分けているのは、場所の一点だけです。
消費者庁のQ&Aは、この区別をこう説明しています。
> 学習塾と家庭教師の違いは、役務提供事業者が用意した場所で役務を提供するかしないのかということで区別します。その役務提供事業者が用意した場所で役務の提供を行えば学習塾になりますし、役務提供事業者が用意した場所以外の場所で役務を提供する場合には家庭教師というように区別されます。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」)
教える内容が同じでも、場所で項が変わります。そして項が変わると、中途解約の上限額が変わります。
Q&Aには、もう一段細かい注意も書かれています。
> 個別指導塾の形態は家庭教師に似ていますが、教室に生徒が通って習う学習塾の形態を取っていれば、法律上の学習塾に当たります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」)
借りた部屋も「用意した場所」に入ります
「事業者が用意した場所」は、自分の教室だけを指しません。Q&Aの回答24が範囲を示しています。
> 「役務提供事業者が容易〔原文ママ〕する場所」とは、典型的には学習塾の教室ですが、集会所やマンションの一室等を役務提供事業者が借り上げ、当該場所において役務を提供する場合もこれに含まれます。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A24)
副業でレンタルスペースを借りて教えると、学習塾側に寄ります。生徒の家に行くか、オンラインでつなぐと、家庭教師側です。自宅のPCから教える形は、事業者が用意した場所ではないため家庭教師に入ります。
対象から外れる3つのケースがあります

条文の括弧を読むと、規制の対象から外れるケースが3つ出てきます。
外れるということは、クーリング・オフも中途解約権も発生しないという意味です。教える側の書面の義務もありません。ただし、外れているかどうかを勘で判断すると事故になります。3つを順に確認します。
小学校と幼稚園の受験対策は外れます
四の項の入学試験は「学校教育法第一条に規定する学校(幼稚園及び小学校を除く。)」の入学試験です。消費者庁もQ&Aに注記を置いています。
> 注)小学校又は幼稚園に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」)
小学校受験の指導は、この章の外にあります。同じ小学生でも、学校の授業の補習を教えるなら中に入ります。補習側の対象校は「幼稚園及び大学を除く」学校だからです。小学校は除かれていません。
大学生の補習は外れます
補習の対象校からは大学が除かれています。大学生にレポートの書き方や線形代数を教えても、四の項には当たりません。
一方で、大学受験の指導は入学試験の準備です。大学は「幼稚園及び小学校を除く」学校に含まれます。高校3年生に大学受験を教えると対象、その生徒が入学した後に同じ科目を教えると対象外に変わります。生徒も科目も変わっていません。
義務教育学校は後期課程だけです
学校教育法第1条は、学校の範囲をこう定めています。
> この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
> (学校教育法 第一条)
義務教育学校は小学校と中学校を9年間でつなぐ学校です。別表第四の四の項は、義務教育学校の入学試験について「後期課程に係るものに限る」と絞っています。前期課程への入学対策は、小学校受験と同じ扱いです。
同じ英語でも目的で項が変わります
英語を教える場合、目的によって語学教室と家庭教師に分かれます。
別表第四の三の項は語学教室です。この項には除外の括弧が入っています。学校の入学試験に備えるための語学の教授と、大学以外の学校の補習のための語学の教授が除かれています。消費者庁も次のように整理しています。
> これらの学校の入学試験や学校教育法第一条に規定する学校(大学は除きます。)の教育の補習のために行われる役務提供は「語学の教授」にあたりませんが「家庭教師」や「学習塾」に当たる可能性があります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」)
| 教える内容 | 該当する項 | 中途解約の上限(提供開始後) | 提供開始前の上限 |
|---|---|---|---|
| 英検2級の対策 | 三の項(語学教室) | 5万円又は契約残額の20% | 1万5千円 |
| 高校入試の英語 | 四の項(家庭教師) | 5万円又は1か月分の対価 | 2万円 |
| 中学生に英会話 | 三の項(語学教室) | 5万円又は契約残額の20% | 1万5千円 |
| 大学入試の英語 | 四の項(家庭教師) | 5万円又は1か月分の対価 | 2万円 |
同じ生徒に同じ英文法を教えていても、その指導が入試や補習の対策かどうかで上限の計算式が変わります。分類を決めるのは実際の指導内容です。契約書の文言を書き換えて有利な項を選べる話ではありません。契約残額の20%と1か月分の対価は、まったく違う数字になります。
たとえば12か月・総額24万円の契約を1か月で解約した場合を置きます。語学教室なら契約残額22万円の20%で4万4千円です。家庭教師なら1か月分の2万円です。本記事が置いた前提での計算ですが、2倍以上ひらきます。
なお表の上限は、提供済みの授業料に上乗せできる額の上限です。法第49条第2項第1号は、提供された役務の対価と、政令が定める額を合算した額を上限としています。提供済み分は別に受け取れます。
浪人生の扱いだけ逆になります
学習塾と家庭教師で、生徒の限定が逆向きに働く場面があります。学習塾は対象者が絞られています。
> ・浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりません。(高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります。〔閉じ括弧は原文のまま〕
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A24)
家庭教師にはこの限定がありません。Q&Aの回答25が言い切っています。
> 「家庭教師」の定義は役務提供を受ける者の限定はありません。専業主婦や無職の者であっても該当します。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A25)
浪人生だけを集めたコースを教室で開けば、学習塾の定義から外れます。同じ浪人生をオンラインで教えると、家庭教師として対象に入ります。教室に通わせるほうが規制が緩く、オンラインのほうが厳しいという逆転が起きています。これは本記事が別表第四とQ&Aを突き合わせて確認した点です。
高校卒業程度認定試験(高認)の指導も同じ構造です。社会人が受けるなら学習塾には当たりません。オンラインで教えれば家庭教師に当たります。
副業の個人でも「役務提供事業者」です
法律の「事業者」は、法人か個人かで決まりません。
消費者庁の逐条解説は、役務提供事業者の意味をこう説明しています。
> 役務の提供を業として行う者の意味であり、「業として営む」とは、営利の意思をもって、反復継続して取引を行うこと
> (消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第4章・令和6年3月19日版)
判断されるのは営利の意思と、反復継続かどうかの2点です。会社員が副業で週1回教えていても、報酬を得て毎週続けていれば両方を満たします。開業届を出しているかどうかも関係ありません。
「営業として」の適用除外は生徒側の話です
法第50条第1項第1号は適用除外を定めています。読み間違えやすい条文です。
> 一特定継続的役務提供等契約で、特定継続的役務提供受領者等が営業のために又は営業として締結するものに係る特定継続的役務提供
> (特定商取引に関する法律 第五十条第一項第一号)
除外されるのは「受領者等」が営業目的で契約した場合です。受領者は生徒の側です。教える側が副業であることは、除外の理由になりません。家庭が子どものために契約するなら、除外には当たりません。
同じ第50条第1項は、国や地方公共団体が行うもの、労働組合が構成員に行うもの、事業者が従業者に行うものも除いています。個人の副業はどれにも入りません。
屋号に「学校」は使えません
届出も許可も要らないと書きましたが、名前には制限があります。学校教育法第135条第1項です。
> 専修学校、各種学校その他第一条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。
> (学校教育法 第百三十五条第一項)
第1条に掲げる学校の名称は、幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校です。屋号を「〇〇中学校」「〇〇大学」にはできません。同法第146条は、この違反に10万円以下の罰金を定めています。
同条第2項では、専修学校以外が「高等専修学校」「専門学校」「専修学校」の名称を使うことも禁じられています。「〇〇学院」「〇〇ゼミ」「〇〇個別指導」なら制限の外です。
公務員の場合は、屋号より前に許可の問題があります。詳しくは公務員の副業でまとめています。
副業と本業の扱いの違いは、副業の開業届でもまとめています。開業届と特定商取引法の事業者性は別の判断です。
2か月を超えないと規制は始まりません
期間の条件は、政令の第24条が定めています。
> (特定継続的役務提供の期間及び金額)第二十四条
> 法第四十一条第一項第一号の政令で定める期間は、別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第二欄に掲げる期間とする。
> 2法第四十一条第一項第一号の政令で定める金額は、五万円とする。
> (特定商取引に関する法律施行令 第二十四条)
別表第四の第二欄は、家庭教師と学習塾について「二月」と書いています。つまり2か月を超える契約でなければ、この章の規制は始まりません。エステと美容医療だけは1月です。
月謝制なら原則として外れます
消費者庁のQ&Aは、月謝制について次のように答えています。
> 1ヶ月単位で契約が更新される月謝制で学習塾の役務が提供されている場合、「政令で定める期間」を満たさないため、本章の規制を原則として受けませんが、例えば、役務の提供に必要である等として教材を販売しており、契約の実態として、役務の提供を受ける者が政令で定める期間を越えて契約に拘束されると判断される場合は、本章の規制を受ける場合があります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A27)
「原則として受けません」と「受ける場合があります」が同じ回答に並んでいます。分かれ目は契約の実態です。1か月単位で更新する形にしても、教材を売って長期の拘束が生じていれば規制側に戻ります。
副業ではこの設計がいちばん軽い
副業で始める人にとって、1か月単位の更新はいちばん現実的な設計です。書面2通の交付も、赤枠赤字の作り込みも要りません。
ただし、次の3つを同時に満たす必要があります。
- 契約の期間を1か月とし、更新のたびに合意を取り直す
- 前払いで数か月分をまとめて受け取らない
- 教材を売って長期の拘束を作らない
年間契約の割引を提示した時点で、期間の条件に入ります。「12か月まとめて申し込むと1割引き」は、規制が始まる側への切り替えスイッチです。
まず1か月単位で始めて、続きそうになってから書面2通を整えるという順番でも構いません。
5万円は費目の合計で数えます
金額の条件は、授業料だけを見て判断しません。
消費者庁のQ&Aは、対価の数え方をこう示しています。
> 「対価」については、入学金(入会金)・受講料・教材費・施設利用費、関連商品の販売等、契約金の総額が5万円を超えていると対象になります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A2)
入会金や教材費を別立てにしても、合計で数えられます。授業料を4万9千円に抑えて、テキスト代を5千円取ると、合計5万4千円で対象に入ります。
| 費目 | 合計に入るか |
|---|---|
| 入学金・入会金 | 入る |
| 受講料・授業料 | 入る |
| 教材費・テキスト代 | 入る |
| 施設利用費 | 入る |
| 関連商品の販売代金 | 入る |
| 入会試験の検定料 | 入る(施行規則第94条第1項) |
施行規則第94条第1項が、契約書面に書く金額の内訳を挙げています。入学金、入会金、授業料その他の役務の対価、施設整備費、入学又は入会のための試験に係る検定料。省令が想定している費目が、そのまま合計の対象です。
無料と言っても対価性があれば入ります
Q&Aの回答21は、「無料」と「無償」を区別しています。
> 無償と無料とは異なり、実質的に「無償」であるかどうかで判断されます。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A21)
「初回の授業は無料です」と言っても、全体の契約の中で経済的な価値があるなら有償として数えられます。体験授業を無料にして本契約を結ぶ形は、本契約の総額で判断されます。
回数券に期限がないと常に対象です
回数券や月謝以外の売り方には、期間の判断に落とし穴があります。
Q&Aの回答3が、チケット制と会員権制の扱いを定めています。
> このうち、有効期限のあるものについては、有効期限内はいつでも役務提供を受けることが可能なことから、有効期限をもって役務提供期間とみなし、これが基準期間を超えれば対象となり、また有効期限のないものについては、いつでも使用可能ということから、役務提供期間は常に基準期間を超えるとみなします。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A3)
有効期限を書かない回数券は、役務提供期間が常に2か月を超えるとみなされます。「10回分6万円、いつでも使えます」という売り方は、期間と金額の両方を満たします。
期限を2か月以内に切れば、期間の条件から外れます。ただし、使い切れない生徒との間でトラブルになりやすい設計でもあります。
第三者が売ると別の契約になります
Q&Aは、回数券を第三者が売る場合にも触れています。
> なお、こうしたチケットや会員権を、役務提供を行う事業者以外の第三者が販売する場合には、「特定権利販売契約」として、同様に法律の対象となります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A3)
法第41条第1項第2号の「特定権利販売契約」です。プラットフォームが回数券を売り、教える人は指導だけを担当する形がこれに当たります。売る側にも書面の義務が生じます。
直接契約では書面が2通必要です

規制が始まると、最初に来るのが書面の交付義務です。しかも2通あります。
法第42条は、交付する書面を2つに分けています。第1項が契約前の概要書面、第2項が契約後の契約書面です。
> 役務提供事業者又は販売業者は、(中略)特定継続的役務提供等契約を締結しようとするときは、当該特定継続的役務提供等契約を締結するまでに、主務省令で定めるところにより、当該特定継続的役務提供等契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。
> (特定商取引に関する法律 第四十二条第一項)
> 2役務提供事業者は、特定継続的役務提供契約を締結したときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、次の事項について当該特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面を当該特定継続的役務の提供を受ける者に交付しなければならない。
> (特定商取引に関する法律 第四十二条第二項)
第1項は「締結するまでに」、第2項は「締結したときは、遅滞なく」です。契約書1通にまとめて署名をもらう運用では、第1項を満たせません。
消費者庁の逐条解説も、この2通が別物であることを明記しています。1通目は契約の内容を検討するための資料、2通目は結んだ内容を確定させる書面です。役割が違います。
順番を守らないと意味がありません
概要書面を契約と同時に渡すと、検討する時間がなくなります。第1項の趣旨から外れます。実務では次の順番になります。
- 概要書面を渡す
- 生徒側が検討する
- 契約を結ぶ
- 契約書面を遅滞なく渡す
- 契約書面を渡した日から8日間のクーリング・オフ期間が動く
5番目に注意が必要です。クーリング・オフの起算日は契約日ではありません。契約書面を渡した日です。契約書面を渡すのが遅れると、解除できる期間がその分だけ後ろにずれます。
概要書面の記載事項は11項目です

概要書面に書くことは、省令が細かく決めています。
施行規則第92条第1項第1号が、特定継続的役務提供契約の概要書面の記載事項です。イからルまで、本記事が数えると11項目あります。
| 記号 | 記載する内容 |
|---|---|
| イ | 役務提供事業者の氏名・住所・電話番号(法人は代表者の氏名も) |
| ロ | 提供される役務の内容 |
| ハ | 購入が必要な商品がある場合の商品名・種類・数量 |
| ニ | 役務の対価その他支払わなければならない金銭の概算額 |
| ホ | ニの金銭の支払の時期及び方法 |
| ヘ | 役務の提供期間 |
| ト | 法第48条第1項によるクーリング・オフに関する事項 |
| チ | 法第49条第1項による中途解約に関する事項 |
| リ | 割賦販売法に基づく抗弁の接続に関する事項(クレジットで支払う契約のとき、教える側とのもめ事を理由に信販会社への支払いを止められるという仕組み) |
| ヌ | 前払取引を行う場合の前受金の保全措置の有無と内容 |
| ル | 特約があるときはその内容 |
イが最初に来ている点が、副業では引っかかります。住所と電話番号を書きます。自宅の住所を生徒の家庭に渡すことになります。
前受金の保全措置は5万円が境目です
前払取引を定義しているのは法第45条第1項です。役務の提供に先立って政令で定める金額を超える金銭を受け取る取引を指します。その金額は施行令第27条が5万円と定めています。省令ヌは、その前受金に保全措置を講じているかを概要書面に書かせる規定です。
この場合、法第45条第1項が別の義務を課します。業務及び財産の状況を記載した書類を事務所に備え置く義務です。第2項では、生徒側にその閲覧を求める権利があります。
> 2特定継続的役務提供に係る前払取引の相手方は、前項に規定する書類の閲覧を求め、又は同項の役務提供事業者若しくは販売業者の定める費用を支払つてその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
> (特定商取引に関する法律 第四十五条第二項)
副業の個人が財務書類を作って備え置くのは、現実的ではありません。前払いを5万円以下に抑えるか、都度払いにするのが実務的な逃げ道です。書類を備え置かなかった場合の罰則は、法第72条第1項第7号の100万円以下の罰金です。
契約書面には担当者の氏名が要ります
契約書面の記載事項は、法律と省令に分かれて書かれています。
法第42条第2項が7号を挙げ、そのうち第1号と第7号を省令が展開します。施行規則第93条第1項が第1号の4項目、第2項が第7号の8項目です。本記事が重複を除いて数えると、契約書面には17項目を書きます。
役務の数量の総計を書きます
施行規則第93条第1項は、役務の内容として次の4つを求めています。
- 役務の種類
- 役務提供の形態又は方法
- 役務を提供する時間数、回数その他の数量の総計
- 役務を直接提供する者の資格・能力等に関する特約があるときはその内容
3つ目が効きます。「週1回」では足りません。契約期間を通じた総回数か総時間数を書きます。
担当者の氏名を書きます
施行規則第93条第2項は、次の8項目を求めています。
| 号 | 記載する内容 |
|---|---|
| 一 | 役務提供事業者の氏名・住所・電話番号 |
| 二 | 特定継続的役務提供契約の締結を担当した者の氏名 |
| 三 | 契約の締結の年月日 |
| 四 | 購入が必要な商品の種類及び数量 |
| 五 | 割賦販売法に基づく抗弁の接続に関する事項 |
| 六 | 前払取引を行う場合の前受金の保全措置の有無と内容 |
| 七 | 購入が必要な商品を販売する者の氏名・住所・電話番号 |
| 八 | 特約があるときはその内容 |
第2号の「締結を担当した者の氏名」は、個人で教える場合には自分の氏名です。第1号の事業者名と重なりますが、省令は両方を求めています。
金額は費目ごとの明細で書きます
施行規則第94条第1項は、金額の書き方を指定しています。
> 入学金、入会金、授業料その他の役務の対価、施設整備費、入学又は入会のための試験に係る検定料、役務の提供に際し役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品の価格その他の費目ごとの明細及びその合計
> (特定商取引に関する法律施行規則 第九十四条第一項)
「総額12万円」の1行では足りません。費目ごとに分けて、合計も書きます。あわせて、中途解約の精算方法も第94条第1項の表の第三号ロで求められています。
赤枠赤字と8ポイントは省けません
書面の見た目にも決まりがあります。ここを知らずに作った書面は、記載事項を満たしていても不備になります。
施行規則は、概要書面と契約書面の両方に次の要求を置いています。
| 対象 | 要求 | 根拠 |
|---|---|---|
| 概要書面 | 内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載 | 施行規則第92条第2項 |
| 概要書面 | JIS Z 8305の8ポイント以上の文字と数字 | 施行規則第92条第3項 |
| 契約書面 | クーリング・オフに関する事項を赤枠の中に赤字で記載 | 施行規則第94条第3項 |
| 契約書面 | 内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載 | 施行規則第94条第4項 |
| 契約書面 | JIS Z 8305の8ポイント以上の文字と数字 | 施行規則第94条第5項 |
赤枠赤字にするのは2種類です
契約書面では、クーリング・オフの説明そのものを赤枠赤字にします。注意書きだけではありません。第94条第1項の表の第二号の下欄は、イからヲまで15項目の説明で構成されています。それが全部、赤枠の中に赤字で入ります。
もう1つは「書面の内容を十分に読むべき旨」です。こちらは概要書面にも要ります。施行規則第92条第2項と第94条第4項の2箇所に同じ要求が置かれています。
8ポイントはカラー印刷が前提です
省令の条文を並べて数えていて、意外だったのがこの2つです。記載事項を全部そろえても、色と文字の大きさで不備になります。JIS Z 8305は活字の大きさの規格です。8ポイントは、本文としては小さい側の下限にあたります。モノクロで印刷すると赤字が黒になるため、カラー印刷が前提になります。
電子交付には事前の承諾が要ります
オンラインで完結させたい場合、書面を電子で渡す方法があります。ただし手順が決まっています。
法第42条第4項が電磁的方法による提供を認めています。条件は承諾を得ることです。
> 4役務提供事業者又は販売業者は、前三項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、(中略)承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該役務提供事業者又は当該販売業者は、当該書面を交付したものとみなす。
> (特定商取引に関する法律 第四十二条第四項)
承諾の取り方は施行令第26条第1項が定めています。あらかじめ電磁的方法の種類と内容を示し、そのうえで「書面等によつて」承諾を得ます。
承諾は口頭では足りません
施行令は承諾を「書面等」で得るよう求めています。口頭の了解では要件を満たしません。手順は次のようになります。
- 使う電磁的方法の種類と内容を示す
- その内容について書面等で承諾を得る
- 概要書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供する
- 契約後、契約書面に記載すべき事項を同じ方法で提供する
施行令第26条第2項では、生徒側が「提供を受けない旨の申出」をしたら電磁的方法で送ってはならないとされています。一度承諾をもらっても、撤回されれば紙に戻ります。
赤枠赤字と8ポイントの満たし方も公表されています
消費者庁は「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」を公表しています。省令の要求を電子交付でどう満たすかを示した資料です。
ガイドラインは、消費者が「当該事項を明瞭に読むことができるように表示しなければならない」ことを要件としています。そして不適切な例を挙げています。
> 例えば、赤地に赤字を表示するといったような場合、印刷して8ポイントを下回るような極端に小さな文字で表示するような場合
> (消費者庁「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」)
赤字は残したまま、地の色で読めなくする方法は通りません。印刷したときに8ポイントを下回る文字も通りません。PDFの倍率を下げて1ページに詰める作り方が、そのまま不適切な例に当たります。
ガイドラインは承諾の取り方も示しています。訪問販売の条文を例に、申込みをした者が「氏名及び第1項の説明の内容を理解した旨を記入する」方式が挙げられています。チェックボックスを1つ置くだけの設計では足りない読み方になります。
到達の時点も条文で決まっています
法第42条第5項は、到達したとみなす時点を定めています。相手のPCに備えられたファイルへの記録がされた時です。送信した時ではありません。
クーリング・オフの起算日は契約書面を受領した日です。電子交付の場合、この記録がされた日が起点になります。送信して届かなかった場合、8日間はまだ始まっていません。
なお、クーリング・オフの通知は生徒側からも電磁的記録で出せます。法第48条第1項が「書面又は電磁的記録により」と定めています。
書面を出さないと拘禁刑があります
書面の義務には罰則が付いています。行政処分だけではありません。
法第71条第1号が、書面の不交付と記載の不備を罰しています。条文にある「拘禁刑」は、2025年6月に懲役と禁錮を一本化した刑の名前です。
> 第七十一条
> 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
> 一(中略)第四十二条第一項から第三項まで(中略)の規定に違反して、書面を交付せず、又はこれらの規定に規定する事項が記載されていない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付したとき。
> (特定商取引に関する法律 第七十一条)
条文は3つの行為を並べています。交付しないこと、記載事項が欠けた書面を交付すること、虚偽の記載がある書面を交付することです。書面を渡していても、1項目抜けていれば同じ条文に当たります。
ほかの罰則も確認しておきます
第4章に関する罰則を並べます。
| 違反 | 罰則 | 根拠 |
|---|---|---|
| 勧誘時や解除を妨げるための不実告知(法第44条) | 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金 | 法第70条第1号 |
| 書面の不交付・記載漏れ・虚偽記載(法第42条) | 6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | 法第71条第1号 |
| 主務大臣の指示に従わない(法第46条第1項) | 6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金 | 法第71条第2号 |
| 誇大広告等(法第43条) | 100万円以下の罰金 | 法第72条第1項第1号 |
| 前払取引の書類を備え置かない(法第45条第1項) | 100万円以下の罰金 | 法第72条第1項第7号 |
| 書類の閲覧を正当な理由なく拒む(法第45条第2項) | 100万円以下の罰金 | 法第72条第1項第8号 |
誇大広告についてはもう1つ仕組みがあります。法第43条の2により、主務大臣は表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められます。提出しないと、その表示は誇大広告に当たるものとみなされます。
この法律の「主務大臣」は、法第67条第1項が対象事項ごとに定めています。原則として内閣総理大臣と経済産業大臣です。同条第3項で権限の一部が消費者庁長官に委任され、法第68条では主務大臣の権限に属する事務の一部を都道府県知事が行うこととできると定められています。
「3か月で偏差値10アップ」と書くなら、その根拠の資料を先に用意しておく必要があります。
業務停止命令は2年以内です
法第47条第1項は、業務停止命令を定めています。期間は2年以内です。同項は、事業者が個人である場合について、同じ期間を定めて法人の役員となることの禁止を併せて命じられるとしています。なお法人の役員などを名指しして業務を禁じる命令は、法第47条の2に別に置かれています。
禁止行為は3つに分かれています
書面の義務とは別に、してはいけない行為が定められています。
法第44条が3つの類型を置いています。第1項が不実告知、第2項が故意の事実不告知、第3項が威迫による困惑です。第1項が対象とする事項には、役務の内容や効果、対価、支払の時期と方法、役務の提供期間、そして解除に関する事項が含まれます。
副業で踏みやすいのは効果の告知です。理由は法律の建付けにあります。法第41条第2項が、特定継続的役務をこう定義しています。
> 一役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの
> 二役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの
> (特定商取引に関する法律 第四十一条第二項)
第2号が効きます。「成績が上がるかどうかは確実でない」ことが、この章の対象になる理由そのものです。そのうえで「必ず合格させます」と言えば、法が確実でないと決めた事柄を確実だと告げたことになります。
取消権は8日を過ぎても使えます
第44条違反には、罰則とは別に民事の効果があります。法第49条の2第1項です。不実告知や故意の事実不告知によって誤認し、それによって申込みや承諾の意思表示をしたときは、生徒側がその意思表示を取り消せます。
取消しは、契約をはじめからなかったことにします。クーリング・オフや中途解約と違い、8日という期間の縛りがありません。
ただし無期限ではありません。法第49条の2第2項が法第9条の3第2項以下を準用しています。追認をすることができる時から1年、契約の締結の時から5年で時効にかかります。「絶対に上がります」の一言が、何か月あとでも契約を消す材料になります。
同じ趣旨は消費者契約法第4条にもあります。断定的判断の提供による誤認も取消しの対象です。成績や合格という不確実な事柄について言い切らない、という運用がいちばん安全です。
指示は書面以外でも来ます
法第46条第1項は、指示の対象となる行為を挙げています。第42条から第45条までの違反に加えて、次のような行為が並びます。
- 契約に基づく債務、または解除によって生じる債務の履行を拒否したり不当に遅延させること
- 勧誘に際し、顧客の判断に影響を及ぼす重要な事項を故意に告げないこと
- 解除を妨げるため、重要な事項を故意に告げないこと
返金を先延ばしにすることも、この第1号に当たり得ます。指示に従わなければ、法第71条第2号の罰則が来ます。
姓だけ書いて処分になった例があります
書面の記載が実際に問題になった処分の例があります。
消費者庁は2018年2月16日に、家庭教師の派遣及び学習塾における指導を行う事業者へ指示を出しました。対象は株式会社アルファコーポレーションです。指示の理由には、書面の記載の誤りが並んでいます。
公表資料によると、学習塾の契約書面には誤った上限額が書かれていました。記載は「1月分の月謝相当額又は5万円のいずれか低い額」。正しい上限は「2万円又は本件学習塾役務提供契約における1月分の役務の対価に相当する額のいずれか低い額」です。家庭教師の数字を学習塾の書面に書いていたことになります。
提供開始前の上限も誤っていました。「2万円」と書かれていましたが、学習塾は1万1千円が上限です。
そして家庭教師の契約については、契約書面に「契約締結担当者の姓のみを記載した」と指摘されています。施行規則第93条第2項第2号は「氏名」を求めています。姓だけでは足りません。
この処分から読み取れること
公表資料の指摘を1つずつ別表第四と照らし合わせていて、手が止まったのがここでした。3つの指摘は、どれも書面の1行の話です。教えた内容や指導の質は問われていません。
- 別の項の上限額を書き写した
- 提供開始前の額を別の項の数字にした
- 氏名の一部を省いた
書面の作成は、教えることとまったく別の作業です。本記事が別表第四を並べて確認したかぎり、四の項と五の項の上限額は3万円ずれます。提供開始前の額は9千円ずれます。書き写すと必ずどちらかが間違います。
8日間は理由なしで解約されます

規制が始まった契約には、クーリング・オフが付きます。
法第48条第1項が定めています。起算日は契約書面を受領した日です。
> 役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務提供等契約を締結した場合におけるその特定継続的役務提供受領者等は、第四十二条第二項又は第三項の書面を受領した日から起算して八日を経過したときを除き、書面又は電磁的記録によりその特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる。
> (特定商取引に関する法律 第四十八条第一項・一部省略)
理由は要りません。生徒側の一方的な意思表示で解除されます。効力の発生時点も条文で決まっています。第3項により、通知を発した時です。届いた時ではなく、出した時に効力が生じます。
8日が延びる場合があります
第48条第1項の括弧の中に、期間が延びる仕組みが書かれています。事業者が解除に関する事項について不実のことを告げたり、威迫して困惑させた場合です。
その場合は、解除ができる旨を記載した書面を改めて交付し、その受領日から8日を数え直します。「解約はできません」と伝えてしまうと、8日はいつまでも始まりません。
不利な特約は無効になります
法第48条第8項は、この条の規定に反する特約で受領者に不利なものを無効としています。契約書に「クーリング・オフは適用しません」と書いても効きません。
同じ構造は中途解約にもあります。法第49条第7項が同じ内容を定めています。
済んだ授業の代金も請求できません
クーリング・オフの効果は、契約を将来に向かって終わらせるだけではありません。
法第48条第6項が、提供済みの役務についても対価の請求を禁じています。
> 6役務提供事業者又は販売業者は、第一項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除があつた場合には、既に当該特定継続的役務提供等契約に基づき特定継続的役務提供が行われたときにおいても、特定継続的役務提供受領者等に対し、当該特定継続的役務提供等契約に係る特定継続的役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
> (特定商取引に関する法律 第四十八条第六項)
8日以内に解除されると、すでに行った授業は無償になります。2回教えていても、3回教えていても同じです。
さらに第7項は、受領した金銭の返還を求めています。速やかに返します。第4項では、解除に伴う損害賠償や違約金の請求もできません。
| 項 | 効果 |
|---|---|
| 第48条第3項 | 通知を発した時に効力が生じる |
| 第48条第4項 | 損害賠償・違約金を請求できない |
| 第48条第6項 | 提供済みの役務の対価を請求できない |
| 第48条第7項 | 受領した金銭を速やかに返還する |
| 第48条第8項 | 不利な特約は無効 |
副業としての現実的な意味
週2回のペースで教えると、8日間で2回から3回の授業が入ります。契約書面を渡してから8日が過ぎるまでは、その分の報酬が確定しません。
前払いで受け取っていた場合は返金します。これを避けたいなら、最初の8日間は授業を入れないという設計もあります。ただし生徒側の都合もあるため、実務では入れることが多くなります。
8日を過ぎても中途解約はできます
8日を過ぎると解除できなくなる、という理解は誤りです。
法第49条第1項が、中途解約権を定めています。条件は「将来に向かつて」だけです。
> 役務提供事業者が特定継続的役務提供契約を締結した場合におけるその特定継続的役務の提供を受ける者は、第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後においては、将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。
> (特定商取引に関する法律 第四十九条第一項・一部省略)
理由は要りません。期間の制限もありません。契約が続いているかぎり、いつでも解除されます。1年契約でも、11か月目に解除されます。
クーリング・オフとの違いは、提供済み分の扱いです。中途解約では、提供した分の対価を受け取れます。
| 比べる点 | クーリング・オフ | 中途解約 |
|---|---|---|
| 時期 | 契約書面の受領から8日以内 | 8日を経過した後 |
| 根拠 | 法第48条第1項 | 法第49条第1項 |
| 提供済み分の対価 | 請求できない | 請求できる |
| 上乗せできる額 | なし | 政令が定める額まで |
| 前払金 | 全額返す | 精算して返す |
| 通知の方法 | 書面又は電磁的記録 | 条文に方法の限定なし |
精算方法は契約書面に書きます
施行規則第94条第1項の表の第三号ロは、中途解約の説明として「提供された役務の対価の精算方法」を書くよう求めています。
12か月24万円の契約を4か月目に解除された場合を置きます。月2万円で4か月分の8万円を提供済みとして精算するのか、それとも回数で割るのかを、あらかじめ書面に書いておきます。本記事が置いた前提の計算ですが、計算方法を書いていないと後で争いになります。
上限は1か月分の授業料か5万円です
中途解約のときに上乗せして請求できる額には、上限があります。
法第49条第2項が、その構造を定めています。提供開始後の解除なら2つを合算した額が上限です。
> 一当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合次の額を合算した額
> イ提供された特定継続的役務の対価に相当する額
> ロ当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額
> (特定商取引に関する法律 第四十九条第二項第一号)
ロの政令の額が、別表第四の第三欄です。家庭教師は次のように書かれています。
> 五万円又は当該特定継続的役務提供契約における一月分の役務の対価に相当する額のいずれか低い額
> (特定商取引に関する法律施行令 別表第四 四の項・第三欄)
月謝が2万円なら、上乗せできるのは2万円までです。5万円と比べて低い方だからです。月謝が6万円の契約なら、5万円が上限になります。
提供開始前は2万円です
まだ1回も教えていない段階で解除された場合、法第49条第2項第2号が適用されます。別表第四の第四欄の額です。家庭教師は2万円です。
| 役務の種類 | 提供開始後の上乗せ上限 | 提供開始前の上限 |
|---|---|---|
| 家庭教師(四の項) | 5万円又は1か月分の対価の低い額 | 2万円 |
| 学習塾(五の項) | 2万円又は1か月分の対価の低い額 | 1万1千円 |
| 語学教室(三の項) | 5万円又は契約残額の20%の低い額 | 1万5千円 |
| パソコン教室(六の項) | 5万円又は契約残額の20%の低い額 | 1万5千円 |
| 結婚相手紹介(七の項) | 2万円又は契約残額の20%の低い額 | 3万円 |
家庭教師と学習塾を並べると、提供開始後で3万円、提供開始前で9千円ずれます。教える場所が違うだけで数字が変わります。この表を取り違えたことが、前章で触れた行政処分の理由でした。
入会金を返さない特約は無効です
入会金や入学金を「返金しない」と書いても効きません。消費者庁のQ&Aが明言しています。
> 「入学金(入会金)は返還しない」等の特約は無効になります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A15)
入会金も中途解約の精算の対象に入ります。上限の外に置ける費目ではありません。初期費用を入会金の名前で先に取り切る設計は成立しません。
Q&Aは、初期費用を請求できる場合の条件も示しています。具体的な費目を書面に記載し、中途解約の場合には請求できる旨を明示することです。そのうえで、政令が定める額の枠の中に収まる必要があります。
遅延損害金は別に加算できます
法第49条第2項は「これに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額」と書いています。上限額の計算とは別に、遅延損害金を乗せられます。法定利率は民法で定まる率です。
契約を変更すると8日がやり直しです
契約の途中で条件を変えると、書面の義務が戻ってきます。
消費者庁のQ&Aは、契約内容が変更された場合の扱いを示しています。
> 新たな契約が締結されたと考えられる場合には、新契約について法律の要件に該当するか判断し、該当する場合には新たに書面交付等を行い、新書面交付の時点を起算点としてクーリング・オフをすることができることになります。
> (消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」A5)
新たな契約とみなされると、契約書面を作り直します。そしてクーリング・オフの8日間が、新しい書面を渡した日からもう一度動き出します。
変更が起きやすい場面を並べます
副業の家庭教師で条件が動くのは、だいたい次のときです。
| 変更 | 新たな契約とみなされやすいか |
|---|---|
| 月謝を上げる | みなされやすい |
| 週1回から週2回に増やす | みなされやすい |
| 科目を1つ追加する | みなされやすい |
| 契約期間を延長する | みなされやすい |
| 授業の曜日だけ変える | 変更にとどまりやすい |
| 生徒の学年が上がる | 変更にとどまりやすい |
Q&Aは、変更にとどまる場合はクーリング・オフを新たに行使できないとしています。ただしその場合も、変更した内容を書面で明らかにすることが求められます。
条文を並べて数えていて気づいたのは、この点が書面作成の負担を何倍にもするところです。月謝を上げた月は、既に教えた分の代金を8日間請求できない状態が再現します。値上げのタイミングを月の頭に置くと、この8日が授業のある日と重なります。
教材を売ると一緒に解約されます
教材やタブレットを一緒に売ると、それも解除の対象に入ります。
法第48条第2項が、関連商品の販売契約についてもクーリング・オフを認めています。関連商品は政令が指定します。施行令第29条第1項が別表第五を指しています。
別表第五第三号が、家庭教師と学習塾と語学教室の関連商品です。
> 三別表第四の三の項から五の項までに掲げる特定継続的役務にあつては、次に掲げる商品
> イ書籍
> ロ電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法により音、影像又はプログラムを記録した物
> ハファクシミリ装置及びテレビ電話装置
> (特定商取引に関する法律施行令 別表第五第三号)
イの「書籍」がいちばん広く効きます
イの「書籍」が広く効きます。参考書やオリジナルテキストを売っていると、それも一緒に解除されます。ロには動画教材やデータが入ります。
ハに「テレビ電話装置」が入っています
ハの「テレビ電話装置」は、オンライン家庭教師にとって現実的な項目です。専用のカメラやマイクをセットで販売すると、関連商品に当たり得ます。
引取りの費用は売った側の負担です
法第48条第5項は、関連商品の引取りに要する費用を販売した側の負担としています。第4項では、関連商品の販売を行った者も損害賠償や違約金を請求できません。
消費した教材だけは例外があります
法第48条第2項のただし書きは、使用や消費で価額が著しく減少する商品を政令で指定しています。施行令第29条第2項が、別表第五第一号イ・ロと第二号を挙げています。
第一号と第二号はエステと美容医療の関連商品です。第三号の書籍と記録媒体は、このただし書きの対象に入っていません。つまり読んだ後の参考書でも解除されます。
中途解約の場合は扱いが違います。法第49条第5項と第6項により、関連商品も解除できますが、返還された商品の通常の使用料に相当する額は請求できます。
市販の教材をPDFで送れません
教材の扱いには、特定商取引法とは別の制約があります。
著作権法第35条第1項は、授業のための複製と公衆送信を認めています。ただし対象が限られています。
> 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(中略)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。
> (著作権法 第三十五条第一項)
括弧の中が効きます。「営利を目的として設置されているものを除く」ため、副業の家庭教師はこの条文を使えません。認可を受けていない塾や予備校も同じです。なお条文にある「公衆送信」は、インターネットで送ったり画面に流したりする行為を指します。
使える方法と使えない方法を分けます
教材の扱いは、複製に当たるか公衆送信に当たるかで分かれます。
| やり方 | 著作権法上の扱い |
|---|---|
| 市販の問題集をスキャンしてPDFで送る | 複製権・公衆送信権の侵害になり得る |
| 市販の問題集を画面共有する | 公衆送信に当たり得る |
| 生徒が持っている同じ本を各自で開く | 問題にならない |
| 生徒に同じ本を書店で買ってもらう | 問題にならない |
| 自分で作った教材を使う | 問題にならない |
| 説明のため一部を引用する | 第32条の引用の要件を満たせば可 |
第30条の私的使用のための複製も使えません。副業は事業のための利用です。いちばん現実的な運用は、生徒に同じ本を持たせて各自で開くことです。
自作テストにも制約があります
著作権法第36条第1項は、試験問題としての複製と公衆送信を認めています。ただし第2項は、営利を目的として複製や公衆送信を行う者に、通常の使用料の額に相当する額の補償金の支払いを義務づけています。
模試や確認テストを自作して市販の文章を載せる場合、この第2項がかかります。過去問を配るのも同じ論点です。
録画にも権利の整理が要ります
授業を録画して生徒に渡す運用も広がっています。この場合、画面に写った教材が複製されます。生徒の顔と声も入ります。
録画をサンプル授業として公開するなら、本人と保護者の同意を別に取ります。個人情報の扱いは、あとの章でまとめます。
違約金は平均的な損害までです
特定商取引法の外側にも、違約金を抑える条文があります。
消費者契約法第9条第1項第1号が、損害賠償額の予定と違約金の上限を定めています。
> 一当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であつて、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの当該超える部分
> (消費者契約法 第九条第一項第一号)
基準は「平均的な損害の額」です。超える部分が無効になります。特定商取引法の上限より低い額しか認められない場面もあります。
2か月以内の契約なら特定商取引法は動きませんが、消費者契約法は動きます。期間が短いから何を書いてもよい、という話にはなりません。
算定根拠の説明は努力義務です
第9条第2項は、違約金を請求するときに、消費者から求められたら算定根拠の概要を説明するよう努めることを求めています。努力義務ですが、説明できない根拠は平均的な損害の立証でも通りません。
遅延損害金は年14.6%までです
第9条第1項第2号は、支払いが遅れた場合の損害賠償について年14.6%を上限としています。月謝の滞納に対する遅延損害金をこれより高く設定しても、超える部分は無効です。
第8条の2も確認しておきます。事業者の債務不履行により生じた消費者の解除権を放棄させる条項は無効です。「体調不良で授業を提供できなかった場合も解約できません」という条項は効きません。
1回のキャンセル料は別枠です
当日ドタキャンのキャンセル料は、契約の解除ではありません。法第49条の中途解約の上限とは別の話です。
判断の軸になるのは、同じく消費者契約法第9条第1項第1号の平均的な損害です。「前日まで無料、当日は100%」の条項が、この平均的な損害を超えないかを自分で説明できる必要があります。振替の可否とセットで決めると、根拠を立てやすくなります。
第10条も効きます。法令の適用による場合に比べて消費者の義務を加重し、信義誠実の原則に反して一方的に利益を害する条項は無効です。
通信が切れたときの扱いを決めます
オンライン家庭教師でいちばん多いトラブルは回線です。決めておく分岐は3つあります。
- 教える側の回線不調で中断した場合
- 生徒側の回線不調で中断した場合
- 双方の責めに帰さない障害で中断した場合
民法第536条第1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由で履行できなくなったとき、相手方は反対給付の履行を拒めるとしています。停電やプロバイダ障害はここに寄ります。教える側の事情なら振替、というのが実務の落ち着きどころです。
この分岐は、概要書面と契約書面の特約欄に書けます。施行規則第92条第1項第1号ルと第93条第2項第8号が、特約の記載を求めています。
月謝が払われないときの手段を知っておきます
未払いの回収は自分で動きます。手段は段階的です。
- 期限を切って支払いを求める(内容証明郵便)
- 支払督促を申し立てる(民事訴訟法第382条以下)
- 60万円以下なら少額訴訟を使う(民事訴訟法第368条)
民法第166条第1項第1号により、権利を行使できることを知った時から5年で時効にかかります。未払いのまま授業を続けると、回収できない月が積み上がります。止める条件も契約書面に書いておきます。
契約するのは保護者です
生徒が未成年なら、契約の相手を間違えると全部やり直しになります。
民法第4条は「年齢十八歳をもって、成年とする」と定めています。中学生と高校生の大半は未成年です。そして民法第5条が、未成年者の法律行為を制限しています。
> (未成年者の法律行為)第五条
> 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
> 2前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
> (民法 第五条)
第2項が効きます。生徒本人と契約して保護者の同意がなければ、あとから取り消されます。取り消されると、受け取った月謝の返還が問題になります。
実務の結論は1つです
契約の当事者は親権者にします。申込みの署名も親権者からもらいます。生徒本人の署名だけで進めません。
高校3年生は18歳と17歳が混ざります。誕生日で扱いが分かれるため、学年ではなく生年月日で確認します。
書面を渡す相手にも注意します
法第42条第2項は、契約書面を「特定継続的役務の提供を受ける者」に交付すると書いています。契約者が保護者で、役務を受けるのが生徒という場合、この2人がずれます。
消費者庁の公表資料に、このずれをどう処理するかの記述を確認できませんでした。契約者と生徒の双方に渡す運用が、いちばん安全です。クーリング・オフの起算日が争点になるのを避けられます。
自分のサイトで募集すると通信販売です
自分で集客すると、もう1つの章の規制が重なります。
特定商取引法第2条第2項が「通信販売」を定義しています。
> この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
> (特定商取引に関する法律 第二条第二項)
「役務の提供」が入っています。物を売る場合に限られません。自分のサイトやSNSで募集し、フォームやメールで申込みを受けると、通信販売にも当たります。特定継続的役務提供と通信販売は重なって適用されます。
広告に住所と電話番号を書きます
法第11条は、通信販売の広告に表示する事項を定めています。役務の対価、支払の時期と方法、提供時期、申込みの期間、解除に関する事項です。そして第6号の主務省令事項を、施行規則第23条第1号が定めています。
> 一販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号
> (特定商取引に関する法律施行規則 第二十三条第一号)
概要書面に住所を書く話は前に触れました。通信販売が重なると、契約前の広告の段階で、氏名と住所と電話番号を表示します。募集ページに自宅の住所を載せることになります。
ただし書きで省ける範囲は限られます
法第11条のただし書きには逃げ道があります。請求があれば書面か電磁的記録を遅滞なく提供する旨を表示すれば、一部を表示しないでよい形です。ただし施行規則第25条が、省ける範囲を限定しています。
プラットフォームを使えばここは免れます
プラットフォームの募集ページに載るのは、運営会社の情報です。教える側は自分の住所を公開しません。手数料の見返りの1つがここにあります。
このほか、通信販売には誇大広告の禁止(法第12条)、電子メール広告のオプトイン規制(法第12条の3)、申込みの最終確認画面の表示義務(法第12条の6)もかかります。メルマガやLINEの一斉配信を使うなら、法第12条の3を先に読んでください。
プラットフォーム経由だと立場が変わります

プラットフォームを通す形なら、書面の義務の位置が変わります。
オンライン家庭教師のプラットフォームには、共通した構造があります。運営会社が家庭と契約し、教える人はその運営会社から業務を受託する形。この構造なら、特定継続的役務提供契約の当事者は運営会社です。概要書面と契約書面を用意するのも運営会社です。
教える側は、特定商取引法の第4章の義務から外れます。そのぶん、単価の決定権と手数料の負担が変わります。
オンライン家庭教師マナリンクは、講師向けのページで手数料を公開しています。
> マナリンクでは、オンライン家庭教師の料金から手数料30%を引いた金額が「授業報酬」となります
> (オンライン家庭教師マナリンクTeachers・2026年9月27日閲覧)
同じページには「講師が『指導内容』や『料金』を自由に決められる」とも書かれています。料金を自分で決めて、そこから30%が引かれる構造です。
| 比べる点 | プラットフォーム経由 | 家庭と直接契約 |
|---|---|---|
| 特定継続的役務提供契約の当事者 | 運営会社 | 自分 |
| 概要書面・契約書面の作成 | 運営会社 | 自分 |
| クーリング・オフの相手 | 運営会社 | 自分 |
| 手数料 | 発生する | 発生しない |
| 単価の決定 | 規約の範囲で自分 | 自分 |
| 生徒の集客 | プラットフォーム | 自分 |
| 未払いのリスク | 運営会社が間に入る | 自分で回収 |
手数料と書面の手間を比べます
手数料30%は、月謝2万円の生徒1人につき6千円です。生徒3人で月1万8千円になります。本記事が置いた前提の計算です。
直接契約に切り替えれば、この1万8千円が残ります。代わりに、概要書面と契約書面を生徒ごとに用意します。書面の作り込みと集客を、月1万8千円の価値と比べる判断になります。
規約の確認は必須です
プラットフォームの多くは、そこで知り合った生徒との直接契約を禁じています。規約違反になると、アカウントが停止されます。集客だけ借りて直接契約に移す運用は、規約の確認が先です。
プラットフォーム側にも義務があります
手数料を払う側にも守られる部分があります。2024年11月1日に施行されたフリーランス新法です。正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
業務委託を受ける個人は「特定受託事業者」に当たります。委託する側には次の義務があります。
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第3条 | 給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面か電磁的方法で明示する |
| 第4条 | 報酬の支払期日を、役務の提供を受けた日から60日以内に定める |
| 第5条第1項第2号 | 責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減らしてはならない |
| 第5条第1項第4号 | 通常の対価に比べて著しく低い報酬を不当に定めてはならない |
| 第5条第2項第1号 | 自己のために金銭や経済上の利益を提供させて利益を不当に害してはならない |
第5条第1項が適用されるのは、政令で定める期間以上の継続的な業務委託です。同法施行令第1条は、この期間を1月と定めています。月謝制で続く家庭教師は、ほぼこの条件に入ります。手数料率の一方的な引上げは、第5条第2項第1号の論点になり得ます。
第6条は、違反があるときに公正取引委員会または中小企業庁長官へ申し出る手続を置いています。同条第3項は、申し出たことを理由に取引の数量を減らすなどの不利益な取扱いを禁じています。
詳しくは副業とフリーランス新法でまとめています。
各社の条件は改定されます。申し込む前に、公式ページで手数料と規約を確認してください。
手数料30%の手取りを計算します
時給の相場は公定されていません。そのぶん、手取りの構造は計算できます。
指導料を自分で決められる形なら、手取りに効くのは3つだけです。手数料、源泉徴収、そして経費です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 生徒が払う月謝(本記事が置いた前提) | ― | 20,000円 |
| プラットフォーム手数料30% | 20,000×0.3 | −6,000円 |
| 授業報酬 | 20,000−6,000 | 14,000円 |
| 源泉徴収10.21% | 14,000×0.1021 | −1,429円 |
| 振込額 | 14,000−1,429 | 12,571円 |
本記事が置いた前提での試算です。月謝2万円、手数料30%、源泉徴収ありという条件で組みました。生徒が払う2万円のうち、口座に入るのは12,571円です。
家庭と直接契約したときと比べます
同じ2万円を家庭から直接受け取ると、手数料がありません。源泉徴収も、支払う側が個人なのでかかりません。手元に2万円が残ります。
| 契約の形 | 生徒が払う額 | 振込額 | 差 |
|---|---|---|---|
| プラットフォーム経由 | 20,000円 | 12,571円 | ― |
| 家庭と直接契約 | 20,000円 | 20,000円 | +7,429円 |
生徒3人なら月22,287円の差です。本記事が置いた前提の計算です。この差額が、書面2通と集客と回収を自分で持つ対価になります。
時間あたりに直します
授業の時間だけで割るか、準備の時間も入れるかで数字が変わります。
授業時間だけで割った場合
週1回90分の授業を月4回とすると、月6時間です。プラットフォーム経由の12,571円を6時間で割ると、1時間あたり約2,095円です。
準備の時間を入れた場合
この6時間に、予習と教材準備と報告の時間は入っていません。準備に1回30分かけると月2時間増えます。8時間で割り直すと約1,571円です。本記事が置いた前提の試算ですが、準備の時間を数えるかどうかで3割変わります。
なお、この計算は源泉徴収された分を含めた金額です。源泉徴収は前払いなので、確定申告で精算されます。納める税額が増えるわけではありません。
源泉徴収は支払う側で決まります
報酬から所得税が引かれるかどうかは、支払う側が誰かで決まります。
まず、家庭教師の報酬は源泉徴収の対象に挙げられています。所得税法第204条第1項第1号の「政令で定める報酬又は料金」です。政令の中身は所得税法施行令第320条第1項です。
> 技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導若しくは知識の教授の報酬若しくは料金
> (所得税法施行令 第三百二十条第一項)
「知識の教授の報酬」に当たります。税率は所得税法第205条第1号により10%です。復興特別所得税を加えると10.21%になります。同じ号は、1回に支払われる金額が100万円を超える場合、その超える部分を20%としています。
個人からの支払いは対象外です
ここで法第204条第2項第2号が効きます。
> 二前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの
> (所得税法 第二百四条第二項第二号)
給与の源泉徴収義務がない個人から支払われる報酬は、源泉徴収の対象から外れます。家庭が直接支払う月謝からは、所得税が引かれません。
| 支払う側 | 源泉徴収 | 手取り(月2万円の場合) |
|---|---|---|
| プラットフォーム運営会社(法人) | される | 手数料を引いた後にさらに10.21% |
| 家庭(従業員を雇っていない個人) | されない | 2万円 |
| 家庭教師派遣会社(法人) | される | 支払額から10.21% |
源泉徴収された分は、確定申告で精算されます。引かれない場合は、自分で申告して納めます。手取りが多く見えても、納める税額は同じです。
所得の区分と申告の話は別にあります
源泉徴収と、申告が必要かどうかは別の論点です。3つだけ押さえておきます。
1つ目は所得の区分です。給与所得者で副業の所得が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。所得税法第121条第1項の20万円ルールです。住民税にはこの20万円ルールがありません。
2つ目は事業所得と雑所得の分かれ目です。所得税基本通達35-2の注により、帳簿書類の保存がない場合は業務に係る雑所得として扱われます。収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は除かれます。
分かれ目は金額ではなく、帳簿をつけるかどうかです。雑所得だと青色申告特別控除が使えません。
3つ目は消費税です。学習塾や家庭教師の授業料は課税取引です。消費税法別表第二第11号の非課税は、学校教育法第1条の学校等の授業料に限られます。副業の規模なら消費税法第9条の免税事業者ですが、法人へ請求するときはインボイスを求められます。
経費の考え方は副業の経費、インボイスの判断は副業のインボイスでまとめています。通信費と光熱費は家事按分の対象です。
源泉徴収の仕組みは副業の源泉徴収で、申告の手順は副業の確定申告のやり方でまとめています。この記事では、支払う側で扱いが変わる点だけを扱います。
雇用なら労働時間が通算されます
家庭教師派遣会社にアルバイトとして登録する形なら、契約が雇用になります。この場合は別の条文が動きます。
労働基準法第38条第1項です。
> 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
> (労働基準法 第三十八条第一項)
本業の労働時間と副業の労働時間が足し合わされます。合計で1日8時間、週40時間を超えると、割増賃金の対象になります。
業務委託なら通算されません。プラットフォーム経由の業務委託も、家庭との直接契約も、雇用ではないため通算の外にあります。
| 契約の形 | 労働時間の通算 | 特定商取引法の書面義務 |
|---|---|---|
| 派遣会社にアルバイト登録 | される | なし(会社が負う) |
| プラットフォームと業務委託 | されない | なし(運営会社が負う) |
| 家庭と直接契約 | されない | あり(自分が負う) |
3つの形で、2つの義務が入れ替わります。労働時間の通算と書面の義務は、同時にはかかりません。これは本記事が3つの形を並べて確認した点です。
労働者性は契約の名前で決まりません
表は契約の形で切りましたが、判断は実態で行われます。「業務委託」と書いてあっても、労働者に当たる場合があります。
労働基準法第9条の労働者に当たるかどうかは、昭和60年12月19日の労働基準法研究会報告が示した使用従属性の基準で判断されます。見られるのは次の点です。
- 仕事の依頼を断る自由があるか
- 業務の遂行について指揮監督を受けているか
- 時間と場所の拘束があるか
- 他人に代わってもらえるか
- 報酬が労務の対償といえるか
家庭教師派遣会社が、生徒も時間割も指導方法も報告書式も指定してくる場合、契約書に業務委託と書いてあっても労働者と判断される余地があります。その場合は労働時間が通算され、最低賃金法も適用されます。
社会保険の扱いは副業の社会保険でまとめています。雇用の形で入るときは、週の所定労働時間の要件も確認してください。
生徒の名簿を作った時点で事業者です
生徒の情報を管理し始めると、もう1つの法律が動きます。
個人情報保護法第16条第2項が「個人情報取扱事業者」を定義しています。
> 2この章及び第六章から第八章までにおいて「個人情報取扱事業者」とは、個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし、次に掲げる者を除く。
> 一国の機関
> 二地方公共団体
> 三独立行政法人等
> 四地方独立行政法人
> (個人情報保護法 第十六条第二項)
除かれているのは公的機関だけです。件数の下限はありません。個人であることも除外の理由になりません。
「個人情報データベース等」は同条第1項が定義しています。第1号は「特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」です。表計算ソフトで生徒の一覧を作れば、これに当たります。
家庭教師で扱う情報の中身
オンライン家庭教師が扱う情報は、次のように積み上がります。
- 生徒の氏名・学年・通っている学校
- 保護者の氏名・連絡先
- 定期テストと模試の点数
- 志望校
- 授業中の録画データ
成績と志望校は、本人の評価に直結する情報です。録画データは顔と声が入ります。授業を録画して保存するなら、利用目的の通知と保存期間の決定が先に来ます。
最低限やることは3つです
法律の条文を一つずつ追うより、次の3つから始めるほうが実務的です。
利用目的を決めて契約のときに伝える
何のために預かるのかを1行で書きます。指導計画の作成と進捗の記録、という粒度で足ります。概要書面の特約欄に書けば、口頭の説明より残ります。
保存する場所を1つに決める
クラウドか自分のPCか、どちらか一方に決めます。2箇所に置くと、消すときに片方が残ります。第三者への提供はしません。
決めた期間の後に消す
指導が終わったら、いつ消すかを先に決めておきます。録画データは容量が大きいため、残り続けやすい種類の情報です。
概要書面と契約書面に、個人情報の扱いを特約として書く方法もあります。施行規則第92条第1項第1号ルと第93条第2項第8号が、特約の記載を求めています。
家庭教師費の平均は年2万円台です
市場の規模を、公的統計で確認します。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」は、補助学習費の内訳を公表しています。数値は令和8年1月16日に差し替えられた訂正版から取りました。初版の数値とは4項目すべてが異なります。
| 学校種 | 通信教育・家庭教師費(年間) | 学習塾費(年間) |
|---|---|---|
| 公立中学校 | 21,248円 | 230,385円 |
| 公立高等学校(全日制) | 15,666円 | 147,140円 |
公立中学校で年間21,248円です。学習塾費の230,385円と比べると、10分の1以下にとどまります。
この数字の読み方には注意が要ります。調査は家庭教師を使っていない世帯も母数に含む平均値です。実際に契約している世帯の支出額ではありません。
それでも境目との関係は読めます
月謝1万円で12か月続ければ、総額は12万円です。特定商取引法の閾値である5万円を、5か月目で超えます。本記事が置いた前提の計算ですが、継続する契約は簡単に閾値を越えます。
一方で、平均が年2万円台だという事実は、別のことも示します。短期で終わる契約が多いということです。夏休みだけ、入試前の3か月だけという使い方が想定されます。
| 契約の形 | 総額 | 期間の条件 | 金額の条件 |
|---|---|---|---|
| 夏休みの1か月だけ | 2万円 | 満たさない | 満たさない |
| 入試前の3か月 | 6万円 | 満たす | 満たす |
| 1年間の月謝制(1か月更新) | 12万円 | 原則満たさない | 満たす |
| 1年間の一括契約 | 12万円 | 満たす | 満たす |
3か月の短期契約が、いちばん見落とされやすい形です。期間は2か月を超え、総額も5万円を超えます。短いから軽い、とは限りません。
3か月で総額6万円の契約を結ぶなら、概要書面の11項目から準備してください。
始める前に確認する3つのこと
始める前に決めておくと、後の手戻りが減る項目が3つあります。
契約の形を先に決めます
プラットフォーム経由か、家庭との直接契約かを先に決めます。途中で変えると、書面の義務の位置が入れ替わります。
最初はプラットフォーム経由で始めて、稼働のリズムをつかむ順番が無理がありません。手数料は取られますが、書面と集客と未払いの回収を運営会社が持ちます。
期間と総額を設計します
直接契約にする場合、期間と総額を先に決めます。選択肢は2つです。
1か月単位で更新する形
期間の条件に入らないため、書面2通の義務は原則として発生しません。前払いをまとめて受けず、教材も売らないことが条件です。更新のたびに合意を取り直します。
2か月を超える契約にする形
書面2通を用意します。概要書面の11項目と契約書面の17項目を作り、赤枠赤字と8ポイント以上を満たします。クーリング・オフの8日間も織り込みます。
教材を売るかどうかを決めます
教材を売ると、関連商品として解除の対象に入ります。テキスト代を取らず、市販の参考書を生徒側に買ってもらう形なら、関連商品販売契約は発生しません。
- 自分で作ったテキストを有償で渡す → 関連商品になる
- 市販の参考書を指定して生徒が書店で買う → 関連商品にならない
- 授業で使うPDFを無償で配る → 対価性がなければ関連商品にならない
教材を売らない設計は、総額5万円の判定も軽くします。
この記事が扱わない3つのこと
この記事の範囲を明示しておきます。
1つ目は、指導の内容と教え方です。どの教材を使うか、どう成績を上げるかは扱いません。扱ったのは契約と書面の枠組みだけです。
2つ目は、稼げる金額の見込みです。オンライン家庭教師の単価には公定価格がありません。本記事は文部科学省の統計とプラットフォームの公開手数料だけを示し、月収の目安は置いていません。
3つ目は、勤め先の就業規則との関係です。副業の許可が必要かどうかは会社ごとに違います。住民税の扱いは副業が会社にバレない方法でまとめています。なお公務員は就業規則ではなく法律の制約を受けます。地方公務員法第38条の許可が必要です。
そのほか、生徒が途中で音信不通になった場合の契約の終わり方と、各プラットフォームの利用規約の中身も扱っていません。前者は最終授業日の確定と請求の範囲が争点になります。
資格が必要な副業と必要でない副業の境目については、訪問介護の副業も参考になります。あちらは資格が入口になる仕事です。オンライン家庭教師は資格が要らない代わりに、契約の書面が入口になります。
今日やること

今日のうちに終わる作業から並べます。
- 教える相手の学年と目的を1行で書き出す(小学校受験・大学生の補習なら法律の外)
- プラットフォーム経由と直接契約のどちらで始めるかを決める
- 直接契約にするなら、1か月単位の更新にするか2か月超にするかを決める
- 2か月超にするなら、概要書面の11項目を箇条書きで書き出す
- 契約書面に書く総回数か総時間数を決める
- 教材を売るかどうかを決める
- プラットフォームを使う場合は、規約の直接契約に関する条項を読む
1から3までは30分で終わります。4と5は、条文を見ながら作ると2時間ほどかかります。6と7は合わせて20分です。本記事が置いた見込みの時間です。
まず1の「相手の学年と目的」だけ書いてください。対象から外れる3つのケースに当たる人が一定数います。
よくある質問
実務でつまずきやすい30問を、条文の根拠を付けて並べます。
Q1. オンライン家庭教師を副業にするのに資格は必要ですか。
法令で定められた資格はありません。届出も許可も要りません。ただし家庭と直接契約し、期間が2か月を超え、総額が5万円を超えると、特定商取引法第42条の書面交付義務が発生します。
Q2. Zoomで教えるのも「家庭教師」に当たりますか。
当たります。消費者庁のQ&Aは「役務の提供の形態を問わず、ファックスやテレビ電話によって提供されるいわゆる通信教育についても、入学試験や学校教育の補習のための学力の教授にあたれば「家庭教師」に該当します」と明記しています。
Q3. 小学生を教える場合はどうなりますか。
目的で分かれます。小学校受験の対策は特定継続的役務提供から外れます。小学校の授業の補習は対象に入ります。補習の対象校から除かれているのは幼稚園と大学だけです。
Q4. 大学生に教える場合は対象になりますか。
大学の授業の補習は対象外です。補習の対象校から大学が除かれています。大学院の入学試験に備える指導が四の項に当たるかは、消費者庁の公表資料に記述を確認できませんでした。判断は消費生活センターに確認してください。
Q5. 英検の対策を教える場合はどの分類になりますか。
語学教室(別表第四の三の項)です。中途解約の上限が「5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額」になり、家庭教師とは計算式が変わります。高校入試の英語を教える場合は家庭教師です。
Q6. 1か月ごとの月謝制なら書面は要りませんか。
1か月単位で契約が更新される形なら、期間の条件を満たさないため原則として規制を受けません。ただし消費者庁は、教材を販売して長期の拘束が生じている場合は規制を受けることがあるとしています。
Q7. 概要書面と契約書面は1通にまとめられますか。
まとめられません。法第42条第1項は「締結するまでに」、第2項は「締結したときは、遅滞なく」と交付の時期を分けています。順番が決まっているため、1通にすると第1項を満たせません。
Q8. 書面をPDFでメール送信しても構いませんか。
事前の承諾があれば構いません。法第42条第4項と施行令第26条第1項により、使う電磁的方法の種類と内容を示したうえで、書面等によって承諾を得ます。口頭の了解では要件を満たしません。
Q9. 書面を渡さなかった場合はどうなりますか。
法第71条第1号により、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処され、併科されることもあります。記載事項が欠けた書面を渡した場合も同じ条文に当たります。
Q10. クーリング・オフの8日はいつから数えますか。
契約書面を受領した日から起算します。契約日ではありません。電子交付の場合は、相手の端末のファイルに記録がされた時が受領の時点になります。
Q11. すでに2回授業をした後にクーリング・オフされたらどうなりますか。
その2回分の対価も請求できません。法第48条第6項が、既に役務の提供が行われたときにおいても対価の請求を禁じています。前払いを受けていれば速やかに全額返します。
Q12. 契約書に「クーリング・オフは適用しない」と書けますか。
書いても無効です。法第48条第8項が、同条の規定に反する特約で受領者に不利なものを無効としています。中途解約についても法第49条第7項が同じ内容を定めています。
Q13. 8日を過ぎれば途中でやめられませんか。
やめられます。法第49条第1項により、生徒側は将来に向かって中途解約できます。期間の制限はありません。提供済みの分の対価は受け取れます。
Q14. 中途解約されたとき、残りの授業料はもらえますか。
もらえません。上乗せできるのは政令が定める額までです。家庭教師なら「5万円又は1か月分の役務の対価に相当する額のいずれか低い額」が上限です。提供済みの分は別に受け取れます。
Q15. 自作のテキストを売っても構いませんか。
構いませんが、関連商品になります。施行令の別表第五第三号イの「書籍」に当たるため、契約が解除されるとテキストの売買も解除されます。引取りの費用は売った側の負担です。
Q16. 回数券で売る場合に注意することはありますか。
有効期限を必ず書いてください。期限がないと、役務提供期間が常に基準期間を超えるとみなされます。10回分6万円で期限なしという売り方は、期間と金額の両方を満たします。
Q17. プラットフォーム経由なら書面の義務はありませんか。
運営会社が家庭と契約する形であれば、書面を用意するのは運営会社です。教える側は業務委託を受ける立場になります。ただし各社の規約と契約の構造を確認してください。
Q18. 報酬から所得税が引かれるのはどんなときですか。
支払う側が法人か、給与の源泉徴収義務がある個人のときです。所得税法第204条第2項第2号により、それ以外の個人から支払われる報酬は源泉徴収の対象から外れます。家庭が直接支払う月謝は引かれません。
Q19. 本業の労働時間と合算されますか。
雇用契約なら合算されます。労働基準法第38条第1項が、事業場を異にする場合でも労働時間を通算すると定めています。業務委託と直接契約では通算されません。
Q20. 生徒の成績データを管理するときに決まりはありますか。
あります。個人情報保護法第16条第2項の個人情報取扱事業者に当たります。件数の下限も個人であることの除外もありません。利用目的を決めて伝え、保存場所を決め、期間の後に消してください。
Q21. 浪人生だけを教える場合はどうなりますか。
オンラインなら家庭教師として対象に入ります。消費者庁は家庭教師について「役務提供を受ける者の限定はありません」としています。教室に通わせる学習塾の形なら、浪人生のみのコースは対象から外れます。
Q22. 違約金を契約書に書いても構いませんか。
書けますが、上限があります。消費者契約法第9条第1項第1号により、同種の契約の解除に伴い生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です。特定商取引法の上限より低くなることもあります。
Q23. 前払いで半年分をまとめて受け取っても構いませんか。
5万円を超えると、法第45条第1項の前払取引になります。業務及び財産の状況を記載した書類を事務所に備え置き、求められたら閲覧させます。備え置かないと100万円以下の罰金です。
Q24. レンタルスペースを借りて教えたらどうなりますか。
学習塾に寄ります。消費者庁は「集会所やマンションの一室等を役務提供事業者が借り上げ、当該場所において役務を提供する場合もこれに含まれます」としています。ただし学習塾は対象者が小中高生等に限られます。
Q25. 「3か月で偏差値10アップ」と広告に書けますか。
書くなら根拠の資料が必要です。法第43条が誇大広告を禁じ、法第43条の2により主務大臣は裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められます。提出しないと誇大広告に当たるものとみなされます。
Q26. 途中で月謝を上げたら書面はどうなりますか。
新たな契約が締結されたとみなされる場合は、書面を作り直します。消費者庁のQ&Aによれば、クーリング・オフは新しい書面を交付した時点から起算されます。値上げをした月は、8日間の無償リスクが再現します。
Q27. 入会金は返さなくてよいですか。
返します。消費者庁のQ&Aは「『入学金(入会金)は返還しない』等の特約は無効になります」と明記しています。初期費用を請求するなら、具体的な費目と中途解約時に請求できる旨を書面に書いてください。
Q28. 市販の問題集をPDFにして送れますか。
原則として送れません。著作権法第35条第1項は「営利を目的として設置されているものを除く」教育機関に限られ、副業の家庭教師は対象外です。生徒に同じ本を買ってもらう方法が安全です。
Q29. 生徒本人と契約しても構いませんか。
未成年なら構いません、とは言えません。民法第5条第2項により、法定代理人の同意がない法律行為は取り消せます。契約の当事者と申込みの署名は親権者にしてください。成年は18歳からです。
Q30. 自分のサイトで生徒を募集する場合に必要なことはありますか。
通信販売にも当たります。法第11条と施行規則第23条第1号により、広告に氏名と住所と電話番号を表示します。対価、支払の時期と方法、提供時期、解除に関する事項も表示事項です。
まとめ
オンライン家庭教師の副業は、資格が要りません。その代わりに、契約の設計がそのまま法律上の立場を決めます。
- オンライン指導は法律上「家庭教師」に分類される(消費者庁のQ&Aが明記)
- 家庭教師と学習塾を分けるのは「事業者が用意した場所かどうか」だけ
- 小学校受験の対策と大学生の補習は、この章の対象から外れる
- 浪人生をオンラインで教えると対象、教室に通わせると対象外という逆転がある
- 同じ英語でも、英検対策なら語学教室、高校入試なら家庭教師で上限額が変わる
- 副業の個人でも「営利の意思をもって、反復継続して」教えれば役務提供事業者
- 規制が始まるのは期間2か月超と総額5万円超の両方を満たしたとき
- 総額は入学金・受講料・教材費・施設利用費などの合計で数える
- 有効期限のない回数券は、役務提供期間が常に基準期間を超えるとみなされる
- 直接契約では概要書面と契約書面の2通が必要(交付の時期も別)
- 概要書面は11項目、契約書面は17項目(本記事の数え方)
- クーリング・オフの説明は赤枠の中に赤字で、文字は8ポイント以上
- 電子交付には事前の承諾が必要で、承諾は書面等で得る
- 書面の不交付と記載漏れは6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- 担当者の姓だけを書いて行政処分を受けた事業者が実際にいる
- 契約書面の受領から8日間は、済んだ授業の代金も請求できない
- 8日を過ぎても中途解約はでき、上乗せは5万円か1か月分の対価の低い額まで
- 教材を売ると関連商品として一緒に解除される
- 違約金は消費者契約法第9条第1項第1号の平均的な損害の額まで
- 源泉徴収は支払う側が法人かどうかで決まる
- 雇用なら労働時間が通算され、業務委託と直接契約では通算されない
- 月謝を上げるなど契約を変更すると、8日間がもう一度動き出す
- 入会金を「返還しない」とする特約は無効
- 市販の教材をPDFで送れない(著作権法第35条は営利の教育を除く)
- 生徒が未成年なら契約の当事者は親権者
- 自分のサイトで募集すると通信販売にも当たり、広告に住所と電話番号が要る
- 生徒名簿を表計算ソフトで作った時点で個人情報取扱事業者
始め方として無理がない順番は、プラットフォーム経由で稼働のリズムをつかむことです。直接契約に切り替えるのは、書面2通を用意できてからで構いません。手数料は、書面と集客と回収を運営会社に任せる対価です。
そして、いちばん最初にやることは1つだけです。教える相手の学年と目的を1行で書き出してください。そこで法律の外に出るなら、書面とクーリング・オフの章は読まなくて済みます。
相手の学年と目的を1行で。副業が会社にバレない方法とあわせて、今日のうちに片付けてください。
参考にした一次資料
- 特定商取引に関する法律(e-Gov法令検索・現行条文)
- 特定商取引に関する法律施行令(e-Gov法令検索・現行条文)
- 特定商取引に関する法律施行規則(e-Gov法令検索・現行条文)
- 消費者庁「特定商取引法ガイド:特定継続的役務提供」
- 消費者庁「特定継続的役務提供Q&A」
- 消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第4章・令和6年3月19日版(PDF)
- 消費者庁「特定商取引法違反の特定継続的役務提供事業者に対する指示について」平成30年2月16日(PDF)
- 消費者庁「契約書面等に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係るガイドライン」(PDF)
- 消費者契約法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 民法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 著作権法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法・e-Gov法令検索)
- 国税庁 質疑応答事例「学習塾等の授業料」
- 国税庁「法第35条《雑所得》関係」(所得税基本通達35-2)
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索・現行条文)
- 所得税法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 所得税法施行令(e-Gov法令検索・現行条文)
- 労働基準法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 民事訴訟法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 消費税法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(e-Gov法令検索)
- 学校教育法(e-Gov法令検索・現行条文)
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」結果の概要
- オンライン家庭教師マナリンクTeachers「オンライン家庭教師(講師)の求人を募集中!」

